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魔界の隣の日常(2)
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ゴンザがドアの向こうに消えていったのが見えたと思ったら、どういうわけだか、急にカオルの視界がどんどん白くなっていった。
(あれ?)
そう思う間もなく、モヤモヤと奇妙な情景が見えてきた。
それは…
鋼牙だ!
そして、その周りには若くてきれいな女性たちが取り巻いていた。
彼らたちの脇にはゴンザが立ち、高級レストランのメニューのような革表紙のファイルを開いていた。
「鋼牙様。
こちらは魔戒法師としての腕は若手の中ではピカイチのS嬢。
鋼牙様のプライベートだけにとどまらず、お仕事のうえでもパートナーとしてはぴったりの方にございます。
キリリとした横顔が大層美しゅうございますな。
そして、こちらは名門A家のご令嬢のM嬢です。
知識と教養に溢れ、慎み深く、冴島家の跡継ぎに極上のDNAを残すことができましょう。
清楚で可憐な可愛らしい方にございます」
どうやら、そのファイルには女性たちのプロフィールがまとめられた資料があるらしく、ゴンザはそれを読みながら女性たちを鋼牙に紹介しているようだった。
「右手の方は、素晴らしいプロポーションを誇るK嬢で、大きさ、質感、色ともに抜群のバストの持ち主でございます。
むしゃぶりつきたくなるような色香にクラクラいたします。
また、左手の方はといいますと… おぉ、あった、あった。
お料理上手と評判のR嬢ですな。
和食、洋食、中華なんでもござれで、創作料理のレパートリーもなかなかのものだそうです。
栄養士、調理師免許、野菜ソムリエなどの資格をお持ちで、鋼牙様を食事の面からバックアップしていただけます。
こちらもまたなかなかに美しゅうございますなぁ♡」
ニコニコと説明を続けるゴンザの言葉を聞いているのか聞いていないのか、鋼牙もまんざらではない表情で、女性たちの耳元にヒソヒソと囁き、囁かれた女性はクスクス笑いながらどんどん体を密着させていった。
(ちょっと、鋼牙! どういうことなのぉ~!)
その情景を見て、カオルは心底驚いた。
普段の鋼牙からはまったく考えられないことだった。
それもそのはずで、これらはすべて、カオルの目に入ったゴミがもたらしたものなのだ。
魔界の小さなゴミに過ぎないものだったが、人の心に波風を立たせようとする邪悪な力を持っていて、それが作用してカオルに見せた幻想であった。
そんなこととは全く考えが及ばず、カオルが抗議の声をあげようとしたとき、ちょうどゴンザが薬箱を手に息せき切って帰って来た。
ガチャ!
「鋼牙様っ!」
ゴンザが、鋼牙のすぐ横のダイニングテーブルの上に薬箱を置いた。
鋼牙はすぐにその薬箱を開けると、素早く視線を走らせて目的のものを探し出し、サッと一本の小さな瓶を取り出す。
きれいな瑠璃色をしたその瓶のフタをもどかしそうに開けると、スポイトになっているそのフタの細く尖った口の部分から、虹色に輝く雫が今にも落ちそうに揺れていた。
「少ししみるかもしれないが、我慢しろ」
「う、うん…」
有無を言わさぬような緊迫した鋼牙の声に、カオルは慌ててうなづいたかと思うと、すぐに上を向かされた。
あいかわらず、視界はぼんやりとしていたが、その目に ’ラクリマの雫’ がポタポタと2~3滴注がれた。
カオルは条件反射的に目を閉じる。
冷たさと少ししみるのとで、カオルの目から涙がじわりと浮かび、’ラクリマの雫’ と混ざり合って頬を伝わって流れていく。
少しなじんできたところで、パチパチと何度か瞬きをした。
「どうだ? 取れたか?」
鋼牙が覗き込むようにして尋ねた。
カオルは試しに目だけをキョロキョロさせて辺りを見てみた。
「うん、多分…
まだ、少しぼやけてるけど、ゴミは取れたみたい」
と、大きな瞳を鋼牙に向けて答えた。
「そうか…」
あからさまにほっとした表情を浮かべた鋼牙は、カオルの濡れた頬を手でぬぐってやった。
「ようございました…」
ゴンザも心底安堵して一息ついた。
そのときだ。
カオルの脳裏にとても温かな感情がダイレクトに流れ込んできた。
それは、ひょっとしたら視覚から入った情報なのかもしれなかったが、確かにそうなのかと問われたら判然としない。
だが、その感情は間違いなく鋼牙のものであることだけは不思議と理解できていて、カオルの無事を心の底から喜び、カオルを愛しく思っている深い愛情がジワリと感じられた。
こちらのほうは幻想でもなんでもなく、’ラクリマの雫’ が見せた、鋼牙の真実の想いに違いなかった。
ただし、その真実が見えたのはごくわずかな間のことで、次の瞬間には、シャボン玉がパチンと割れ、夢から覚めたように目の前の視界がクリアに見えるようになった。
カオルの無事を喜んでいる家族同然の人たちの顔が見える。
「ごめんなさい、心配かけてしまって…」
正気に返ったカオルは、鋼牙とゴンザをかわるがわる見て謝った。
すると、鋼牙の瞳の中に、複雑な感情の翳りが見え、何かを考えているような様子を見せた。
鋼牙が、ゆっくりと口を開いた。
主の様子に何かを感じたのだろう、ゴンザは小さく頭を下げ、音もなくリビングを出ていった。
「カオル。
くどいようだが、言っておかなければならないことがある」
いつもなら、「言わなくてもいいよ、わかってるから…」と言うところだったが、そう言わせないくらい鋼牙のまなざしは真剣だった。
「うん…」
カオルは素直にうなづいた。
「この家では、普通なら何でもないことでも致命傷になりかねないこともある。
魔界に携わる者と暮らす、ということはそういうことだ。
だから、今後も同じようなことがまた起こるかもしれない」
そこまで言った鋼牙の瞳は、少しだけ揺らいでいた。
カオルを信じないわけではなかったが、
「そんな怖いところにはこれ以上居たくない!」
という決断をカオルがするかもしれないと思わないわけではなかったからだ。
魔戒騎士の家に生まれた鋼牙にはごく当たり前のことでも、カオルにとっては未知のことであったり、なかなか意識の及ばないところがたくさんある。
数年前まで、魔界とは一切関係のない世界に住んでいたのだから、それは当然のことであった。
だから、今回のような事件に遭遇することで、魔界の恐ろしさを体感し、恐怖感を覚えても不思議はなかった。
もし、万が一にもカオルがそういう決断をしたのであれば、鋼牙は彼女の判断を尊重しようと思っていた。
そうすることでかなりの葛藤が生まれることは容易に想像できた。
それほど、鋼牙の中でカオルが占める場所は大きくなっていたのだから仕方のないことだ。
だが、カオルのためを思えばそんな自分の感情などいくらでも抑え込んでみせるとも思っていた。
もちろん、そんなことになってほしくない気持ちはずっとずっと強かったが。
椅子に座ったまま、じっと鋼牙を見上げていたカオルは静かに立ち上がり、神妙な顔で言った。
「確かに、あたしは魔界のことは知らないことだらけだわ。
そのことで、今日みたいに鋼牙やゴンザさんをヒヤヒヤさせたり、心配させたりするかもしれない。
そうならないように、これからもっと魔界のことを勉強しなきゃいけないな、とは思ってるよ。
でも…」
カオルは、フッと笑顔を浮かべた。
「どんなときだって、最後には、鋼牙があたしを守ってくれるって、信じているから…」
「カオル…」
しばらくふたりは見つめ合っていたが、カオルは急に照れたような顔になって、
「あたしのことを心配してた、さっきの鋼牙…
なんかすごく嬉しかった」
と視線をそらして言った。
それを聞いて、鋼牙はフッと、いつもの余裕のある表情に戻った。
そして、カオルの身体を引き寄せる。
鋼牙の腕の中にスッポリ収まったカオルは、ちょっと驚いて目を見開いたが、すぐに目を閉じて鋼牙の胸に頭を預けた。
さきほどまでは自分にも責任を感じていたのか元気なさそうにしていたカオル(竜のほうの!)が、今は元気を取り戻して、ふたりの周りをヒラヒラと嬉しそうに泳いでいた。
fin
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カオルの目にゴミが入っただけ…
そんな些細な出来事も冴島さん家ではちょっとした事件になっちゃうものなんですね。
鋼牙たちが大袈裟に心配するだけで、実は普通のゴミでした! ってことにしようと思ったのですが、とある方の拍手コメントを読んで、そのゴミのせいで別の物が見えると面白いかもしれないとヒントをもらい、盛り込んでみました。
(いつも楽しみです様、ありがとう!)
G.W.を前に、今日で書き上げてしまいたい、って思っていたので遅い時間の更新になってしまいましたが、まだ起きている人います?
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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