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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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災い転じて

めっきり春ですね!
selfish の頭の中も春です!

なんだかわからないけど書けそうな気がしたので、書き始めてみました!
テーマは「春だね~」
(↑ ウソです! ちっとも関係ない!)




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

   ヒョッコ… ヒョッコ…

夕暮れの迫る街の中を、カオルは不規則なリズムで歩いていた。

(はぁ~
 もう、イヤんなっちゃうな…)

自分に降りかかった災難を呪いながら、でもどうしようもないのは
わかりきったことなので、溜め息をつきながら冴島邸を目指し歩いて
いた。

街行く人の足取りは誰もが急ぎ足で、カオル同様、家路へと向かって
いた。
普段ならその人の波に乗って闊歩しているカオルだが、今日ばかりは
その波には乗り切れず、置いてかれがちだった。

「はぁ~」

この日何度目かの溜め息をついたカオルは、建物の影に身を寄せて、
人の波から外れた。
そして、ちょっと身体を捻らせて右足のカカトを上げて靴を見た。
今日、午後からの仕事の打ち合わせのために屋敷から履いて出たのは、
サックスブルーのサンダルだった。
ところが、今、カオルの視線の先に見えるサンダルは、そのヒール部分が
ポッキリと根元から折れ、無残な姿になっていた。


そう、あれは…


打ち合わせが終わり、担当さんと別れた後、その昂揚感でスキップでも
しかねないくらい上機嫌なときのことだ。
いつもなら注意して避けるはずの側溝のフタの上をうっかり歩いて
しまった。
すると、運悪く…


「はぁ~」


悔やんでも今更だ。どうしようもない。
左右の高さが違う状態で歩き続けたため、右足のふくらはぎがかなり痛く、
つりそうなくらいだった。

新しい靴を買うか、タクシーを拾って帰るかできればいいのだが、
今日は生憎、懐具合がかなり寂しい状況なのだ。
タクシー代をゴンザに立て替えてもらうか、あるいはゴンザに迎えに
来てもらうことを考えないではなかったが、親しき仲にも礼儀あり!
お金の貸しは作りたくなかったし、今頃、夕食の支度に追われているで
あろうゴンザに負担をかけたくもなかった。

右足の足首を回したり、ふくらはぎを手で揉んだりすることで、少しは
楽になったみたいだ。

(よし!)

心の中で気合を入れ、カオルは再び歩き出した。





『おや?
 あれはカオルじゃないか?』

ザルバの声を聞き、鋼牙は道路の反対側の人混みの中に視線を
彷徨わせた。
なるほど、ザルバの言う通り、鋼牙もカオルの姿を認めることが
できた。
鋼牙もまた屋敷に帰ろうとしていたので、少し前を行くカオルを
追って道を横断した。

『ん?
 なんだか様子がおかしいな?』

ザルバに言われるまでもなく、鋼牙もカオルの異変に気づいていた。
もちろん、その理由まではわからなかったが、だからこそ余計に
心配になり、足が自然に速くなった。
足早な人波よりも鋼牙の歩みは数段速い。
あっという間にカオルに追いつく。

「カオル…」

手を伸ばせば届きそうな距離まで来たとき、鋼牙はそっと彼女の
名を呼んだ。

ピクン、と反応があり、カオルは足を止めて振り向いた。

「鋼牙ぁ~」

呼んだ人の顔を見て、カオルは嬉しそうな顔になった。

「今、帰りか?」

「あ、うん。
 打ち合わせは無事終わって、帰るとこ…   鋼牙も?」

「あぁ」

「そっか…」

短く言葉を交わしたふたりは、やがて一緒に歩き出した。


   ヒョッコ… ヒョッコ…


「どうした?
 足でも痛むのか?」

相変わらず、びっこを引くように歩くカオルに、鋼牙は声をかけた。

「あぁ、これ?」

そう言って自分の足元をちらっと見たカオルは、

「ちょっとドジっちゃって、ヒールが壊れちゃったの」

と、鋼牙の顔を見上げて恥ずかしそうに笑った。

(なんだ…)

怪我でもしたかと思っていたので、そうではないとわかり、ホッと
したとともに少し拍子抜けした。

「あっ!
 今、ドジなやつ、とかって思ったでしょぉ~」

鋼牙の反応を見て。カオルはわざと不機嫌な顔をつくって突っ込んだ。

「そんなことは思っていない!

 …いや、少し思った、か」

冗談でそう返した鋼牙に、

「ひど~い!
 ここまで歩いて来るのも大変だったんだよ!」

と、今度は少し本気で不機嫌になった。


   ヒョッコ… ヒョッコ…


カオルの歩くスピードに合わせて、鋼牙も歩幅を合わせたが、それでも
カオルは遅れがちになった。

「…足、辛くないのか?」

ぼそりと鋼牙が尋ねた。

「ん~」

カオルは、ほんとのことを言おうかどうしようか少し迷ったが、やがて、
照れ臭そうに笑いながら、

「実はね、かなり歩きづらいんだよね。
 もう右足のふくらはぎがパンパンなの…」

と正直に打ち明けた。
それを聞いて、一瞬、鋼牙の眉間に皺が寄り、険しい顔になったかと
思うと、少し考える素振りを見せた。
そして、

「ゴンザに言って、迎えに来させよう」

と言った。

「あ、いいよ、いいよ。
 ゴンザさん、今頃忙しいだろうし、あたしなら大丈夫だから!」

慌てて答えるカオルを見て、

「いいのか?」

鋼牙は念を押すように尋ねた。

「うん、平気!」


   ヒョッコ… ヒョッコ…


カオルとの付き合いも長く、カオルの様子から、実は、全然大丈夫じゃ
ないことも鋼牙は承知していた。
だが、一度言い出したことは、頑固に貫き通そうとするカオルの性格も
また、十分にわかっている。

「…」

鋼牙はそれ以上何も言わず、黙って、カオルの腰の辺りに手をやり、
引き寄せるようにして支えてやった。

「!」

周りから見れば、それはまるで恋人どうしが肩を寄せ合って歩いている
ように見えるだろう。
いや、実際のところ、恋人どうしなのだから何の問題もないはずだが、
人の目があるところでこんなことをするなど、鋼牙なら恥ずかしがって
絶対にしないと思っていたのだが、その鋼牙が自分からカオルを
引き寄せたのだから、カオルは驚いた。
驚きのあまり、鋼牙の顔を見上げたカオルに気付いたのか、

「これで少しは楽か?」

と、鋼牙は前を向いたまま聞いた。
その様子を見て、

(やっぱり、鋼牙、恥ずかしいんだよね?)

そう思いながら、カオルは、

「うん、すごく楽になったよ」

と答え、鋼牙に身体を摺り寄せた。


   ヒョッコ… ヒョッコ…


相変わらず、ヒールがなくて歩きにくいことに変わりなかったが、
まさかの展開に

(ヒールが折れて、よかったかも…)

とひとり密やかに笑みを漏らすカオルであった。




fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

みなさんは、ヒールを折ったことありますか?

selfish 自身は経験ないのですが(あんまりヒールのある靴、履かない…)、
側溝のフタにハマったことやハマりかけたことは何度かあります。
そこからなんか書けるかな? と思って書き始めてみたのですが、

あらまぁ、こんな展開になるとは思ってもみませんでした。
ヒョコヒョコ歩くカオルちゃんに、鋼牙さんが靴のひとつもプレゼント
すればいいんじゃないかな? と思ってたんですけど…
結果はこんなふうに変わっちゃいました!

誰もいないところで肩を引き寄せるのと、人前で密着(!)するのは
全然ハードルの高さが違いますよね?
(…というのはオバサンの考え?)

普段の鋼牙さんならやらなさそうなことですが、こういうシチュエー
ションだったら…  どうでしょう?


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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