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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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ただ目の前のことを

今日も穏やかな秋の陽気の一日でした。
休みの日に晴れると嬉しい!
だってお洗濯ができるんだもん!
…ってことで、今宵の妄想はお洗濯のシーンから始まりますよ~


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「はぁ~ 気持ちいーっ」

冴島家の中庭に張られ洗濯ロープに、真っ白に洗い上げられたシーツが爽やかな風に翻っている。
両手を広げて胸いっぱいに澄み切った空気を吸い込む。
ここ、北の大地に秋とは思えないような日差しが降り注いだ今日、ゴンザはカオルの手も借りてありとあらゆるものを洗濯したのだった。

「ふぅ、これで最後でございますな。
 いや、カオル様、ありがとうございました」

ジャケットを脱ぎ、ベスト姿でシャツを肘までまくり上げたゴンザが、額の汗を拭きながらカオルのそばに来た。

「きれいに干せるといいね、ゴンザさん」

「はい。この分ならしっかり干しあがるでしょうな」

渇いた風を受けて通作揺れる大量の洗濯物を眺めたふたりは、顔を見合わせてふふふと微笑み合った。

ふと、空に目を留めたカオルが、ゴンザに注意を促した。

「ねぇ、見てみて! あそこ!」

カオルが指さす方向を見るゴンザ。

「綺麗だと思わない? あれ、ウロコ雲でしょ?」

抜けるように透明感のある空に、白いモコモコとした雲が並んでいた。

「ああ、確かに。
 美しいですなぁ」

カオルに同調したゴンザだったが、思わぬことを言いだした。

「鋼牙様のお帰りが心配ですな」

「えっ?」

カオルが空から地上に視線を戻し、ゴンザの顔を、なぜ? と問いたそうに見た。
それに気づいたゴンザが、ああ、と説明を加える。

「ウロコ雲はこれから天気が悪くなる予兆なのです。
 本日、鋼牙様は遠出をすると言って朝早くからお出かけになりましたから…
 なんとか雨の降る前にお戻りになられるとよいなと思いましてね」

ゴンザの話を、へぇ、と聞いていたカオルが、再び空を見上げる。

「綺麗に見えるものでも、よくないことの前触れだったりするんだね…」

神妙な顔つきのカオル。
その横顔を温かいまなざしで見つめていたゴンザが、

「でも… いいではありませんか」

と言った。
そして、カオルと同じように空を見上げる。
すると、今度はゴンザの横顔をカオルが見つめる。

「確かによいことばかりではないかもしれませんが、今、わたくしたちの目の前に広がるこの空は美しい。
 美しいものを見て、素直に美しいと思う… それでいいのでは?」

微笑んでいるような優しい表情のゴンザにつられるように、カオルも自然に表情が緩む。

「そうだよね。
 綺麗だな、素敵だなって素直に思えばいいんだよね?」

「はい…」

そう言いながら見つめる空は、ほんとうに、ほんとうに美しかった。





その夜。
窓にガラス玉のような雨粒がいくつも張り付き始めた。

「ああ、とうとう降ってきましたな」

「うん」

暗い外を見透かしながら、カオルとゴンザは鋼牙の身を案じた。
すると、ほどなくして玄関のほうで人の気配がした。

「あ!」

ふたりは顔を見合わすと、玄関へと急いだ。

「鋼牙!」

玄関ドアの前には、白いコートの肩についた雨を手で振り払っている鋼牙の姿があった。
髪からも雫が垂れていたが、カオルの声に顔をあげた鋼牙は、彼女の顔を見ると優しい顔になった。

「おかえりなさい…」

迎えるカオルに

「ただいま」

と答える。

「カオル様…」

遠慮がちに後ろから声をかけるゴンザを振り返ると、タオルがそっと差し出された。
ニッコリ笑ったカオルが受け取ると、それを鋼牙に差し出す。

「はい」

受け取った鋼牙はそれを広げて無造作に頭を拭きながら歩き出す。
スタスタと歩く鋼牙に遅れまいと小走りにカオルは追いかけていく。

「あのね、ゴンザさんと心配してたんだよ。
 雨、大丈夫かなって…」

「今日はお洗濯をしたの。それでね、空がとってもきれいで…」

あれこれと思いつくままに話しかけているカオルに、うむ、とか、ああ、とかいう返事しかしない鋼牙の後ろ姿を見ながら、ゴンザは幸せそうに微笑んだ。
この幸せが明日も続く保証などはない。
でも、だからこそ、目の前の幸せに感謝しつつ、存分に浸ればいい。

「ああ、よきかな、よきかな…」

ゴンザの口から、ふと、言葉がこぼれる。

「ん? ゴンザさん何か言った?」

ゴンザの独り言を聞きとめたカオルが振り返って、ゴンザに尋ねる。

「いえ、なんでもございません…」

ゴンザはそう言うと、ふたりの後を追って歩き出した。



fin
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いつものごとく、表現が足りない部分は、みなさまの脳内でご存分に補完しておいてくださいませ。(よろしくですぅ~)

魔戒騎士といえば、夜の闇に生きるのが宿命。
けれども、最近の妄想は立て続けに明るく陽光降り注ぐ下でのお話ばかりです。
そろそろ、ダークな感じのものも… と思いつつ、ついつい、幸せな鋼牙の姿に思いを馳せてしまうんですよねぇ。

そして、今回の見所(?)は、ゴンザさんのジャケットを脱いだベスト姿!
ジェントルなオジサマのベスト姿って、かっこいいですよね!
ゴンザさん、素敵~♡

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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