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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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さらさら揺れる君の願い

いつもイベント当日にアタフタと書きあげて慌ただしくアップしているのですが、今年は1日前にアワアワと書けました!
あれ? 日付が変わってる!
やっぱり今年も当日アップになっちゃいました… Σ(゚Д゚) ガ~ン!



七夕にちなんだ冴島家のお話。

よろしければ、どうぞ…


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

しんと静まり返った冴島邸。
その屋敷のリビングのドアがガチャっと開かれると、途端に空気が動き出した。

「はぁ~ 疲れた~」

そう言って入ってきた御月カオルは、肩にかけていたカバンを外して、ダイニングテーブルの上にドサッと置いた。


  カサカサ、カサカサ…

開けっ放しのドアの向こうで、何かが擦れ合う音が段々と近づいてくる。

「いやぁ~ 思いのほか大変でございましたな」

そう言って入ってきたのは、この家の執事、倉橋ゴンザであった。
そのゴンザの手にあるのは、カサカサという音の正体である。

「フフフ。
 でもさ、結果的にこんな立派なものが手に入ったんだし、よかったよね?」

カオルは、ゴンザに近づくと、苦労して手に入れた戦利品を満足そうに見た。

  カサカサ、カサカサ…

ゴンザの持っているのは、長さ1.5mほどの笹だった。




話は昨日のお茶の時間にさかのぼる。

「今年は七夕飾りをやってみたいな…」

そう呟いたカオルに

「いいですね。
 カオル様、ぜひやってみましょう!」

とゴンザがノッてくれて、明日(つまりは今日)、探しに行くことになったのだ。

そして、今日。
とにかく緑の多い場所のほうが見つけやすいだろうということで、ゴンザはカオルを隣に乗せて、郊外へと車を走らせることにした。

ところが、北の管轄では、笹というものが見つからない。

いやいや、笹はあるのだ。
ただし、笹飾りにするような形状ではなく、スッと伸びた茎のてっぺんに大きな葉が放射状についているような感じで、木というよりは草の部類に入るような感じのものばかりだった。

それじゃあ、予定を変更して ’竹’ でもいいんじゃないか? ということになって、今度は竹林を探すことにした。
ところが、やっぱり見当たらない。

カオルとゴンザのふたりが途方に暮れているところに、犬の散歩をしているオジサンが通りかかったので訊いてみることにする。
けれども、オジサンの言うことには、

「この辺には竹なんて生えとらんよ」

とのこと。
そんなばかな、と思いながら、オジサンにお礼を言って別れると、カオルはケータイで調べてみて愕然とした。
どうやら、竹の植生の北限は北の管轄の南端で、それも自生のものではなく、160年ほど前によそから持ってきて移植されたものらしい。
今、竹が植えられているのは、公園のような公共の場所であったり、「孟宗竹林」などとわざわざ立て看板が立っているような場所にあったりするので、ちょっと行って1本分けてもらう… なんてことはなかなか難しそうだった。

「仕方ありませんな。
 今日のところは諦めて帰りましょうか…」

気落ちするカオルに、ゴンザはそっと声をかけた。

「そうだね」

弱々しく笑いながら答えたカオルがケータイを仕舞おうとしたとき、ちょうど着信が入った。

「はい…  あ、鋼牙? どうしたの?」

電話の相手に、曇りがちだったカオルの顔も、ようやく明るく輝いた。



鋼牙の電話によると、’たまたま’ 仕事で行った場所で笹を手に入れることができたというのだ。
だが、そんなものを持って仕事を続けるわけにも行かないから、いったん屋敷に戻り、玄関先に立てかけておくと言ってきた。
自分はまだ仕事が残っているからまた出掛けるので昼食はいらない、と、ゴンザへの伝言も頼まれた。

(たった今、北の管轄には竹は自生しないということを知ったばかりなので、どこに笹があったんだろう?)

(第一、笹の生えているような山の中に陰我なんかあるんだろうか?)

鋼牙の話を聞きながら、そんなことがカオルの頭の中には浮かんでいた。
だが、電話口の鋼牙は少しでも早く出かけたいのか、なんだか慌ただしい感じでもあったので、

「わかった… ありがとう。
 気を付けてね」

と何も聞かずに電話を切った。




屋敷に帰ってみると、確かに立派な笹が確かに玄関脇に立てかけてあった。
この笹を、鋼牙が山の中で切り(何で切ったんだろう? ひょっとして牙狼剣? まさか…)、切った笹をまさかり担いだ金太郎のように運んできたかと思うとおかしくてたまらなかったが、昨日の時点ではちっとも乗り気でないように見えた鋼牙が(わざわざ?)手に入れてきてくれたかと思うと、カオルは胸の中があったかくなった。
きっと今頃は、笹を入手することで遅れが出てしまったオブジェの浄化を、鋼牙は一生懸命に取り組んでいるだろう。



その鋼牙が帰ってくる頃には、カオルやゴンザが手分けして飾りつけをした笹飾りが、玄関脇で風に揺れていた。

『ほぉ~ 鋼牙。
 これが七夕とか言うやつの笹飾りってものか』

「そうらしいな」

『カオルのヤツ、ずいぶん、にぎやかに飾ったものだな…』

フッと笑っただけで、鋼牙は何も言い返さなかった。

屋敷に入ると、いつものようにゴンザが迎え、カオルもいつになくワクワクした様子で

「おかえり」

と出迎えた。恐らく、笹飾りについての鋼牙の反応が知りたいのだろう。

「笹… 飾ったんだな」

カオルの気持ちを汲んで、一言そう言うと、

「そうなの~
 それでね…」

と、カオルのほうがペラペラと何倍も話し出した。
ひとしきり話が終わった後、カオルは、

「鋼牙にも短冊を用意してあるから、よかったら、お願いごとを書いてね?」

と、きれいな和紙の短冊が渡された。

「願い事は別に…」

鋼牙はそう言おうとして、言葉を飲み込んだ。
そう言われたらカオルは悲しむだろう、と、そのくらいの気遣いはできるようになっていた。

「そうだな…」

曖昧な返事をして受け取っておいた。



今夜も指令が飛び込んだので、鋼牙は夜の闇へと消えていった。
白いコートの背中があっという間に見えなくなった。

「はぁーっ」

玄関先で鋼牙を見送ったカオルは、ひとつ溜め息をついた。
今夜は、1年に1度の恋人たちの逢瀬の日。
あちこちの家々では、願い事を飾った短冊が揺れ、それを話題に家族が楽しい時間を過ごしていることだろう。
だが、鋼牙は危険な仕事へと出掛けて行った。
世間のしあわせそうな光景とのギャップに、ほんの少しやるせなさが滲む。

ふと、笹飾りに目をやった。

(鋼牙… 結局書かなかったのかな…)

カオルが書いた短冊もゴンザの短冊も、少しひんやりする夜風に揺れている。

   家族がみな、しあわせでありますように

   お世継ぎの誕生、成長を見届けるまで長生きができますように

   素敵な恋人が見つかりますように

(んもう、ゴンザさんったら…)

冗談とも本気ともとれるゴンザの短冊を読んで、カオルはクスクス笑った。

(あ!)

カオルは、一番高いところに引っかけてある短冊に目を奪われた。
あれは鋼牙に渡した短冊だ。間違いない。
何が書いてあるのか気になって、背伸びをして手を伸ばす。

そこに書いてあったのは…




カオルの顔がクシャッと歪んだ。
泣き笑いの表情で、カオルは鋼牙の背が消えた方向をもう一度見た。


(鋼牙…
 これからもずっと、あなたがあたしの元に無事に帰ってきますように
 きっと、きっと… お願いね?)



to be continued(おまけへ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

書き始めて、ふと気づいたので調べました。
笹と竹の違い。
北海道にはどのあたりに笹(もしくは竹)が生えているのか。

そしたら、北海道では竹が自生していない(!)という衝撃の事実。
笹はいっぱいあるようですが、クマザサのようなものが多いらしい。
う~ん、困りましたね。 笹の入手ができない… (^▽^;)

さてさて。
鋼牙さんの短冊にはなんて書いてあったんでしょう?
いろんなパターンが考えられると思いますし、どういった言葉を使うのかによっても印象が違いますよね?

さぁ、みなさんはどんなことが思い浮かびましたか?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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