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きんのまなざし ぎんのささやき

この胸のざわめきは(2)

1期の鋼牙は、今見ると、不貞腐れているただのガキに見えませんか?(←褒め言葉)

’ホラーを斬る’
そのことが彼の中の大部分を占めていたことだったのに、女を守らなくてはならなくなったり、命を狙われたり、何だか面倒なことがあれもこれも一度に起こって、イライラ、イライラ…

何とも言えず、かわいらしいなぁ~♡





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透き通るような朝の空気は、実に清々しい。
目の覚めるようなまぶしい緑の木々を渡る風は優しく、軽やかにさえずる小鳥の声は心を軽くする。
鋼牙はいま、体内に溜まった邪気を浄化するために、英霊の塔に向かっていた。
牙狼の鎧を身に着けて雄々しく闘った歴代の黄金騎士たちが眠る場所。
ここに来るのは牙狼の称号を受け継いだとき以来だが、訪れると決まっていつも不思議な懐かしさを覚える。
慌ただしい日常から離れて、さすがの鋼牙も気分がよくなっていた。
柔らかな草を踏み、森の中に佇む白い塔へと一歩一歩近づいているとき、鋼牙はふと ’あること’ に思い至り、表情を緩めた。

(あぁ、そうか。
 そういうことだったのか…)




あの女… 御月カオルという画家の卵と出会い、彼女がホラーの返り血を浴びてしまったことで、鋼牙と彼女との間には奇妙な関係ができてしまった。
そして、いつの間にか彼女が冴島家に転がり込んでからというものの、鋼牙は気の休まることはなくなっていた。
もちろん、彼女の浴びたホラーの返り血の匂いを嗅ぎつけて盛んにホラーが集まってきていたが、そんな奴らは斬ってしまえば済むこと。そのこと自体は鋼牙にとってさほど大した問題ではなかった。
問題があるとすれば… それはもっと身近で日常的なことだった。

これまでの冴島家は、大きな屋敷に執事のゴンザとのふたり暮らしで、お互い必要なことしか会話しなかった。
そのため、屋敷での日常は、とても静かで落ち着いた日々だった。

ところが、あの女が来てからというもの、廊下をパタパタと駆け抜ける音に始まり、ちょっとしたドアの開け閉め、さらには「おはよう~」という挨拶する声ですら、とにかく、実にひとつひとつが騒々しいのだ。
その度にイラッとする自分と、ヒヤッとするゴンザ。
彼女をジロリと睨みつけてみるが、ちょっと首をすくめて謝罪したつもり(実際には少しも反省していない!)か、あるいは反対に噛みついてくるのだから始末が悪い。

そんな共同生活が始まり、カオルのいる生活にも少しは慣れてきたこの頃、どうしたことか、イライラだけではない、何か違った感情が生まれていることに鋼牙は気付いていた。

なんというか、胸の中の奥底でザワザワとさざなみが立つような感覚…

これまでにあまり感じたことのない胸のざわめきを訝(いぶか)しく思っていたが、昨晩のザルバの「おまえさんの身体には、かなりの邪気が溜まってきてる」という言葉を思い出して、ふと思いついた。

あぁ、そうか。そういうことだったのか…」

ふと、心に浮かんだ思いが、そのまま口を出た。

『ん、どうした、鋼牙?』

「いや…」

いつもなら魔導輪の詮索を「なんでもない」と跳ねつけるところだったが、今の鋼牙は気分がよかった。

「アイツ…
 御月カオルが近くにいると、どことなく落ち着かない気分が感じられるんだが、今、その原因に思い当たったところだ」

『ほぉ~
 ちなみに、その原因っていうのは、なんだったんだ?』

ザルバも鋼牙の機嫌の良さを感じ取ったのだろう。その話題に突っ込んできた。

「あの女は、’ホラーの返り血を浴びし者’ だ」

『そうだな』

「俺の中に蓄積されている邪気が、あの女が浴びた返り血に反応している…
 違うか、ザルバ?」

『…なるほど。そういう解釈もあるな』

「あぁ。
 だから、浄化の儀式でこの邪気を消し去れば、俺はもう妙な感覚を感じることも無くなるだろう」

そう言って、鋼牙は目の前にある塔を見上げた。
その塔の頂(いただき)に、白く大きな羽をキラキラ光らせた彫像が、青い空によく映えていた。




何百、何千という彫像が取り囲む円形の空間の中央に立つと、鋼牙の頭の中に神々しい声が響いてくる。

<< 我ら牙狼の称号を受け継ぐ者よ。光を浴びるが良い >>

「はい…」

すると、鋼牙の頭上に清廉で気高い金色の光が降り注ぐ。

<< 今、おまえの肉体に宿る邪気は、おまえの陰我と共に消え去るだろう >>

その声とともに、鋼牙は身体の中が熱くなるのを感じた。
そして、モヤモヤとした霞(かすみ)が晴れていくように、頭の中がクリアになっていった。
が、その後に続いた言葉を聞いて思わず身じろぐ。

<< おまえのすぐ近くに、ホラーの血の匂いを感じる >>

(…!)

<< 何を意味しているか、おまえには判っているだろう >>

「…」

鋼牙は無言でうなずいてから、
キッと反射的に上を見上げて、 ’声’ に向かって尋ねた。

「俺は! …私のしたことは間違っているのでしょうか?」

鋼牙は答えを求めて、中空を睨むように見つめた。
降り注ぐ声がもったいぶるように少し間(ま)を置いた。


<< 何が正しいか、何が間違っているか、我らにはわからない
  ただ、おまえは、おまえの信じる道をゆくがよい >>

「信じる道?」

<< そうだ…
  時に迷うこともあるだろう。
  だが、おのれを偽ることなく向き合えば、おのずと道は開かれる >>

「…おのずと、道は、開かれる…」

噛みしめるようにその言葉を繰り返してみる。
ふーっと息をひとつ吐く。
顔をあげた鋼牙の瞳は、何かが吹っ切れたように曇りなく輝いていた。




塔を後にした鋼牙は、来た道を今度は反対に辿っていった。

迷うことは悪いことではない。
人として生まれたからには、たとえ黄金騎士と言えど迷って当然なのだ。
それに…

『鋼牙。
 浄化の儀式のおかげで、ずいぶん上機嫌なようだな?』

鼻歌でも歌い出しそうなほど機嫌のよい鋼牙に(もちろん実際に歌うようなことはないのだが)、ザルバは片眉をあげて目をみはった。

「まぁな…
 
俺の中の邪気が浄化されて気分がいいこともあるが

珍しくも、促さなくても鋼牙のほうから話しだしたことに驚き、ザルバは驚いて言った。

『なんだ? 他にも何かあるのか?


「さっきも言ったように、これでもう、あの女の前でも妙な感覚に悩まされることはなくなるかと思うとほっとする」

『…』

何も答えないザルバは無視して、なおも鋼牙は離し続けた。

「あいつは飛んだ跳ねっかえりだからな。顔を合わせれば多少イラつくことはあるだろうが、まぁそのくらいは我慢できないことはない」

『…そうか』

ザルバはようやく曖昧な返事をして、鋼牙の横顔を眺めた。

(ふむ…
 ほんとに、それで、おまえさんの胸のざわめきはなくなるもんかな?)

ザルバがそっと思った疑問は…  いずれ、そう遠くないうちに答えが示されることになるだろう。



fin
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いやぁ、久しぶりに書いたこともあって、いろいろ、う~ん、大丈夫ですかぁ? (;^ω^)

そもそものところは、魔戒ノ花で、雷牙が100体のホラーを斬ったところで「邪気が溜まっている」ということで雷牙が英霊の塔を訪ねていました。
だったら、鋼牙もカオルと会った頃に、浄化の儀式のためにあの地の訪れていたんじゃないか? …ということから妄想がスタートしたわけです。

カオルのことがなんとなく気になる鋼牙が、その ’ザワザワ’ の原因は、自分の中に蓄積された邪気と、カオルの浴びたホラーの返り血が反応してのことじゃないか? と考える… そんなこともあるかなぁと妄想してみたんです。

そんな妄想、間違ってるかな?

<< 何が正しいか、何が間違っているか、我らにはわからない >>

ふふふ、英霊の声もこう言ってらっしゃることですので、信じた道をゆきます!


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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