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きんのまなざし ぎんのささやき

いつかの帰り道

長いお話が終わったので、何か軽めのをひとつ…
あ~、でも、これはお叱りがあるかも。




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公園にスケッチに行った帰り道。
残照が景色をセピア色に染める中、家路へと急ぐ人々の流れの一部になって、カオルは通りを渡っていた。
ふと見ると、通りを渡った道の先に、頭一つ飛び出している長身の男が見えた。

(あ、鋼牙だ)

カオルは思わず笑顔になると、人の波を縫うようにして先を急いだ。
どうやら向こうも気づいたらしい。
鋼牙は少し脇に身体をどかせ、後ろから来る人たちをやりすごして待っていた。

「出掛けていたのか?」

鋼牙のそばまで来たカオルに、鋼牙は声を掛けた。
ざわざわとした雑踏の中でもカオルの耳によく聞こえる声は、彼女だけが知る優しく甘い声だ。

「うん。公園にね、ちょっと…」

そう言いながら、カオルは鋼牙を見上げて微笑んだ。
少し恥じらうように上気して笑う顔は、周囲の景色を霞ませてしまうような、鋼牙だけに見せる甘えるような表情だ。

「そうか…」

それだけ言うと、鋼牙はすっと人の波に乗った。
一拍遅れて、カオルもすぐに彼の後を追う。

帰るぞ、という言葉などなくても、なんとなく呼吸でわかるようになってきたのはいつの頃からだろう?
カオルの歩くスピードに合わせて少しゆっくり歩く鋼牙の背中を見ながら、カオルはそう思ってくすっと笑った。
鋼牙の方は、そんなカオルの様子をチラッとうかがい、誰にも気づかれぬよう表情を少し緩ませた。




しばらく歩くと市街地の外れにやってきた。
さすがにここまで来ると、人通りもぐっと少なくなってくる。
ここまでの間、たまに話しかけてくるカオルに相槌を打つだけだった鋼牙が、ふと足を止めて振り返った。

「カオル… 手を出せ」

いきなりそう言うと、握りしめた左手をカオルのほうに向かって突き出した。

(何かをくれるの?)

だが、鋼牙の顔は少し怒ったような表情にも見えた。
左手を向けられているから、必然的にその指に嵌められているザルバと目が合う。

(なんなの?)
(さあな? 俺様にもわからん…)

目線だけでザルバと会話をしたカオルは、少し不安に思いながらも手の平を広げて、おずおずと鋼牙のほうへ伸ばした。
すると、カオルの手の平の真上にあった鋼牙の手が広げられた… が、予想された展開とはならなかった。
鋼牙の手の中からは何も出て来なくて、相変わらずカオルの手の上は空のままだった、

「!?」

どういうことかと思わず鋼牙を見上げると、鋼牙はあさっての方向を向いたままぶっきらぼうに言った。

「俺の手を… やる」

「え?」

戸惑うカオルにはお構いなしに、鋼牙は彼女の手をぎゅっと握りしめた。

(おいおい。 まったく、おまえってヤツは…
 どうして素直に言えないもんかね? 「手をつなごう」って…)

ザルバは心の中で思いながら、くっくっくっと笑いをかみ殺していた。
鋼牙の行動の意図を図り切れないカオルは、鋼牙をじっと見た。
あまりに凝視されて、鋼牙は一層、居心地の悪いような不機嫌そうな顔になる。

「帰るぞ!」

ようやく吐き捨てるようにそう言ったかと思うと、さっさと歩き出した。
カオルも、そんな鋼牙に引きずられるようにして歩き出す。

「うん」

歩きながらうなずいたカオルの表情には、こらえようとしても自然に笑みがこぼれてくるのだった。



東の空のほうから闇がひたひたと迫っていた。
ホラーの跋扈(ばっこ)する夜が、もうじき訪れようとしているのだ。
だが、その闇に紛れるようにして、ほんの少しだけふたりの世界があった。
ぎこちなく、けれどしっかりとつながれた手を通して、嬉しさと気恥ずかしさがふたりの間を行き交っていた。



fin
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ごめんなさい!
これは某ツィートのパクリになります!

かわいい(時にシュールな)保育園児の言動を呟いていらっしゃる某男性保育士さんの呟きを、思いっきし参考にしています。

最近の保育園児は高等テクニックを使うんですね。
「〇〇ちゃん、これあげる~」って言って、好きな子と手を繋いじゃうなんて!

こんなこと、鋼牙が言わないよね、って思いつつ、もし言ったら… と妄想してはのた打ち回っております。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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