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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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為すべきこととは(3)

人間の犯罪者相手に、黄金騎士様が2発喰らわせちゃいました。
青年~ 生きてるか~?

さて、鋼牙さん。
襲われていた女を救うことができて、ホッと一安心したと思ったら…
さあ、続きをお楽しみください。




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

大袈裟なくらいの溜め息をついて、ザルバは言う。

『鋼牙、おまえも見ただろう?
 走り去っていったのは、どこかの見知らぬ女だ』

「…あぁ」

小さな子供にでも言い聞かせるような口調のザルバに対して、鋼牙は憮然として答える。
そう、確かに、今足元にのびている青年の腕を振り解(ほど)いて逃げていった女は、鋼牙とは何の面識もない女だった。
一度だけ振り向いた女の顔は恐怖に引きつっていたが、彼女がカオルでないことは容易にわかった。

『だからあの時、俺様は言おうとしたんだ。
 ’あれはカオルじゃない’と、な』

くっ…と鋼牙の眉が悔し気に歪んだ。
女の落とした鞄が、カオルのものと同じ色だったこと。
それに、ザルバがあのときカオルの名を出したことで、鋼牙はすっかり襲われているのはカオルだと思い込んでしまったのだ。
もちろん、その浅はかさを恥じいる気持ちもあったが、何よりも、ザルバにこうして説教されることがなんとも腹立たしい。

「カオルも同じ色の鞄を持っていた…」

足元に落ちている鞄を見ながら、忌々し気に鋼牙は呟いた。

『確かに。
 カオルの鞄の色をおまえさんが覚えているとは少し驚きだが…
 だが、よく思い出して見ろ?
 クロッキー帳やらスケッチブックやらを持ち歩くカオルが、こんなに小さな華奢な鞄を持っているか?』

ザルバに言われて、鋼牙はまじまじと地面に転がっている鞄を見た。

(確かに…)

カオルはいつだってもっと大きめの間口の広く、絵の道具が出し入れしやすいように柔らかい素材の鞄を使っている。
それに比べて、今鋼牙の見下ろしているものはもっとずっと小さく、財布やケータイのようなもののほとんど何も収まる余裕などないくらいだった。

鋼牙は大きな溜め息をついた。
普段の鋼牙なら、もっと思慮深く、もっとスマートに対応できたはずだが、どうやら今夜は黄金騎士ともあろう者が形無(かたな)しだ。

「おまえの言う通りだ、ザルバ。
 どうやら俺の失態のようだな」

そう言うと鋼牙はその場を離れようとした。
が、何を思ったか足を止め、いまだに気を失っている青年の元に戻ってきて腰を下ろした。

『おい、鋼牙! おまえさん、何をする気だ?』

少し慌ててザルバ尋ねた。

「…」

それには答えず、鋼牙は青年のフードから紐をシュルッと抜き出すと、近くの電柱に青年を後ろ手に縛り上げた。

『まったく、たった今、自分の過失を認めたというのに…
 いいかぁ、鋼牙? そんなことは魔戒騎士の為すべきことでは』

「ない、と言うんだろう?」

ひどく落ち着いた声でそう言われたザルバは、

『そ、そうだ。
 解っているのにおまえは何をしている?』

と、若干戸惑いながら問いかけた。
その言葉が終わるのに合わせたように青年をくくりつけることを終えた鋼牙はスッと立ち上がった。
そして、

「ザルバ、行くぞ」

と発すると、あとは後ろも見ずに歩き出した。

(やれやれ、この黄金騎士は何を考えてるんだか…)

と人知れず溜め息をついたザルバの視界の片隅に、猫が暗闇から姿を出してきたのが見えた。

  ニャア~

猫は、去っていく白いコートの後ろ姿をしばらく見送っていたが、その姿が小さくなると、再び食べ残してあったエサにかぶりついた。





翌朝。
朝食前のひとときに、ソファーに座り、新聞を広げていたカオルが

「あっ」

と小さな声を立てた。
すでに食卓についていた鋼牙と、朝食の用意をしていたゴンザは即座にカオルのほうを見る。

「何か気になる記事でもございましたか、カオル様?」

パンの入ったバスケットを手にしたまま、ゴンザがカオルのそばまでやってきた。

「ねぇ、これ見て、ゴンザさん」

そう言いながら、カオルはゴンザのほうに新聞を差し出すと、とある記事のところを指さした。
ゴンザは、パンをローテーブルに置くと、新聞を受け取り、声を出して読みだした。

「えー、なになに… 連続殺人の容疑者逮捕、と、これですな?

 昨夜十時ごろ、仕事からの帰宅途中の女性が、何者かに後ろから羽交い絞めにされ、ナイフを突きつけられ脅された。
 女性は犯人の隙をついて逃げ、近くの住宅に助けを求めて無事だった。
 その住宅の住人からの通報で署員が駆け付けたところ、容疑者らしき男が電柱に縛られ、気を失った状態で発見。
 すぐ近くには、女性の鞄とナイフが落ちており、ナイフには容疑者の指紋と複数の血痕が付着していることが確認されたことから、男を複数の事件の容疑者として捜査を進めている。
 なお、襲われた女性は野良猫にエサをあげているところを襲われ、それを非難するようなことを言われたとのこと…」

記事を読み終えたゴンザは、神妙な顔をカオルに向けた。

「カオル様、これは…」

「そうなの、ゴンザさん!
 時間はちょっと違うけど、昨日、あたしも猫にエサをあげたって、言ったよね?
 だからね、ひょっとしたら、襲われたのはその女性じゃなくてあたしだったかも、って思ったらなんだか怖くなっちゃって…」

そう言うと自分の身体を抱き締め、カオルはブルッと身震いした。

「昨日は、お買い物に出掛けて、帰りが少し遅くなったのでしたね…
 だから、いつも言っているではありませんか。遅くなるようでしたらいつでもお迎えにあがります、と…」

そう言うと、ゴンザは鋼牙のほうを振り向いた。
鋼牙様からも何か言ってやってください、という意味がこもっている、そんな顔つきだった。
それを見て、鋼牙から怒られると思ったのか、カオルは急いで言い足した。

「だって、ゴンザさんはいろいろ忙しいじゃない?
 だから、お迎えに来てもらうのは、なんだか悪いと思って…

 それに、猫にエサをやるのだって、いつもじゃないんだから。
 昨日はたまたまだったのよ。た・ま・た・ま!」

一生懸命弁解するカオルに、鋼牙はやれやれと言いたげだ。

「とにかく…」

おもむろに口を開く鋼牙。

「カオルは今後、気をつけろ。
 ゴンザにあまり心配をかけるな。いいな?」

穏やかな中にも風格漂うその言葉に、

「はい、わかりました…」

と殊勝にうなだれるカオルだった。
そのとき、

『おい、鋼牙。
 カオルに言ってやったらどうなんだ?』

とザルバが口を出してきた。

「いいから、おまえは黙れ、ザルバっ」

鋼牙はザルバを一睨(ひとにら)みしたが、ザルバにはどこ吹く風。

『手柄は自慢すりゃあいいのにな』

それだけ言うと、わかった、わかった、と渋々口を閉じた。





だが、朝食を終え、書斎に入って鋼牙と二人きりになると、我慢できずに鋼牙に尋ねるのだった。

『おまえさん、カオルが猫にエサをやってることを知っていたのか?』

問われた鋼牙は、

「いや…」

とだけ答える。

『ふうん…
 では、昨夜はなぜ、人間の世界の犯罪者を縛り上げるような真似をした?』

なんだか合点のいかないザルバは、さらに疑問を口にした。
鋼牙は少し迷うような顔をしたが、やがて言った。

「魔戒騎士として為すべきことは、心得ている…」

それは、ホラー狩ること。そして、ホラーから人間を守ること。

「だが、何年魔戒騎士をやっていても、所詮、俺は未熟者だということだ。
 昨日、あの時、本当は自分が何を為すべきだったのか…
 正直、今でもわからない…」

けれども、鋼牙は後悔などしてはいなかった。
今の鋼牙には、魔戒騎士としてでもなんでもなく、ひとりの人間として ’守りたい者’ ができたのだ。
その存在に癒され、力を貰い、ホラーに立ち向かう。

為すべきこととは。
鋼牙は、自分を信じ、自分の選んだことを信じるのみ、と静かに思っていた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


う~ん。
この妄想に関しては、selfish の頭の中のカメラワークを見てほしかった。
それをうまく活字にできない自分の拙さにかなりやきもきしました。
伝わるかなぁ~
伝わるといいなぁ~
でも、伝わってないよなぁ~

はい、皆さんの中には薄々感ずいていた方もいらっしゃいましたが、鋼牙の目の前で襲われていた女とカオルは(同じように猫にエサを与えていましたが)別人でした。
そこは、ほれ、絶妙なカメラワークと映像処理とで、同一人物っぽく見せかけて、細部には少しずつ違いを散りばめて…

カオルが襲われてるかも、ということでカッとする鋼牙さんを想像してくださ~い。
ザルバに説教されて、自分もまだまだだと認める(ちょっと)悔し気な鋼牙さんを想像してくださ~い。
そして、カオルも被害者の女と同じように猫にエサをあげていたと知り、(内心)動揺している鋼牙さんや、とにかくカオルが無事でよかったと、(内心)ホッとしている鋼牙さんを…
ぜひぜひ、鋼牙さんのいろんな表情を頭の中で描いてみて楽しんでいただければ、と思います。

拍手[17回]

コメント
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こんばんわ!!!
ありゃ……私も鋼牙と同じ勘違いしてましたね(笑)
ネコにエサを上げてたのがカオルちゃんだとてっきり思っていたので(^ω^;);););)
だけどなんとなくですが、ネコちゃんに何かしらの違和感だけは残りましたけとね。あのニヤリとした何かに取り付かれているかのような表情が。

でも結果的に犯人逮捕に繋がったので市井の警察たちにとっては結果オーライだったでしょうね。
それに何週間かまえに放送された「水槽」の話にも少し似ていたので、いかに鋼牙が悔しがるところや、どうしてここまでやってしまったのか自問自答しているのが目に浮かびました。

最後、本当にそれがカオルちゃんじゃなくって私もホットしました(不謹慎ですが^^;)
ナサリシチ 2016/11/15(Tue)01:17:30 編集
Re:こんばんわ!!!
ナサリシチ様が戸惑うのも無理からぬことで、実際のところギリギリまで、カオルちゃんが襲われてることにしようか別人が襲われていることにしようか迷ってました~
(2話目を書いてるときに決めきれず、3話目に持ち越しちゃったくらいですもん)

それに、猫についても同じように迷ってまして…
今回はホラーは出さずに人間の犯罪者のお話のつもりで書き始めたのですが、途中で猫を出しちゃったために、「この猫がホラーというのもアリかも…」と思ったのも事実。

ま、結果的には、どうしよう、どうしよう、と決め兼ねていた優柔不断さが、まるで伏線かのように見えて、その結果、面白い効果を生んだみたいです。(ふふふ、結果オーライ~♪)

多分ね、鋼牙も「青年を縛り上げたのは、ちょっとやり過ぎだったかな」と少し反省してたのかもしれませんが、あの日、カオルちゃんも襲われた女性と同じ行動をとっていたと知ってしまうと、「いや、あれはあれでよかったんだ」と自分を納得させたんじゃないかな?
うん、黄金騎士だって、勘違いするし、迷う! だって、人間だもの…(by みつ◯)
そんな人間らしい鋼牙の話で、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです!
【2016/11/15 22:46】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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