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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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闇夜の狼(7)

なんだかんだで7話です。
ようやく着流しさんと町娘が出会ったのですが…
さて、どうなりましょう?

拍手[13回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

  ドクン

おカオの身体の芯に衝撃が走った。
それは黒くて熱くて重たい衝撃。
おカオの上体がぐらりと揺れ、大きく後ろにのけ反る。まるでスローモーションのように、ゆっくり、ゆっくり…

「っ!」

危うく地面に頭を打ちそうになるところを鋼之進の腕がしっかり抱き止める。
間に合ったことに鋼之進は安堵の息をつき、腰の根付けに助言を求める。

「ザルバ!」

『ううむ、こいつは、どうやらやっかいなホラーに当たっちまったようだぜ。
 これはホラーが獲物(えもの)と決めた人間に刻む文様 ’正鵠(せいこく)の印’だ。
 こんなものを刻むホラーにはとんとご無沙汰だったが… 100年? いや、250年はお目にかかってないなぁ』

のんびりと記憶を遡っている魔導具に、鋼之進は少しイラつく。

「何年前のことだろうが、そんなことはどうでもよい。
 この娘はこのままで大事ないのか? どうなのだ?」

鋼之進の腕の中でぐったりしているおカオは顔色も悪く、熱があるのか玉のような汗が引き出している。

『さっき ’やっかいな’ と俺様が言っただろう? この文様は始末が悪いんだ。
 もしもこの文様を刻んだホラーが斬られたとしても、この文様に込められた呪いは続く…
 文様が残された人間の身体からはホラーにしか嗅ぎ取れないなんとも言えない香(かぐわ)しい香りが放たれ、他のホラーを誘うんだ。
 十中八九、この娘はホラーの餌食(えじき)になる』

「…では、どうすればよいのだ?」

鋼之進は厳しい顔でザルバを見る。
ザルバはしばらく静かに鋼之進を見つめ返していたが、やがて、

『このままここに捨て置くか、さもなくば、仏心があるならばいっそ一思いに楽にしてやるのが一番だ。

 この文様の別名は ’道連れの印’ …
 下手に救おうなどと思えば、この娘だけでなくおまえさんもただでは済まなくなるやもしれん』

と言った。
鋼之進はそれを聞くと黙っておカオの顔を見た。

「…」

やがて、小さく息を吐くと立ち上がり、薄暗い森から出て稲荷社の参道を歩き出した。
光の中を歩く鋼之進の足取りには微塵も迷いがなく、後ろを振り向くことも無かった。
鋼之進の腰に揺れているザルバは、なんとなく難しい顔をしていたが何も言わなかった。

最後の赤い小さな鳥居をくぐり、人々の住まう領域まで降りて来たときにようやく足を止めた鋼之進は、腕を揺すって体勢を整えた。
鋼之進の腕の中には相変わらずぐったりとしているおカオの姿が。

鋼之進はぐるりと辺りを睥睨(へいげい)すると、こちらをチラチラ見ながらひそひそ話しているお登喜たちの姿を見つけてそちらへと足を向けた。

「ちと聞きたいことがあるのだが…」

静かに切り出した鋼之進に、お登喜はおっかなびっくりながらも強い口調で噛みついた。

「あ、あんた、おカオちゃんに何したんだいっ?」

面倒ごとに首を突っ込みたいわけではなかったが、満更知らないわけでもないおカオの身が心配だったのだ。

「そこの稲荷社の脇で倒れているのを見つけてな。
 どうしたものかと思いながら、こうして連れて参った。
 この娘の家を知っているなら教えてくれぬか?」

相変わらず冷ややかなくらいに落ち着いた口調で言う鋼之進に、お登喜は

「なんだって! ちょいと誰か!」

と周りを忙しく見渡すと、その辺で遊んでいた少年たちに呼びかけた。

「ああ、源太! あんたひとっ走り福耳の親分のところに行って、おカオちゃんが具合が悪いって伝えて来ておくれ!
 それから、新吉はこのお侍を親分の家まで案内するんだよ、いいかい?」

そして、再び鋼之進を振り返ると、

「悪いけどお侍さん、この子が案内するから、おカオちゃんを連れて行ってやっとくれよ」

とお願いした。

「承知した…」

口数少なくそれだけ答えると、鋼之進はおカオを抱えて、新吉と呼ばれた少年に従い歩き出した。

「おカオちゃんのこと頼んだよ!」

お登喜は鋼之進の背中に呼びかけると、心配そうな顔で見送った。





「おい、おカオ! おめえ、しっかりしろ!」

ぐったりとして正気のない娘に、ゴン造は心配そうに呼びかける。
慌てて敷かれた布団の上に、鋼之進はそっとおカオの身体を降ろした。

「今、医者ぁ呼びに行ってるからな。もう少しで来るから待ってろよ」

おカオにそう言うと、ゴン造は鋼之進のほうに顔を向けた。

「いってえどうしてこんなことに…」

娘を心配する父親の顔と、御用聞きの親分としての顔が半々の微妙な顔つきだ。
鋼之進は用意していた答えを話した。

「とある稲荷社の脇で倒れているこの娘を見つけたのだ」

答える鋼之進をじっと見ているゴン造は少し落ち着いたのか、冷静に詰め寄った。

「それで、おめえさんはそのお稲荷さんに何の用があって行ったんですかい?」

すると、鋼之進は慌てずに答える。

「実は、某(それがし)、江戸に来たのは今日が始めてでな。江戸にツテがあるわけでもない。
 それ故、今宵の宿として、社(やしろ)のお堂でも借りられぬものかと思ったのだ」

「なるほどね…」

ゴン造は腕を組んで肯(うなず)いた。

「そのとき、おカオの他に誰かの姿を見かけては?」

鋼之進に尋ねるゴン造の顔は真剣だ。
だが、鋼之進のほうもゴン造からは目をそらさずに答える。

「いや…
 この娘に気を取られてしまったからかもしれぬが、他の者の気配などは某には感じなかった」

「…」

そのまましばらく鋼之進とゴン造は無言の睨み合っていたが、やがてゴン造の方から視線を外した。

「そうですかい…

 遅くなってすまねえが、おカオの父親として礼を言わせてもらいやす。
 おカオをここまで連れて来てくんなすってありがとうごぜえやした。
 すっかり手を煩(わずら)わせちまって…」

「いや…」

と、そんな会話をしているところに町医者が現れて、おカオの診察が始まった。


to be continued(8へ) ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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