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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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懐古の朝

もうずいぶんスキマ話を書いた気がしているのですが、またまた、
妄想が飛び込んできました。

今回は、なんと!
我雷法師のお話です!

レギュレイスの脅威が去り、静かな元の閑岱に戻りつつある頃、こんな
ことがあったかも!?





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

まだ夜が明けきらない時間だった。

我雷が寝床の中でふと目を覚ました。
布団の中は心地よく、なぜこんな時間に眠りから覚めたのかがわからない。

「はて…」

夜明けまでには、あと1時間ほどの猶予があった。
もう一眠りする時間はあったが、一度目が覚めてしまうと眠気のほうが
遠のいていた。
かと言って、このまま起きてしまうにしては、温かい布団は十分過ぎる
ほどの魅力を持っていた。
そんなわけで、寝るのは諦めた我雷だったが、寝床の中でもぞもぞと
姿勢を変えて朝を待つことにした。

まだ少し朦朧としている頭で、我雷はぼんやりと考えてみた。

(確か、何か夢を見ていたような…)

答えをどうしても見つけたいわけではなかったが、思い出すのに、
そう時間はかからなかった。

「そうじゃ!」

夢の仔細を思い出すことは難しかったが、その中に出てきた懐かしい
顔がふとよみがえった。

(りんじゃ。 りんの夢じゃった…)

りん。
それは、かつて我雷の弟子だった魔戒法師だ。

つい先頃、りんの息子で黄金騎士、牙狼の称号を受け継いだ冴島鋼牙が
この閑岱の地を訪ねてきた。
鋼牙とは、よちよち歩きのときに会って以来だった。
たくましく成長した鋼牙と会い、その姿にりんの面影を探したりもし、
りんの話を交わしたりもした。
恐らく、そのことが、この夢を見た遠因になっているのだろう。

りんは、とても優秀な魔戒法師だった。
派手さはなかったが、心身ともにしなやかな強さを持ち、真摯な姿勢で
修行に打ち込む姿勢は好ましく、我雷はりんを娘同様に可愛がった。



そして、我雷は、冴島りんとともにもうひとりの弟子の顔も思い起こした。

(ルツ…)

その魔戒法師の名は、山刀ルツ。
この閑岱の地を守る白夜騎士、打無(ダン)である山刀翼と、魔戒法師の
卵である鈴の母親だ。

りんとルツは丁度同じ年ということもあり、幼少の頃から姉妹のように
仲がよかった。

我雷の脳裏に、少女だった頃のふたりの姿が蘇る。
ふたりとも我雷のもとで熱心に修行に励み、競い合うようにして腕を
磨いていった。

「見て見て! できたよ! できた!」

「え~っ! もうできたの?
 よぉし、あたしだって!」

片方が術を習得すると、もう片方が悔しくて出来るようになるまで
頑張ったものだ。


(あの頃は楽しかったねぇ…)

布団の中の我雷の顔に、自然と笑顔が浮かぶ。




(じゃが、りんは大河殿を慕って、ここを去ってしまった…)

我雷の顔が少し曇った。

番犬所から指令があり、若き日の冴島大河が閑岱に滞在していたのは、
今を去ること20数年前の、期間にして1週間ほどだったか…

その短い期間の間に、りんと大河の間にどういう経緯があったのか、
詳しいことはわからなかった。
だが、大河がこの地を離れるとき、りんも我雷の元を去っていった。

(一度言い出したら、あとには引かぬ子じゃったのぉ…)


そのとき、ルツも我雷と同様、内心ひどく悲しんだものだった。
だが、ただ一人、ルツだけはりんの味方となって、我雷に頭を下げて
許しを請うていた。

「我雷法師、お願いです!
 りんを… りんを行かせてやってください!

 りんの分まで
私が法師のそばにいて、いつまでもずっとお役に
 立ちますから!

 だから…
 だから、どうかりんのことは許してあげてください!」

硬い表情でじっと頭を下げているりんに代わり、ルツは必死に我雷に
願っていた。
友達思いのルツの願いと、可愛い弟子がしあわせになるなら、という
ことで、我雷はりんが大河の元に行くのを渋々ながら許したのだった。


りんが閑岱の地を去り、程なくして大河と夫婦になった頃、ルツにも
憎からず想う者ができた。
同じ、閑岱の魔戒法師で、寡黙で頑固なところもある男だったが、
ルツのことを大事に想っていることは誰の目にも明らかだった。

やがて、りんが男の子を授かったと知らせてきた。
その頃には、ルツの嫁入りの話も決まっていた。

(あの頃のルツは本当にしあわせに輝いておったのぉ…)



その後、半年ほど経った頃、ルツの祝言が執り行われた。
もちろん、大親友であるりんも招待されていたが、子どもが小さ過ぎる
ということと、りん自身が少し体調を崩していたために、残念ながら
出席は叶わなかった。

だが、1年ほどが過ぎ、ルツに男の子を産まれたとき、りんは、夫の
大河と息子の鋼牙とともに3人で閑岱の地を訪れた。
りんとルツはお互いの息子を見せ合いながら、幼い頃と同じように、
飽くことなくいつまでも楽しそうに語らい合った。



その頃の鋼牙は、よちよち歩きの可愛い盛りだった。
鋼牙を腕に抱き、愛する夫と微笑み合うりんを見て、我雷はようやく
大河を許そうという気になったものだった。

…が、それから間もなくして、りんは幼い鋼牙を残し、病気で他界して
しまった。



その知らせを受けた我雷は、すぐさまルツにも知らせた。

「うそ! そんなのうそでしょ?

 りんが死んだ?
 そんな… まさか…」

それ以上は言葉にならず、ルツはただただ涙を流した。
ルツの腕の中に抱かれていた幼子は、母の嘆きを敏感に感じ取り、
ぐずりだした。

「おぉ、よしよし。
 お前まで泣いてしまうのかい?
 翼よ、泣くんじゃないよ。 泣くんじゃない…」

我雷はルツの腕の中から赤子を抱き取り、自分も泣きながらあやした
ものだった。



さらに10年あまりが過ぎたとき、山刀家に翼の妹がやって来た。
その子を「鈴(りん)」と名付けたのは、ルツだった。

「あなたはいっぱい長生きして、たくさんしあわせになってちょうだい」

ルツは事あるごとに、鈴にそう言って聞かせていた。



だが、結局、そのルツもホラーとの闘いの中で夫とともに力尽きて
しまった。

(りんばかりか、ルツまでも…
 代われるものなら、この婆がいくらも代わってやるものを…)

我雷は唇を噛んで、涙を堪えた。





  チュン、チュン、チュン…


気が付くと、朝の光が差し込んでいた。
我雷はゆっくり身体を起こすと、東の空にまぶしく輝く太陽を眺めた。

「りんよ、ルツよ。
 お前たちの子どもたちは立派に成長しておりますぞ。

 くたばり損ないのこの婆にできるのは、お前たちの代わりに
 あの子らの行く末を見守ることだけじゃ」

物悲しい表情で、今は亡きふたりの弟子に向かって、我雷はそっと
語りかけていた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ごめんなさい!
翼と鈴の母ちゃんを、勝手に捏造してしまいました!

もし、鈴の母ちゃんが閑岱の地にいた女性なら、きっと、鋼牙の母ちゃん
とも親しかったのでは? と、そんなところからの妄想です。

そしたら、鈴の名前はりんから採ったというエピソードやら、幼い頃の
鋼牙たち親子が閑岱を訪ねていたというエピソードやらも、なんとなく
自然に繋がっていきました。

ほんとは、ルツの結婚式のときにりんたち親子がお祝いに駆けつけた
ことにしようと思ったのですが、鋼牙と翼の年齢差を考えたとき、
幼い鋼牙(推定2歳)が閑岱を訪れたときには、翼も既に生まれてないと
いけない気が…
そこで、急遽(←これ得意!)翼が生まれたときに里帰りしたことに
しましたとさ。 (;^ω^)


この妄想、鋼カオでもなんでもないので、それを期待してきた人には
正直つまらなかったかもしれません。
ごめんなさい!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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