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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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闇夜の狼(1)

やっとクリスマスの話が終わったと思ったら、また全然違う方向に妄想が…
舞台は(なんと!)花のお江戸でございます。
おおっと~ チャレンジャーだなぁ~ (;^ω^)


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夜の大橋。
昼間の賑わいが嘘のように、今は人っ子一人、猫の子一匹いやしない。
遠くに夜鷹蕎麦の灯す明かりがうすぼんやりと見えるだけだ。

中央付近が高くなり、丸くせりあがっている大橋を、ゆっくりとした足取りで渡る人影がひとつ。
黒い着流し姿の浪人のようだ。
その浪人の腰にはしゃれこうべの形をした根付けが揺れ、歩くたびに鈍い銀色の光を放っていた。

『おい、感じるぞ。禍々しい気配を…』

ふいにその根付けが口を開いたかと思うと、人の声とはまるきり違うしゃがれた声が聞こえてきた。
浪人は足を止めると、根付けには目もくれずに辺りに注意を払った。

「ホラーか?」

闇に響く浪人の声は低く重く、夜の冷気から来るのとは違う震えを感じさせる。

『さすがに将軍の御膝下(おひざもと)と言われるだけのことはある。
 ここに巣食う陰我はひとつやふたつ… というわけにはいかないだろうな』

ここでのホラー退治は長引きそうだ、と少しうんざりとした声で根付けが言うと、浪人が感情を交えない声で応じた。

「ホラーは斬る… それだけだ」

そして、闇をきっと見据えると、力強い足取りで再び歩き始めた。



春うらら。
どこからか早咲きの梅の香が漂ってくる。
そこに江戸の名物である強い風がびゅうと拭いて芳(かぐわ)しい香りを払いのけたかと思うと、白く渇いた土を巻き上げた。
ここは、本所深川。
小名木川に繋がる小さな水路にかかる「倉橋」という橋のたもとにある一膳めし屋、倉橋屋の店の前。
そこで、店の看板娘であるおカオが水まきをしている。

  ばしゃ

手桶からひしゃくに組んだ水が地面に撒かれて、もうもうとした土埃を沈めていく。
大きくはない店の前に一通り水をまいた後、おカオはふうっと息をついて顔をあげた。
すると、店の前を通りかかった棒手振(ぼてふ)りの庄吉から声がかかる。

「よぉ、おカオちゃん、あとで寄らせてもらうよ!」

常連のような顔をしてそう言うが、店で頼むのはいつも安い茶漬けくらいだ。
だが、おカオはそんなことはちっとも気にせずに、

「あら、庄吉っつぁん、毎度ごひいきに!」

と笑顔を返した。
生来の明るい気性のお陰だろう。おカオは誰からも好かれていた。
その証拠に、庄吉がデヘヘとにやけた顔でその場を離れると、あちこちから次々と声がかかった。

「おカオちゃん、今日もべっぴんだね」

「やだ、熊さん、嘘ばっかり。
 そんなこと言っても何も出やしませんよぉ」

「おカオちゃん、今朝も精がせるねぇ」

「あら、おばさん。お千代ちゃんの熱は下がったの?」

テンポのよいそんなやりとりがしばらく続いていると、店の奥からおカオの父親が顔を出してきた。

「おい、おカオ! おめぇはいつまで喋(しゃべ)っていやがるんだ!」

その声に振り向いたおカオは、父親に向かって手を合わせる。

「ああ、おとっつぁん!
 今すぐ、そっちを手伝うから堪忍して…」

合わせた手の影からこっそり覗いて父親の様子を見るおカオは、何とも言えない愛嬌がある。
だから、父親もそれ以上は叱れない。

「別におまえに料理の手伝いをしろ、となんざぁ言う気もねぇよ。
 そんなことしたら、客がみんな逃げちまうじゃねぇか?
 ただな、能天気におめぇが喋っている間も、黙々と仕込みするこっちの身になりやがれ、とまあ、そう言いてぇだけさ」

ぶつぶつとそう言う父親に、最前のお千代の母親から声がかかる。

「おや、ゴン造さん。
 おカオちゃんの料理の腕は、ちったぁあがったんだじゃないのかい?
 少しは手伝ってもらって、あんたも楽(らく)しちゃどうなんだい?」

すると、ゴン造は思いっきりしかめっ面を作ってブンブンと手を横に振り、

「だめだ、だめだ。こいつはいまだに何をやってもまともに作れた試しがねえんだよ。
 こればっかりはしょうがねぇと、俺ぁ、もう諦めてんのさ。
 だからよ、せめて、どこぞで腕のいい料理人の婿さんでも釣り上げてくれたらいいな、と、今はそれだけがささやかな望み、ってもんよ」

「ちょいと、お父っつぁん!」

焦ったおカオは、ゴン造の袖を引っ張る。

「おやまあ、そうかい。
 おカオちゃん、ゴン造さんのその望み、ちゃんと叶えておやんなさいよ」

そう言ってお千代の母親は通りの向こうに消えていった。

「んもう、お父っつぁんたら、変なこと言わないでよ」

ふくれっ面のおカオに、

「別に変なことでもあるめぇ?
 おめぇもいい年なんだから、行き遅れねぇうちに嫁でも何でもさっさと行きやがれぃ」

と憎まれ口を叩きながら、ゴン造は店の中へと入っていった。

(嫁に行ったら、ほんとは寂しいくせに…)

父親の背中を見送ったおカオは、ふっと笑って小さく溜め息をつくと、ふと青空に目をやった。
青い青い空がどこまでも続いている。

(今日もいい日になりそうね… よしっ)

気合をいれたおカオが、父親を手伝おうと店の中に入っていくのだった。



この時のおカオは、この後、自分の身にあんなことが起こるとは予想もできなかった。
それを知ることになるのはもう少し後のことだった。



fin
to be continued(2へ)
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ちょっと様子見ということで、まずは一発目を書いてみましたが…

だ~め~だ~
難しいよ、時代物は!

何かちょっと書くにもいちいち調べないといけない…
  場所はどの辺にしようか?(下町って具体的にどこなんだろう?)
  浪人さんの持ち物って何?(ザルバを指にするんじゃ目立ち過ぎるよね~)
  棒手振りって飯屋で食べられるだけ稼ぎがあるのかな?
  …etc.

そういうわけで、この続きを書く日が来るのかどうかは今のところわからないです…


追記:書きたい気持ちが優りまして、続きを書くことにしました!(2017.02.12)

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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