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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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遅れてきたメリークリスマス(4)

はよ終われ!
そんなふうにも思うのですが、自分の書くスピードの遅さに打ちひしがれるばかりです。
こんなはずじゃなかったんですが…


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 パチ、パチッ

暖炉の中で薪(たきぎ)の爆(は)ぜる音が聞こえる。
暖炉の前に2つ並んで置かれてた肘掛け椅子のひとつに場所を移した鋼牙が、揺らめく炎を見つめていると、

「おまたせ~」

とカオルがデザートを乗せたトレイを手に近づいてきた。
椅子の脇にある小さな丸いテーブルの上に、コーヒーといろいろなスイーツが乗せられた皿などを並べ言わると、カオルは空いている方の椅子に腰を下ろした。

「ねぇ、見てみて!
 すんごいかわいいんだよ、これ!」

そう言って、カオルはテーブルに置いたばかりの皿を鋼牙に見せる。

抹茶のモンブランは、中央のクリームが高く盛られ、その頂上には星型のホワイトチョコレートが飾られていて、クリスマスツリーに見立られている。
その脇に添えられたアイスは、ラズベリーやキウイといったクリスマスカラーのフルーツで彩られていて、イチゴで作られたサンタがにっこり笑ってこちらを見ているのだ。

「ゴンザがおまえのために用意したものだ」

優しい表情の鋼牙がカオルに向かって言う。

「うん… しっかり味わって食べないとね?」

カオルはそう言うと、いただきます、と小さな声で言い、モンブランをフォークで切り分けた。
わくわくしているのはカオルの顔を見れば一目瞭然だ。
それを見てクスッと笑った鋼牙だったが、それに気付きもせずに、カオルはモンブランを口に入れる。もう意識はモンブランにしかない。
モンブランが口の中に収まり、一拍置いて、ようやくモグモグと口を動かすと、ムフフ~ン、と効果音がぴったりな至福の表情になる。

「おいふぃ~♡」

鼻から息が抜け、ふにゃふにゃとはっきりしない言葉で感想を漏らしたカオルは、よく味わってからごくんと飲み込むと、

「ねぇ、これ、ほんとにおいしいよ!
 鋼牙も食べない?」

と、鋼牙に勧め、自分の皿から鋼牙のためにモンブランを少し大きめに切り分けて差し出した。
というのも、鋼牙はいつもデザートを食べないため、デザートはカオルの分しか用意されていなかったからだ。

(このおいしさを、感動を、鋼牙と共有したい!)

そう思ったカオルの申し出に、鋼牙は珍しくも、

「そうだな。では、もらおうか…」

と応じた。
鋼牙は別にモンブランが食べたいわけではなかった。
だが、食べることでカオルは喜ぶと思ったのだ。
ついさっきは、彼女には「何かひとつだけ願いを叶えてやる」と言ったが、実は、今夜の鋼牙は、カオルが望むことはなんでも叶えてやりたいと思っていた。
ただそう言うことに少し気恥ずかしさを感じてしまい、「なんでも」とは言わずに「何かひとつだけ」となってしまったのだ。

(わぁ~ 珍しい!)

カオル心の中ではそう思っていたが、そんなことを口に出して言って鋼牙の気が変わってしまうのも嫌だったので、何も言わなかった。

「はい!」

カオルは、鋼牙のほうにモンブランの乗ったフォークを差し出した。
そうしながら、

(あっ! これって、2回目のあ~ん、じゃない?)

ということに気付いた。
すると、その動揺が伝わったのか、差し出されたフォークの先が揺れる。触れる…
そして、鋼牙の口にあともう少しで届くと言うときになって、モンブランはフォークからこぼれ落ちてしまった!

(あっ!)

咄嗟にカオルの左手が落ちた欠片(かけら)を受け止めた。
左手はもともとフォークの下に添えられていたので、どうやら、鋼牙の服も、カーペットも汚さずに済んだようだ。

「ごめん!」

鋼牙に謝るカオル。
そして、手の上のモンブランをどうしたものかと、カオルは焦る頭で考えた。
そんなオロオロと焦るカオルに対して、鋼牙はとんでもない行動に出た!
落ちたモンブランの乗っているカオルの左手を掴み、自分のほうに引き寄せると、カオルの掌(てのひら)からケーキをパクリと食べたのだ。
カオルの掌に、鋼牙の唇の感触が微かに伝わる。

(えっ?
 えっ!
 ええっ!)

驚いて声も出ないカオルをよそに、掌にまだ残っている抹茶クリームを、鋼牙は少しゆっくりとした仕草で舐めた。
その姿勢のまま、上目遣いにカオルを見る鋼牙の目は、煽情的な熱を帯びている。

(きゃーっ)

カオルの心臓は飛び出そうなくらい、強く早く波打ちだす。
左手を掴んだまま、鋼牙のもう一方の手がカオルを抱き寄せようとする。

「カオル…」

甘く囁かれる名前には、魔法がかかっているような気分がする。
その魔法にかかると、カオルはうっとりとして何も考えられなくなるのだ。
そのままゆっくりと鋼牙の唇がカオルの唇に重なろうとしたとき、鋼牙はハッと我に返った。
そして、カオルの左手を掴み、背に回していた手が唐突に放される。
鋼牙に突き放される格好になり、茫然とするカオル。
どうしたことか、魔法は解けてしまったようだ。

今度は鋼牙が慌てて謝る番だ。

「すまない!」

茫然としていて、まだ事態が理解できないカオルは、

「どうして?」

としか聞けない。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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