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きんのまなざし ぎんのささやき

春のまどろみ

こちらもようやく桜が満開!
時折吹く風にハラハラと花びらを散らす、桜の花のトンネルをくぐって
きました。

温かい陽射し、少し冷たい風、散る桜にちょっぴり切ない胸の内。
さぁ、妄想の扉が叩かれました!

なんということもないものですが、貴方の妄想の糸口にどうぞ…






::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

冴島邸の昼下がり。
昼食を終えて、この屋敷の住人たちはそれぞれの時間を過ごしていた。

いつもは仕事にでかけることの多いこの屋敷の主人である冴島鋼牙は、
この日は調べ物があると言って、書斎にこもっていた。
執事であり、この屋敷の唯一の使用人でもある倉橋ゴンザは、夕食の
ための買い物に出掛けていて留守だった。
そして、鋼牙と心通わせ、この屋敷に一緒に暮らしている御月カオルは、
2階にある自室で新しい絵本のストーリー構成を考えていた。

「あ!」

何かを思いついたカオルは、机の上にスペースを作ったかと思うと、
慌ただしく部屋の中を歩き回り、いろいろなものを集め出した。

スケッチブックに、エンピツ、ハサミ…

どうやら、いま思いついたアイデアに出てくる小道具を、試しに
作ってみようというつもりのようだ。

「あとは、カッター…と」

カオルがペン立ての中からカッターを取り上げ、

 チキ、チキ、チキ…

と刃を出してみると、ずいぶん使っていなかったからか、だいぶん
刃が錆びついていた。

「あぁ… これじゃダメね」

溜め息交じりに一言言うと、カオルはカッターを手に階下に降りて
行った。



(ゴンザさんはまだ買い物から帰ってないかな?)

そう思いながら、リビングやキッチンなど、ゴンザのいそうな場所を
次々と覗いてみた。
やはり、思った通りゴンザは留守にしているようで、どこにも姿を
見つけられなかった。

(それじゃあ…)

カオルは書斎に向かうことにした。
書斎には鋼牙がいるはずで、そこならカッターの替え刃もありそうだな、
と思ったのだった。


  コンコンコン…

遠慮がちにノックしてみた。
が、返事はない。

(あれ? 鋼牙も出かけたのかな?)

そう思いながら、そっとドアを開いてみた。



書斎には、大きな窓を背にして書斎机が配置されているが、その机の
上には分厚い書物が何冊か置かれていた。
そして、机の中央には小さな木の箱があって、その上に台座に収まった
ザルバが見えた。
どうやら、ザルバの意識は魔界に帰っているようだ。

書斎の窓が少し開けられているのか、白いレースのカーテンがゆらゆらと
小さく揺れている。
そのカーテン越しには柔らかい光が降り注いでおり、その光に包まれる
ようにして、手前にある黒い革の肘掛け椅子にもたれかかって鋼牙が
眠っていた。


(あ…)

カオルは起こさないようにそっと鋼牙に近付いてみる。
鋼牙の膝には読みかけの本が乗っていた。
どうやら、春の温かな日差しに誘われたようだ。

(そう言えば、昨日は帰りが遅かったもの…)

そんなことを思いながら、カオルはそっと落ちそうになっている膝の本を
抜き取って机の上に置くと、鋼牙を優しく見つめた。



そよそよと窓から入るそよ風が、鋼牙の前髪を揺らしている。

(鋼牙のまつ毛、長~い♡)

ちょっと触ってみたいという衝動を感じて、そっと指を伸ばしてみたが、

(起こしちゃ可哀相か…)

と思い直してカオルは手を引っ込めた。
そして、踵を返して、来たときと同様にそっとその場を離れようとした
カオルだったが、すぐにハッと足を止める。



寝ていると思った鋼牙に腕を掴まれたからだ。

「あ、ごめん。
 起こしちゃった?」

カオルはすまなそうな顔をして振り返った。
すると、薄目を開けた状態の鋼牙が、

「いや…」

とそれに答えた。
返事をした鋼牙の寝起きの掠れた声を聞いたカオルは、クスッと笑う。

「ちゃんとベッドで寝たら?
 昨日、遅かったでしょ?」

そう気遣って声をかけた。

「大丈夫だ。
 それより…」

そう言うと、鋼牙はカオルの腕をグイッと引き寄せた。
カオルはよろよろと鋼牙のほうに倒れそうになったかと思うと、鋼牙が
もう片方の腕でカオルの腹の辺りを抱え込むようにした。
その結果、カオルの身体はストンと鋼牙の膝の上に収まることになった。

「!」

驚いたカオルが鋼牙のほうに振り返ろうとしたが、鋼牙の両腕がカオルの
身体をしっかりとホールドしているため身動きできなかった。

カオルの髪に自分の顔を埋めるようにした鋼牙が、

「しばらく、こうしていたい…」

とだけ言って、やがて静かになった。

鋼牙の深くゆったりした呼吸がカオルの身体にも伝わってくる。

 スー  スー  スー  …



カオルは身体の力を抜き、鋼牙の呼吸に合わせるようにゆっくりと
息を吐いた。

春の陽光とカオルの体温に鋼牙が安らぎを覚えるように、カオルもまた
鋼牙の体温や呼吸に大きな安心感を覚えた。




(鋼牙にとって、心穏やかな日が続きますように…)

そう願いながら、カオルもまたゆっくりと目を閉じた。
花の香りを乗せた風が、まどろむふたりをふわりと包み込んでいた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


春って好きです!
何かが始まるワクワク感。
そして、少し感じる切なさも。

季節の移り変わりを鋼牙さんとカオルちゃんも共有し、共感する
なんてことない毎日。

今のうちにじっくり味わっておくといい。
また、ふたりに波風立たせようとする selfish の悪巧みが発動するか
わからないので…

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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