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きんのまなざし ぎんのささやき

あいつには黙っていてほしい(1)

BLACK BLOOD のメイキングとか、Kくんのインタビューとか、オーディオコメンタリーとかを見ると、牙狼(もしくは絶狼)に対するいろんな人の熱い想いが色濃く感じられます。

中でも、涼邑零をずっと演じてきた玲くんの想いには、妄想脳を刺激されるものがありますね!
(あ、今日は奇しくも玲くんの誕生日ですね~)

…というわけで、古い部分を掘り起こすようで申し訳ないのですが、第1期25話「英霊」回のメシア降臨を阻止し、暗黒騎士キバを倒した後を妄想してみました。
よろしければお付き合いくださいませ。


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ケイン、ベル、ローズ。
かつて、東の番犬所の神官であった3人は、今はもういない。
メシア降臨を目論んだ悪戯の過ぎた子番犬たちと闇に堕ちた魔戒騎士バラゴとの野望は、黄金騎士牙狼の称号を継ぐ冴島鋼牙と、どの魔戒騎士の系譜にも属さない銀牙騎士絶狼こと涼邑零のふたりの魔界騎士の手により潰(つい)えたのだった。

主のいなくなってしまった番犬所には、ただちに代理となる神官が遣わされた。
それは、当然といえば当然のことだった。
なにせ、ホラーを生みし人間の欲望や邪心には事欠かないのが常なのだから。

今、鋼牙と零の目の前にいるのがその神官だ。
白髪頭で小柄な体格をした、パッと見、頼りなげな風貌の老人の姿をしていた。
ただし、着ている衣装は至極上等なもののようで、冴えない中身とのあまりものアンバランスさに、

(なんだかなぁ…)

と、虚脱感のようなものを感じた。
涼邑零が東の管轄の新しい神官に初めて会い、最初に抱いた第一印象といえば、まあ、そんなところだった。




涼邑零は、西の管轄の魔界騎士だ。
だが、ある理由により、無断で管轄の境を超えた。
無断でそんなことをするのは、明らかに掟に反することだったが、そのときの零にとっては掟なんぞはどうでもいいもの。
…零は、道寺と静香の仇(かたき)を追っていた。

道寺は、零が父とも慕う魔戒騎士だ。
身よりのない零を引き取り、ヒョロヒョロだった少年を、白銀(しろがね)の鎧が召喚できるほどの魔戒騎士に育て上げてくれたのが道寺だった。
彼とは血こそ繋がっていなかったが、子どものいない道寺が年齢を理由に第一線を退く際、さも当然とばかりに大事な魔導具を零に託した。
元々口数の少ない道寺は、一度たりとも恩着せがましいことも過剰な期待も言うことはなかったが、シルヴァを渡したときに、「銀牙… 頼む」とそう言った。
その一言に、道寺が言葉にしなかった想いが凝縮されており、零はそれを確かに受け取った。
あのときのシルヴァの冷たく重い感触を、零は今でも忘れない…

静香は、零が最も慈しみ、最も守りたいと思った女性だ。
零と同様、静香もまた親を亡くした少女だった。
生来から身体の弱い子だったが、薬の精製にも長(た)けていた道寺は、その知識を惜しげもなくこの少女に教え与えた。
静香もまたそれによく応え、様々な薬の製法に通じ、道寺のよき片腕として成長していった。
道寺にとっては彼女もまた、零とは違う意味で大事な子どもだった。

そんな道寺の深い愛情のもと、兄妹のようにして育ったふたりは、これからもずっと一緒に暮らしていくのが自然だと思っていたし、また、そうなるものだと信じて疑わなかった。

だが…
そんな零にとってはかけがえのない大切なふたりの命が、ある日突然、闇に堕ちた魔戒騎士の手にかかって奪われてしまった。
あの日、あのとき、零の中にあったキラキラと光り輝く希望は、跡形もなく粉々に砕けてしまうのだった。

笑顔も失くした。
だが、涙も無かった。
安らぎも温かさも失った零には、もはや何もなくなってしまった。
あるのは狂おしいほどの怒りと憎しみだけ。
だが、逆の見方をすると、その負のエネルギーがあるからこそ生きていられた、とも言えた。
零から家族を奪ったあの男が憎くて憎くて、復讐することしか見えなくなった零は、魔界騎士としての使命も見失い、西の管轄を飛び出した。

  要らない。
   要らない。
    何も要らない。

  愛しい人から優しく呼ばれた名前すら、俺にはもう必要ない。

’零’ という名前になってから、どのくらい経ったのだろう?
ものすごく前のことのように思えたが、つい昨日のことのようでもあった。




「涼邑零!」

精一杯の威厳を込めて、冴えないおっさ… いや、神官が零に呼びかけた。

「改めて言わなくても判っていることだとは思いますが、おまえはいくつも掟を破りました。
 番犬所の許可なく、勝手に境界を越えたこと。
 それに、私怨を晴らそうと、冴島鋼牙を付け狙ったこと。

 勘違いとは言え、魔界騎士としてあるまじき行為について、申し開きの余地はありません」

高い台座の上にいる神官は、見下ろすようにして言った。

「…はい」

神官の言うことは至極当然のことなので、さすがの零も殊勝な態度でうなずいた。
それを満足げに見ていた神官は、コホンと咳をひとつする。

「とはいえ、此度(こたび)の危機では、冴島鋼牙とともによく働いてくれました。
 おまえがいなければメシア降臨を阻止することは難しかった、と冴島鋼牙からの報告にもありました」

初めて聞く真実に零は驚き、隣に控えている鋼牙を振り返った。
だが、鋼牙は何も表情には出さず、黙って前を見ているだけだった。

「そこで、おまえにひとつ尋ねます」

神官の言葉は続いた。

「冴島鋼牙は、北の管轄に行くことになりました。
 すると、ここ、東の管轄の魔界騎士の数が足りなくなってしまうのです」

話の先が読めず、微妙な顔をしたまま零は神官の話を待った。

「涼邑零。
 東の管轄付きの魔界騎士になる気はありませんか?
 ただし、これまでの悪しき行いを悔い改め、粛々と使命を全うするつもりがないのであれば、この話はなかったこととします。

 どうですか?」

この神官からの申し出は、零にとっては願ってもないことだった。
今後も魔戒騎士として生きていくとしても、今、西の管轄には戻りたくなかった。
あそこには思い出が多過ぎたし、自分の中でそれらを消化することがまだできていなかった。

だが、だからと言って、この都合のいい話に飛びつくのも躊躇(ためら)われた。
なぜなら、自分が鋼牙に対して取った行動を考えれば、おいそれと返事をすることはできないのだ。

「どうしました?
 おまえにとって、悪い話ではないと思いますが…」

神官は少しせっかちなのか、零に返事を促した。
それでも思い惑う様子の零に、横から淡々とした鋼牙の声が聞こえてきた。

「俺はおまえに言ったはずだ。
 おまえの罪は大きい、と」

鋼牙の言葉にぎょっとして、零は鋼牙を見た。
あくまで正面を向いている鋼牙が、目線だけをチラリと零のほうに流していた。

「そして、おまえはその償いとして、メシア降臨を防ぐために俺に手を貸した。
 それでもう…  いいんじゃないのか?」

鋼牙は零の躊躇の理由を察し、そんなふうに言ったのだ。
それは不愛想だが、とても彼らしい気遣いだった。

「鋼牙…」

零は胸を熱くして、それだけを言うのがやっとだった。

きっと唇を引き結び、零は必死に答えを探す。
やがて、強い決意が零の目に力となって表れ、台座の上に立つ神官をぐいっと睨むようにして見上げた。

「今の話… よろしくお願いしますっ」

そう力強く言い切ると、深く頭を下げた。
その様子を満足そうに見た神官は、

「わかりました。

 ですが、これは異例中の異例です。
 それを胸に刻み、これからは心して働いてください」

と厳かな声で言った。

そのときのことだった。
神官は、ふと隣に立つ鋼牙に、意味ありげに視線を移した。
すると、どうしたことだろう。
それに応えて、鋼牙は少し頭を下げて謝意を表し、神官も、うむ、と鷹揚にうなずき返したのだった。
この意味深なやり取りについては、頭を下げ続けていた零が気付くことはなかった。



to be continued(2へ)
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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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