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牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです
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為すべきこととは(2)
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青年はフードを目深(まぶか)に被った。
フードの下は深海のような闇。
その暗い海の中に、ガラス玉のように光る眼が光っていたが、その目が映すものはひどく歪んだ作り話の世界だった。
青年の手には、何人もの血を吸ったナイフが握られている。
今から人を殺そうというのに、何の緊張も何の身構えもなく、青年はごく自然に女へと近づいた。
(あれぇ? 困ったな…)
青年は歩きながら考えていた。
いつも青年は、獲物の背後から忍び寄り、騒がれないように口を塞いだ後、ナイフを突き立てる。
そうしたほうが、飛び散る血痕をまともに浴びずに済むからだった。
だが、目の前の女はしゃがんでいる。
このままでは仕事がやりにくいのである。
(うーん…
どうしよっかなぁ)
と、そんなことを考えているうちに、女の方が青年の存在に気付いたようだ。
ハッとして慌てて立ち上がると、スカートの手で払って皺を伸ばしながら、脇にどいた。
(あ、ラッキー!)
女が立ち上がってくれるとやりやすくなる。
青年は突然駆け出し、数歩の間合いを一気に詰めた…
天井も壁も、あろうことか床までもが真っ暗な空間を、白いコートの男は悠然と歩いていた。
『もうじき魔戒道が終わる』
「そうか…」
用件だけの短いやりとりの後、一瞬、耳の奥が真空になるような微妙な違和感を感じてから、その男は住宅街の一角に姿を現わした。
魔戒道の中では感じない風を感じて、男は我知らずふっと気を緩めた。
だが、すぐに気を引き締めた。
そう遠くないところに、殺気のようなものを感じ取ったからだ。
すぐに四方に気を配る。
『鋼牙、後ろだ!』
魔導輪が鋭く叫ぶのと、男がそちらを見たのはほぼ同時だった。
視線はT字路でどこかの家の塀にぶつかる。
ほんの数メートルの切り取られた視界を、右から左へとフードを被った青年が歩いていた。
それだけならなんのことはない光景だが、その青年の手にはナイフがあり、鈍く光っていた。
「…」
次の瞬間、魔戒騎士は走っていた。
相手がホラーかどうかはわからない。
だが、もしホラーなら、誰かが犠牲になる前に止めたかった。
女を羽交い絞めにした青年は、とても興奮していた。
女は青年の腕の中から逃れようともがいていたが、振り解けるほどの力はなかった。
「お姉さん、だめだよ。野良猫なんかにエサをあげちゃ…
そんな悪い事する人間は、この世から消えちゃいなよ」
くっくっく、と喉の奥に引っかかるような笑いをする青年の狂気に、女は怯え、がくがくと震えるしかできなくなった。
なんとかしたかったが、力が入らない。
最後の抵抗は、ただ、いやいやと首を横に振ることしかできなかった。
すると、女の肩に辛うじて引っかかっていた小ぶりなキャメル色の鞄が地面に落ちた。
魔戒騎士がT字路まで来て青年の消えた方に視界を向けると、そこには、女を後ろから拘束してナイフを振りかざしている青年の姿があった。
女の足元にはキャメル色の鞄が落ちている。
(あれは…)
魔戒騎士の脳裏に、ある女が浮かんだ。
キャメル色の鞄を肩に掛け、笑顔を見せながら手を振り、出掛けて行ったのは今日の午後のことだった。
『鋼牙、あれはカオ…』
魔導輪が皆まで言う前に魔戒騎士が物凄い勢いで駆け出したために、魔導輪は口をつぐむしかなかった。
うっかり喋ると、顎どうしがぶつかりあって壊れてしまいかねないほどだったからだ。
今にもナイフが振り下ろされそうなとき、魔戒騎士と青年との間はまだ少しの距離があった。
そこで、たまりかねた魔戒騎士は、青年に向かって声をかけた。
「おいっ」
その声にビクンと身体を揺らして振り向いた青年は、目を丸くして驚いていた。
すると、そこに隙が出来たのを察した女は、思いっきり青年の足を踏んずけて彼の腕からすり抜けることに成功したのだった。
青年は痛む足を引きずりながら慌てて手を伸ばしたが、逃げた女は二度と捕まることはなかった。
「チッ」
女の後ろ姿に悔しそうに舌打ちした青年は、魔戒騎士のほうを改めて見て、すぐに自分にとって不利な相手だと悟った。
ものすごく目立つ白いコートを着たその男の姿は、ごく普通の住宅街の中では少々滑稽に見えたが、鋭い眼光としなやかな身のこなしから見ても只物でないことが察知できた。
「いや、その… 驚かせたみたいだけど、今のは冗談なんだよ。
今逃げていったのは、僕の彼女でさ。ちょっとふざけてただけなんだから…」
そう言った青年の目は、さっきまでの力強さはなく、男と目が合うのを避けている。
「…」
つかつかと青年の目の前まで来た魔戒騎士は、冷たいまなざしで青年を見下ろしていた。
が、アッと思う間もなく、肘で青年の顔面を横殴りにし、そのまま真上から首の根元に肘を振り下ろした。
『おい、やめろ!』
そう魔導輪が声をかけたが、残念ながらその頃には青年は地面に叩き臥されていた。
『あ~あ、やっちまったな…』
こうなってしまっては、魔導輪も深い溜め息交じりに呟くしかできない。
to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
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