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きんのまなざし ぎんのささやき

おまえのせい(13)

そろそろ決着をつけねば! と思い、強い気持ちで書き始めてみました。

この続きを読んだら、きっと、
  こうなったほうがよかった
とか
  こうだったらよかったのに
と思う人もいるだろうと想像しつつ…
でも、それはそれで、真剣に読んでいただいてのこと、あるいは、真剣に妄想していただいてのことだと思うので、selfish 的には全然OKっす!

さて…
今回は(頑張り過ぎて)少し長くなってしまったのですが、よろしければ続きをどうぞ。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

オリトは真っ直ぐに鋼牙に向かって突っ込んできた。
自分の身を守ろうなどとは少しも考えていないのだろう。脇のガードはがらがらで、鋼牙に一太刀浴びせることだけしか考えていないようだった。

『鋼牙!』

捨て身の相手にいつまでも中途半端に立ち会っていたのでは、いずれ殺(や)られてしまう。
覚悟を決めろ、とザルバの叱咤が飛んだ。

「わかっている」

痛ましげな表情の鋼牙は、それでもひどく落ち着いて答えた。
ザルバは、おやっ、というふうに片眉を上げた。

(どうやら気持ちは決まったみたいだな…)



迷いの消えた鋼牙は、オリトに全神経を集中していた。
そのくせ、身体のどこにも無駄な力みなどはなく、オリトの繰り出す多彩な攻撃を余裕で弾いていた。
ザルバは思わず身震いを感じるほどだった。
これほど決然として相手に臨む鋼牙は、そう拝めない。

(こうなれば、こいつに敵う相手はないな)

ザルバはフッと不敵な笑みを浮かべた。

オリトの攻めを苦も無く躱していた鋼牙が、一瞬鬼のような形相を浮かべたかと思うと、

 ドゴッ!

と、オリトの顎に彼の拳(こぶし)が見事に入った。
2~3歩よろめいたオリトが自分の拳で口元を拭(ぬぐ)うと、血の混じった唾液を吐き捨てた。
だが、憎しみの混じる強いまなざしを放つオリトの目は、鋼牙から少しも離れなず、闘志に陰りは全くなかった。
鋼牙の拳をまともに受けても怯まないとは、敵対する相手とは言え賞賛したいところだ。

再びオリトの剣が鞭(むち)のようにしなり、執拗に襲いかかってきた。
だが、鋼牙はそれをひとつひとつきれいに弾き、オリトの懐に飛び込んだ。

「ぐはっ」

今度は鋼牙の肘がオリトの胸を強打した。
肋骨が何本かイったかもしれないような激しい痛みが走る。

 はあ、はあ、はあ…

胸を鷲掴みにしながら、オリトは堪えていた。

「もうよせ。
 これ以上やり合うことは無意味だ」

鋼牙はできるだけ感情を交えず、冷たい声で言った。
下手な同情を示せば、オリトをさらに傷(いた)めつけることになるからだ。
魔戒騎士として、その腕を認める者に対しての、精一杯の情けと言えた。

「クッ」

オリトは俯き、強く唇を噛んだ。

(俺はまた守れないのか…)

自分に対する怒りのために、身体が震える。
だがすぐにその震えがピタリと止まり、オリトは顔をあげ、鋼牙を睨みつけた。

「うぉぉぉぉ」

地を揺るがすような唸り声をあげ、渾身の力を込めて剣を引きつけると鋼牙に突進してきた。
その瞬間、鋼牙の顔が哀しみに曇ったが、オリトはそれに気づかない。
あと少しで自分の間合いに鋼牙が入る、と思った瞬間、鋼牙はフッと身体を沈みこませると、左足を軸にして長い右足をくるりと回して大きな弧を描いた。
足の動きに合わせて白いコートの裾もきれいに回ったかと思うと、オリトは鋼牙に足を払われて、ドドドーッと突っ伏していた。
オリトの倒れている脇で、何事もなかったかのように鋼牙はスッと立ち上がると、地面に這いつくばるオリトを見下ろした。

「オリト!」

それまでその闘いに手出しができず見守るだけだったセクメトが、オリトに駆け寄る。

「お願い。もうやめて!
 あなたは素晴らしい魔戒騎士なんだから…

 もういいの…

 もっと自分を大事にして、ね?」

呻き声をあげていたオリトは、汗と土にまみれた顔をセクメトのほうにあげた。
そして、セクメトへと手を伸ばして、その細い腕を掴んだ。

「俺は… 俺はもう、大事な者を失くしたくないだけなんだ」

と絞り出すように言った。
それを聞いたセクメトは、一瞬… ほんの一瞬だけ顔を曇らせたが、すぐに心の底から嬉しそうな笑顔になった。

「ありがとう、オリト…
 それだけであたしには十分…」

セクメトは指先でオリトのこめかみ辺りから頬にかけて愛おしそうになぞると、顔を近づけ、触れるだけの口づけをした。
スローモーションのようにゆっくりとした動きに見えたが、とてもわずかな時間のことだった。
セクメトの唇が離れるか離れないかといったところで、オリトが顔をしかめて言った。

「おま… なにをし…た…」

だが、オリトはセクメトの答えを聞くことがないまま、そこで意識を途切れさせた。
それを見て、鋼牙は慌てた。

「何をした!」

その問いに答えたのはザルバ。

『大丈夫だ、鋼牙。
 やっこさん、気を失ってるだけだ…』

その答えにほっとした鋼牙は、ゆっくりと立ち上がるセクメトをじっと見つめた。

「少しだけこの人の生気を吸ったの。 ほんとに少しだけ。
 こうでもしないとオリトは何度でもあなたに立ち向かっていくだろうから…」

オリトに向けていた目が、今度は鋼牙を真っ直ぐ見た。

「ごめんなさい。
 あたしがこの身体をさっさと捨ててしまえば、この人がこんなにボロボロにならなくてもすんだ、ってことは解ってるの。
 でも…

 この身体になって…
 この身体のあたしを必要とする人と会って…
 なんだか手離したくなくなっちゃって… だから…」

泣きそうな表情だったセクメトが気持ちを落ち着かせると、一歩鋼牙に近付いた。

「この身体のまま、斬ってほしかったの。あなたに…」

そう言った彼女の姿は、ホラーだというのに神々しくさえ見えた。

『なあ、ひとついいか?』

声を発したザルバに気付いた鋼牙は、すぐに左の拳を前に突き出して、ザルバをセクメトのほうへ向けた。

『おまえさんなら、俺様のように魔戒騎士の手助けをする魔導具にだって、きっとなれるぜ?』

誰かのために我が身を差し出すようなホラーはいない。
それは、人の邪心から生まれたホラーだから仕方がないことだったが、セクメトに限っては違っていた。
もし、セクメトさえ望めば、ザルバの言う通り、魔導具として生き残ることができるだろう。

だが、セクメトは大して時間を置かずに首を横に振った。

「だめよ… あたしはこの身体がいいんだもの。
 魔導具になって、どこかの魔戒騎士があたしを必要としても、それはなんだか違うのよ。

 だから、お願い。
 オリトが目覚める前に… 終わらせて」

「…」

セクメトと鋼牙はしばらく静かに視線を交わした。



そして…
鋼牙は何も言わずに剣を抜いた。
右足を後方に引き、剣をザルバにこすり合わせるようにして構えた。
強大な敵に立ち向かうときと同じように、ただ無心になっていた。

(オリト…)

セクメトが微かに微笑みながら目を閉じると、一瞬にして、’それ’ は終わった。

ドサッとその場に倒れたセクメトの視線の先に、いまだ昏倒しているオリトが見えた。
セクメトの目から涙が溢れる。

(ありが… と…)

声にならない声が震える唇から洩れたと思ったら、次の瞬間、セクメト… いや、ジョアンの身体は美しい光を放ち、細かな粒子となってサラサラと暗黒の空に溶けるように散っていった。
セクメトとともにジョアンの魂もまた、往(い)くべきところに往ったのだ。

鋼牙は剣を鞘に納め、残心を解くと、その粒子の最期の一粒が消えるのを見送った。





どのくらいそうしていただろう。
オリトが意識を取り戻した。
目だけで辺りの様子を探ると、視界に白いコートが目に入った。
霞む目をしばたかせると、鋼牙の沈痛な表情が見えた。
何かを悟ったオリトは、ガバッと起き上がろうとして苦痛に顔を歪ませる。
身体のあちこちが悲鳴をあげているが、そんなことを気にしている場合ではない。
両手を地面に着き、なんとか上体を起こす。

『おや、気づいたか…』

ザルバが呟く。
ようやく片膝を立ててその場に座ったオリトは、息を整えると鋼牙に向かって言った。

「斬ったのか?」

鋼牙の眉がピクリと動いたが、すぐに無表情になって、オリトのほうに身体を向けた。

「ああ」

どこか温かみのある、それでいて決然とした鋼牙の返事を聞いたオリトは、大きくひとつ息をつくとともに肩をストンと落とした。

「そうか…」

先程までの闘気はもはや微塵もない。
まるで憑き物でも落ちたような、どこか清々しささえ感じる穏やかな表情をしていた。

「そうか…」

同じ言葉を二度繰り返したが、二度目は悲しみが混じっているように聞こえた。



セクメトは少しも抵抗せず、鋼牙が渾身の一撃で仕留めたのだから、彼女は大した苦痛を感じずに逝ったに違いなかった。
そして、セクメトに身体を喰われたジョアンの魂もまた、ようやく解き放たれて安寧の眠りにつけるに違いなかった。
だが、そんな慰めを鋼牙は一言も口にしなかった。
オリトが大事なものを失ったことには変わりがないのだから。



やがて、よろよろとオリトは立ち上がった。
黙って立ち去ろうとするオリトに、鋼牙が声を掛けた。

「どこへ行く?」

背を向けたまま、オリトは答えた。

「これだけのことをしたんだ。
 まずは甘んじて罰を受けねば…」

誠実な彼らしい答えだった。
いつもの鋼牙ならそのまま黙って行かせるところだったが、剣を交えて互角に闘い合った相手だからこそ何か言葉を掛けたくなった。

「おまえはいい魔戒騎士だ。 …また、戻って来い」

万感の願いを込めて鋼牙が言うと、オリトは下を向いた。
微かに肩が震えているようにも見えたが、グイッと上を向いたオリトが明るい声で言った。

「そいつはどうかな。今の俺にはわからんな…」

「…」

オリトは、じゃあな、というふうに右手を上げると、痛む身体でその場を後にした。
そのひどく頼りなげな後ろ姿を見送りながら、

(必ず戻って来い!)

と心の中で念じた鋼牙は、オリトを最後まで見送らずに踵(きびす)を返した。
そして、コートの裾をはためかせながら、風を切るように颯爽とした歩調で、自分の戻るべき場所へと向かうのだった。



to be continued(14へ)
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拍手[25回]

コメント
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無題
拍手コメントの続きです(w)
この後、カオルちゃんとの最初のシーンに戻るんですよね?
カオルちゃんと接しながら鋼牙は何を考えるんでしょう?とってもワクワクですヽ(´▽`)/
「おまえのせい」というタイトルにどんな意味が込められているのか...それを楽しみにつづき、待っています(≧∇≦)
最初、甘いお話を実際期待してましたがw、今は甘いお話よりも鋼牙がオリトとセクメトに出会って感じ、思い、そして何を得たのか、もちろん決意新たに...となったのは言うまでもなく...出来れば後日談的なものでオリトと鋼牙が再開するシーンなども交えて見てみたいです!
オリト~!!戻ってこ~い!!(お願いっselfishさまっ!)
Mion 2015/07/23(Thu)06:31:04 編集
Re:無題
あれ? 覚えてましたかぁ?
ここからあそこにどうやって持っていこうか… ふむ、実に悩ましい問題です! (^_^;)
ラストがちゃんと締まらないと、ここまでの妄想が台無しになりますからね。心して考えないと… (…って、お~い! 今頃、考えるんかーい!)
ちゃんと終われるといいな。神様、お願い…(>人<*)

それにしても、拍手コメントばかりか、こうしてわざわざコメントにまで書き継いでいただけて、感謝! 感謝です!

【2015/07/23 23:11】
無題
お久しぶりです。あまりコメントはしないのですが、貴方の小説はずっと読ませて戴き相変わらずそして新鮮に私に牙狼の世界観にひたらせてもらっています。私の中での牙狼はやはり鋼牙とカヲルしか考えられず、それ以降の牙狼以降は正直本当の牙狼とは思っていないのです。柔軟性がないと言えばないのですが、こればかりはゆずれません。笑。だから貴方の小説は私には鋼牙とカヲルがまるで映像化されたように、とても心に残り幸せな時間を与えてくれます。勿論二人の関係性以外の話も大好きです。なんか長々と書いてしまいましたが、これからも素敵な小説を読ませて下さいね。暑い日が続きますがお身体を御自愛下さいね。
pan 2015/07/24(Fri)19:29:29 編集
Re:無題
お久し振りです、pan様。
この度も丁寧なコメントをいただきまして、ありがとうございます!

牙狼もこの10年でいろいろな流れが出てきたので、どの作品がお気に入りなのかは人それぞれですよねぇ~
こればっかりは、好みがあるから致し方ないです。

それにしても…
鋼牙牙狼が好き! という方にうちの妄想が読まれているのかと思うと、なんだか身の引き締まる思いがします。
気ままにつらつら妄想してるだけなのに、いいんだろうか… (ドキドキ)
どうかこの拙(つたな)い妄想を足場として、pan様の素晴らしい想像力をフルに発揮していただいて、自由に(そして素敵に!)妄想を広げてくださいませ。
pan様も、頭の中で、鋼牙さんをこれ以上ないくらいにカッコよく映像化してるんでしょうね。できることなら覗いてみたいです♡

いやあ、久し振りにお声が聞けて嬉しかったです。
これからもがんばって書こう! って元気を貰いました。ありがとうございます!
【2015/07/24 22:16】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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