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きんのまなざし ぎんのささやき

水をください(3)

更新間隔がすごいことになってますね、すみません。
久し振りに書くので、感覚がなんとなくおかしいのですが、とりあえずは
書けたところまでアップします。
短いですが、ご容赦を。


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鋼牙との電話を切った後、その余韻に浸る間もなく、カオルは

「よし!」

とパレットと絵筆を取り上げた。
しばらく、キャンバスを睨むようにして、真剣なまなざしを向ける。

でもすぐに、

(いけない、いけない…)

と肩を2~3回揺すって力を抜き、ふ~っと大きく息を吐いた。
そして、改めてキャンバスの中に描きたかった絵を思い浮かべると、筆に
明るい色の絵の具をなじませて、ぐいっと大胆に走らせ始めた。



無我夢中で描き始めてしばらくが経った。
強過ぎる印象のあった作品が、カオル本来の明るさと伸びやかさの伴う作品に、
だんだんと塗り替えられていった。

「ふぅ~」

一度、筆を休めて、絵を全体から眺めてみる。
まだ途中ではあったが、この延長線上にカオルの描きたかった作品が見えて
きている。

(うん、いい感じ!)

このまま調子に乗って描き続けようと、再び、パレットの上の絵の具に
筆先をつけようとしたとき、

  グ、ググ、グルゥ~~

なんとも盛大にお腹がなった。
部屋には自分ひとりだというのに、思わずお腹を手で押さえてしまうほどに!

その音を聞いて、脳のほうも急激に空腹を訴えてきている。
この空腹を抱えたままでは、このまま描き続けたとしてもすぐに集中力を
切らすだろう。

(何か食べてからにしよう!)


絵を集中して描くために食べる。
カオルはそう決断した。
今のカオルにとっては、食事も、絵の制作の前の準備のひとつぐらいの
感覚だ。


パレットを置いて、キッチンのほうに向かう。

(なんか、お腹に入れるものってあったっけ?)

この際、味や栄養は関係ない。
お腹が膨れればそれでOKだ。
そう思いながら、食料品のストックを収納している棚に手を伸ばした。


そのとき…

   カシャ、カシャ  …カチャン

玄関ドアの郵便受けに何かが入れられた音がした。


(ん? 何だろう?)

そう思いながら、郵便受けを確かめに行く。
そこには白いカードが1枚。
カードには、見覚えのある文字で、メッセージが数行書かれていた。



  ろくに食べていないおまえのために、
  ゴンザが用意したものを表に置いておく。

  しっかり食べていい絵を描けよ。
                    鋼牙



読み終えるが早いか、カオルは慌ててガチャガチャとドアを開けると、
表に飛び出した。


ドアの横には、それらしい紙袋がひとつ。
だが、そこに鋼牙の姿はない。


きょろきょろと辺りを見回してみたが、すでに立ち去った後なのか、鋼牙は
どこにもいなかった。


少し残念そうな表情で肩を落としたカオルは、足元の紙袋を拾い上げ、
ガサゴソと袋の中身を取り出した。
手には、ずしりと重い容器。
その重さに、中身の重さだけじゃなく、ゴンザの愛情の重さも感じ取ることが
できた。

「ありがとう…」

ぽつりとそう呟いて、カオルは部屋へと消えていった。




その頃、カオルのアパートからほど近い路地に鋼牙の姿はあった。
カオルの場所からは見えにくいところから、こっそりとカオルの様子を
一部始終見守っていた。
久し振りに見るカオルは、睡眠や食事を削っているからか、顔に疲れが
見えていたが、足取りもしっかりしていたし、何より瞳には力があった。


鋼牙は、カオルが部屋に入るのを待ってから、そっと、その場を離れた。



『声をかけなくてよかったのか? 鋼牙?』

カオルのアパートから少し離れてから、ザルバが声をかけてきた。

「あぁ」

『カオルはおまえに会いたがってたみたいだぞ』

「… いいんだ。
 あいつは仕事があるからな」

なんとも素っ気ない返事しか返さない鋼牙に、ザルバは聞こえよがしに
大きく溜め息をつく。

『あ~あ。
 本心じゃあ、おまえだって会いたいんだろうに、まったく。
 人間ってやつは、時々、みょ~にまどろっこしく感じるぜ…』

呆れたようにそう呟く言葉には聞こえないフリをして鋼牙が言った。

「腹が減ったな…  急いで帰るぞ」

鋼牙に促され、渋々という感じで返事をするザルバ。

『はいはい…


 おまえが食べたいのはカオルよりも夕食のほうなんだなぁ、鋼牙?
 俺様は、てっきり、カオルのほうだとばっかり思っていたが…』

そんなつぶやきも、鋼牙は見事に無視をして黙々と歩いた。

(フッ、 なぁんだ…
 こいつ、否定もしないんだな?)

ザルバはそんなふうに思うと、それ以上は何も言わず、おとなしく
黙ることにした。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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