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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
2025/12/31 ・・・ ようこそ
2023/12/24 ・・・ 金牙新年!
2023/12/03 ・・・ 冬ごもり大作戦(2)
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2023/07/02 ・・・ いちばんの存在(3)
最近の’お礼’

おまえのせい(12)

すいませ~ん!
アクションシーンなんで、Y監督を呼んできてもらっていいですかぁ?
あと、いとぅさんも!

え? いない?
あ… あぁ、そうなんですか… (困ったな…)
じゃあ、このシーンはカットってことで!

え? それも無理? (一層、困った!)

それじゃ、みなさん!
頑張って脳内補完でお願いします! (なにとぞ!)


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

セクメトにゆっくりと近づく鋼牙。
最強の魔戒騎士に狙いを定められた彼女は少し青ざめた顔をし、その場にしゃがみ込みたくなるのを必死に堪えていた。
オリトはその光景をまるで映画か何かでも見るような感覚で茫然と眺めていた。

(ホラーを狩るのが魔戒騎士の務め…)

オリトの中で、鋼牙の言葉がこだましている。
それは、魔戒騎士に憧れ、父を師として修行し始めたときから何度となく聞かされた言葉だ。
その言葉に忠実に、魔戒騎士として闘ってきた自負はあった。
そう、あの日までは…

あの日を境に、魔戒騎士とは? ホラーとは? 人とは? 守るべき者は? さまざまな問いかけが何度となく繰り返された。

あの運命の日から今日まで、ジョアンを喰って彼女の姿となったセクメトを、

「これはホラーなんだ。だから斬らねばならない」

と思い込もうとした日もあれば、

「彼女はホラーなんかじゃない。ジョアンに違いないんだ」

と言い聞かせる日もあった。
その日そのときで導き出す答えはいつも変わった。
今だって、どっちつかずで決められはしないし、どれだけ悩んでも迷っても答えは出そうになかった。
だが、セクメトの最期がいよいよというときになって、ある想いがだんだん自分の中で大きくなっていることを感じている。

(俺は、こいつを見殺しにすることなど出来はしない!)

あの日、不意に奪われてしまったジョアンの命はもう取り戻せはしない。
だが、今、目の前で起ころうとしていることは、オリトの気持ちひとつで今ならまだどうにかできるかもしれなかった。
もう二度と、ジョアンが傷つけられることは御免だ。

(ジョアン! 俺がおまえを守ってやる!)





  はぁ… はぁ… はぁ…

セクメトは怯えた表情でじりじりと後退していた。
目の前には冴島鋼牙が迫っている。

(自分さえこの魔戒騎士に斬られれば、丸く収まるんだ…)

頭ではそう思っているのだが、自分に迫りくる魔戒騎士の ’絶対的な存在感’ にはどうにも耐え切れずに、足が勝手に後退(あとずさ)ってしまうのだった。
やがて、セクメトの背中がドンと木に当たり、退路を断たれてしまった。

行き場をなくしたセクメトの前で、鋼牙は足を止めた。
不気味な静けさの中、セクメトの荒い息遣いだけが必要以上に聞こえてくる。
すっかり乾ききった喉を、ごくりと鳴らしたとき、

「おまえを斬る…」

と、鋼牙の静かな声が空気を震わせた。

だが、どうしたことか、セクメトにはその声音に冷たさが感じられなかった。
じっと凝視するように相手を見つめてみると、鋼牙の表情はどこか哀しげでもあり、どことなく慈愛に満ちたような優しさをも含んでいるように見えた。

が、それも一瞬のことだった。
剣を持つ彼の右手が天空に突き立てられ、くるりと金色の円が描かれる。
すると、途端に、思わず手をかざして顔を背けずにはいられなくなるほどの目のくらむような強い光に満ち溢れた。
やがて、その光が鋼牙の身体に吸い寄せられるように集まっていったかと思うと、そこには神々しいほどに輝く雄々しい黄金騎士 牙狼の姿があった。

その金色(こんじき)の鎧に対峙しているだけで、セクメトの身体にはちりちりとした痛みが感じられた。
だが、不思議なことにそれがまるっきり不快なわけでもなかった。

(いよいよ、なんだわ…)

相変わらず呼吸は荒く、喉に渇きを感じていたが、そういう感覚とももうじきお別れなのだとどこか達観している自分がいた。
目の前の金色に輝く鎧がガシンと鳴り、牙狼剣がゆっくり振り上げられた。
セクメトは目を閉じ、それを迎え入れるように両手を広げて、’そのとき’ を待った。

…が、しかし!

陽だまりのような穏やかな空気を切り裂くように、刺々(とげとげ)しい闘気が鋼牙を襲った。
驚いたセクメトが慌てて目を開けると、牙狼とは違う別のもう一体の鎧の姿が飛び込んできた。
その魔戒騎士は、牙狼とセクメトの間に割って入り、鋭い一撃を牙狼に向けて放っていた。

「!」

鋼牙は咄嗟にそれを剣で弾いて、飛びのいた。
襲いかかってきた相手は、黄金色かと見まごうほど美しく輝く、赤銅色の鎧だった。

初めて遭遇した相手と、不動のまま見つめ合うこと数秒。

日本刀のように細長くわずかに反(そ)りのある魔戒剣を構える魔戒騎士は、息をもつかせぬスピードで間合いをグンと詰め、二の手、三の手と連続して突きを放ってきた。
鋼牙は間合いを取ろうと外へ外へと向かうが、相手の攻撃は執拗だった。

(ならば…)

容易には振り切れそうにないと判断した鋼牙は、まともに剣を受けて力で押した。
互いの息をもかかりそうなほどの至近距離で睨み合う。

「オリト!」

セクメトが叫んだ。

「もうやめて! 剣を降ろして!」

セクメトはぶつかり合う魔戒騎士たちに近づこうとするが、あまりのふたりの気の凄まじさにどうすることもできない。
鋼牙は相手の褐色の瞳を睨みつけるようにして、低く鋭い声で叱責する。

「ばかなことはやめるんだ! おまえの為すべきことは、こんなことではないはずだ!」

だが、それに対して、オリトは、

「ジョアンは誰にも傷つけさせない。あんたにジョアンを斬らせやしない」

と呪文のように言うだけで、鋼牙の剣を力で振り払った。

そして、再び攻撃が開始された。
その滅茶苦茶に振り回される剣裁きは先程までの緻密なまでに計算されつくしたオリトの攻撃とはまったく真逆で、さすがの鋼牙も次の手を見切ることは難しく、次々と繰り出される攻撃を紙一重で躱(かわ)すことさえあった。
鋼牙はなんとかオリトへのダメージを最小限にすることを考えて、相手の出方を窺い、隙を探していた。
その情け心が、鋼牙の動きをわずかなところで鈍くしていた。
もちろん、その鋼牙の目論見(もくろみ)は、口では言わずとも当然ザルバにも伝わっている。

『まずいな、鋼牙。押されてるぞ!』

「くっ…」

オリトの捨て身の攻撃には鋼牙のつけいる隙は、皆無だった。
もともとかなり腕のたつ騎士であったオリトだったから、正気をなくし、なりふり構わず攻撃を仕掛けられては、いくら鋼牙といえども苦戦を強いられるのも無理はなかった。

『鋼牙、諦めろ!
 このままじゃ、いくらお前でもただではすまない!』

鋼牙の顔が悔しげに歪んだ。
その間も鋭く斬りかかるオリトの剣を防ぎながら、右に左にと忙しく立ち位置が入れ替わったが、その鋼牙の視線の隅に心配そうに見守るセクメトの姿が映った。
その姿は、生前のオリトの恋人の姿にも重なって見え、遠く北の管轄で自分の帰りを待つ人の姿とも重なって見えた。

(今、自分が為すべきことは何なんだ!)

鋼牙は、オリトに突きつけた問いを、あえて自分にぶつけてみる。
これまでも何度となく自分に問うてきたことだ。
そして、この先も魔戒騎士として闘い続ける限り、突きつけられる問いかけでもある。

(その答えは… 決まっている!)

鋼牙の目が鋭く光り、渾身の力でオリトの剣を大きく跳ねのけた。



  ガシャン!

タイムリミットが迫り、
鋼牙は黄金の鎧を魔界に返した。
すると、オリトのほうも鎧を解き、生身の姿で鋼牙の前に立った。
先程より幾分落ち着いたような表情のオリトに、鋼牙は声をかける。

「まだやるのか?」

その口調に微かな憐れみの匂いを嗅ぎ取ったと感じたオリトは、表情を険しくさせて、

「うるさい!」

と吐き捨てると、細身の剣を自分の身に引きつけて鋼牙に向かって突進した。



to be continued(13へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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