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きんのまなざし ぎんのささやき

人の気持ちも知らないで

昨日のうちに妄想は書き上げたのですが、いいタイトルが思いつかずにアップを断念。(-_-)zzz
一晩寝たら思いつくかな、と楽天的に考えていたものの、ま、そんなわけもなかったです。

…というわけで、「人の気持ちも知らないで」
もしよろしければ、お楽しみください。


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じりじりと焼き付けるような日差しの下から屋敷の中に飛び込むようにして入ると、カオルの視界が急に暗転して、軽い眩暈のような感覚に襲われた。
慌てて手近なものにつかまりながら、きゅっと目を閉じた。
そして、ゆっくりと呼吸することに意識を集中させる。
こめかみにドクドクと強く感じられた鼓動が落ち着いた頃合いを見計らって、そっと目を開けると、ようやくいつもの見慣れた室内が目に映る。

  ほっ

安堵したところで、カオルはまずリビングへと向かった。

ドアを開けてみると、薄暗くひんやりとしたリビングには人の姿はなく、カオルはそのままドアを閉めようとした。
が、あるものが目に留まり、ドアノブを握っている手を止めた。
カオルの視線の先にあったのは、リビングの一角に置いてあるコート掛けだ。
そこには、あの白いコートがきちんとハンガーに掛けられてぶら下がっていた。

(鋼牙、帰ってるんだ…)

知らず知らずのうちにカオルの顔に喜色が浮かぶ。

(書斎にいるのかな? それとも剣の稽古?)

そんなことを考えていたが、ふとカオルの脳裏に別の考えがよぎった。

(今だったら… ちょっとだけいい、かな?)

カオルの目が悪戯っ子のようにキラキラと輝きだす。
キョロキョロと辺りを確認してからリビングに入ると、そおっとドアを閉めた。
そして、そろりそろりとコートに近づく。

(はぁ…)

感嘆の溜め息をついて、カオルはコートを見つめる。
彼女の大きな目がより一層大きく見開かれ、もはや他の何物も気にならないほど目の前のものに没頭していた。
これまで、このコートを着ている鋼牙は沢山見ているが、コート自体をまじまじと見る機会はあまりなかったので、人気(ひとけ)のない今がいいチャンスだった。

カオルは、牙狼の紋章をかたどった胸飾りの精巧な細工に目を見張った。
そして、細かく施された刺繍にも目を奪われる。
魔戒騎士の最高位、牙狼の称号を継ぐ鋼牙の身体を守る法衣は、遠目にはただの白いコートに見えたが、よくよく見ると装飾的にもかなり凝った作りになっているのだ。
それに、コート掛けは長身の鋼牙よりは幾分か低かったので、鋼牙が身に着けているときには目の届かないところも、今ならちょっと爪先立ってみれば大体のところは見ることができた。

カオルは手を触れぬまま、存分に隈(くま)なく観察した。
ひょっとしたら、細工や刺繍のひとつひとつには何か意味があるのかもしれなかったが、そんなことはわからないカオルの目には単純に ’美しいもの’ としてそこに存在していた。

魔界に関するものにはみだりに触らないよう言われていたので、見るだけにしようと思っていたのだが、カオルはとうとう我慢できずに、そろそろと手を伸ばし始めた。

(きっと大丈夫だよ。
 だって、コートを着ている鋼牙に触れたことは何度かあるもん)

カオルの頭の中に、鋼牙に抱きしめられた記憶がよみがえって少しだけ赤くなった。

(あの時だって、なんともなかったんだから、少しくらい触っても大丈夫よ… うん!)

カオルは自分で自分の都合のよいように言い聞かせ、意を決してぐいっと手を伸ばした。

まずは袖に触れる。
ごわごわとした手触り… でも、それもなんだか嫌じゃない。
鋼牙の身体を護ってるんだと思うと、不思議に安心感を覚えてくるのだ。
そして、左胸に下がっているお守りを指でなぞる。
象牙だか石だかよくわからない飾りはきっと冷たい感触なんだろうと想像していたが、思ったよりは冷たく感じなかった。

こうしてコートに触れているうちに、カオルは気付いた。
身体の内側から昂揚感が沸き、耳たぶが熱くなっているのを感じているのだ。
どうしてだろうと考えてみると、コートに触れているだけなのに、まるで鋼牙自身に触れているような、そんな気がしているからかと思われた。
とても不思議なことではあったが、その考えはあながち間違ってはいなくて、少しは当たっているような気がしている。

そんなことを思いながら顔を上気させたカオルが、ふとピカピカと光り輝く胸のエンブレムに目を留めた。そして、それに吸い寄せられるように指を伸ばす。
意識はしていなかったが、喉の渇きを覚えて、ごくりと唾を飲んでいた。
あとちょっとで届きそうだという、そのとき…

「カオル! 何をしているっ!」

緊迫した鋼牙の声が背後から聞こえた。
ビクリとしたカオルはうっと眉をしかめて、手を引っ込めた。
左手で右手を握りしめるようにして恐る恐る振り返ってみると、そこには怖い顔をした鋼牙が立っていた。

「ご、ごめんなさい。あたし…」

足を踏み鳴らすようにして近づいてくる鋼牙に、カオルは身をすくませるようにして縮こまった。
カオルのそばまで来ると睨むようにカオルを見ていた鋼牙だったが、一瞬、コートのほうに目を移した。
そのわずかな隙をついて、カオルは駆け出していた。
バタバタという足音が階段を駆け上がり、バタンとドアの閉まる音で足音は聞こえなくなった。
恐らく、自分の部屋に駆け込んでいったのだろう。

鋼牙は大きく溜め息をつくと、コートに近づいて、変わったこがころがないか確認を始めた。
どこにも異常はなさそうだと思った鋼牙だったが、何気なくエンブレムに触れたときにチリリと弱い静電気のような感触を感じた。
そう、それはまるでたった今、放電でもしたような…

即座に、鋼牙の顔に緊張が走る。

(まさか…)

鋼牙の感じた不安を肯定するようにザルバが言った。

『どうやらカオルのやつ、触れちまったかもしれないな…
 急げ、鋼牙!』

その言葉にまるで蹴飛ばされたかのように、鋼牙はカオルのもとへと急いだ。
カオルの部屋の前まで来た鋼牙は、ノックもせずに飛び込もうとした。
ところが、

  ガチャ… ガチャ、ガチャ

「!」

どうやらドアは中から鍵が掛けられているようで開けることができない。

「カオル! ここを開けろ!」

鋼牙は切羽詰まった様子で部屋の中に声を掛ける。

「…やだ」

思いのほか近くでカオルの声が聞こえた。
恐らく、ドアのすぐ内側にでもいるのだろう。

「いいから開けるんだ!」

今度は少し懇願するような口調で、鋼牙は繰り返した。

「だって… 怒ってるんでしょ?」

拗ねたような声がドアの向こう側から聞こえる。
それを聞いて、鋼牙は少しうんざりしたような表情を浮かべたが、深呼吸をひとつしてから穏やかな口調で言った。

「カオル。大丈夫だから、ここを開けるんだ」

「…」

しばらく無言の時間があった後で、カチリと音がしてドアが開けられた。
ばつの悪そうなカオルがドアの影から姿を現わした。

「鋼牙、あの… あたし…」

鋼牙と目を合わせようとせずに謝罪の言葉でも探している彼女をよそに、鋼牙の目は彼女の全身を素早く観察していた。

「!」

何かに気付いた鋼牙は、カオルの右腕を掴んで引き寄せた。

「なっ… 痛っ!」

カオルの顔が苦痛に歪んで、鋼牙を見た。

「見ろ…」

鋼牙は表情を険しくさせ、目でカオルの右手を示した。

「えっ?」

カオルは鋼牙の視線に吊られるようにしてそれを見て驚いた。

「やだっ、どうして?」

人差し指と中指がまるで火傷か何かしたように赤く腫れていた。
目で見て初めて、カオルはジンジンとした痛みを感じた。

「来い!」

鋼牙はそれだけ言うと、自室へと向かった。
鋼牙の部屋には隣接してバスルームがあり、そこにある水栓を開けて水を出した。
ザアザアと流れる水にカオルの右手を突っ込ませると、

「そのまま冷やしていろ」

と言って、部屋を出ていった。
流水に預けた手はひんやりと気持ちよく、痛みをかなり緩和させた。
しばらくそうしていると、鋼牙が薬を手に戻って来た。
フジツボのようなものがぎっしりとくっついたような、見た目にはなんともグロテスクな容器の蓋を取ると、外見とは裏腹に中にはきれいなターコイズブルーの塗り薬が詰まっていた。
鋼牙はそれを指ですくい取り、カオルの赤くなった指に注意深く塗っていった。

『どうやら触れたわけじゃないようだ。そこまでひどくはないからな。
 まっ、不幸中の幸いってやつだな』

ザルバがカオルの傷の状態について、そう言った。
もしも、ソウルメタル製の装飾品に触れていたなら、カオルの皮膚は醜く焼けただれていただろう。
持つ者の心に反応するソウルメタルは、それを操れる魔戒騎士がいなければ牙を剥くというわけだ。
鋼牙は黙々と治療をしていたが、そんな彼の様子を窺いながらカオルはおずおずと謝罪した。

「あの、ごめんなさい。
 いつもはなんともないから、ちょっと触っても大丈夫かなって思ったの。
 でも、こんなことになるなんて… ほんとにごめんなさい」

治療を終えた鋼牙は、カオルを見た。
その目には険しさはなく、ほんの少しだが優しさをたたえていた。

「あのコートは普通のコートじゃない。
 俺が身に着けているときには力をセーブすることもできるが、そうでないときは人間に害をなす。

 とにかく、今回はこの程度で済んでよかった…」

そう言うと、カオルの頭をポンと撫でた。
そうした鋼牙の言動の端々(はしばし)から、彼が心から安堵しているのが伝わってきて、カオルは不謹慎にもなんだか嬉しくなってきた。

(へへっ、鋼牙に心配してもらうのって、なんかいいな…)

そう思ってニヤニヤしてしまいそうになる自分を、カオルは必死に抑えようとした。
だが、それに目ざとく気付いたザルバが

『なんだ、カオル? なにニヤニヤしてんだ?』

と突っ込むと、途端に鋼牙の表情は怖くなる。

「おい、ちゃんとわかってるんだろうな!」

だけど、カオルはちっとも鋼牙を怖いと思わなかった。
ニッコリ笑って、こう言ったのだ。

「はーい、ちゃんとわかってまーす」

そして、小声でこう付け足した。

「でも、またこんなことがあってもちょっといいかなぁ、なんて…」

それを聞いた鋼牙は、眉間の皺が3割増しに…

「もう知らんっ!」

そう言って背を向けた鋼牙に、さすがのカオルも慌てる。

「ご、ごめんなさい! 別に悪気があって言ったことじゃなくって…」

「勝手にしろ!」

「いや、あの… だから、ね?」

「おまえの好きにすればいい!」

「あーん、もう、鋼牙ったらぁ」



(やれやれ、カオルのやつ。
 これで懲りればいいんだが…)

ザルバはそっと溜息をついたのでした。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


えーい、一生やってろ~ ♡
イチャついてるようにしか見えんじゃないか~ (≧▽≦)

さてさて、いかがでしたでしょうか?
この妄想の時期は特に限定していませんが、1期の頃の若くて青い鋼牙さんで妄想されましたか?
それとも2期の渋い鋼牙さんで?
どちらにしても不器用ながらカオルちゃんを心配している鋼牙さんを頭ン中で思い描いていただければ、と思います。 (^_-)-☆

さて、かなり以前から思っていたことなのですが。
鋼牙さんのコートの内側は、魔界へと通じていますよね?
また、胸と背中にある牙狼の紋章のエンブレムは、ソウルメタルなんじゃないかなぁ?と個人的には思ってました。
つ・ま・り、あの白いコートって、生身の人間にとってはかな~り危険なものなんじゃないかしら?

けれど、カオルちゃんを抱きしめても大丈夫なのは何故なんだろう?
きっと、鋼牙さんが身に着けている分には彼のお力で制御できてるのかな? …ってわけで、その線で勝手に妄想をしてみました!
(そうじゃなきゃ、ザルバにチュ~なんてできんでしょう? ねぇ~?)

でもぉ~
そんなことも、最後の喧嘩(?)でどうでもよくなっちゃった!
やっぱね、鋼牙さんとカオルちゃんは ’いい大人’ になっても喧嘩してほしいなぁ♡
それが結論です。はい!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



夕月 様[07/15]
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ナサリシチ 様[06/08]
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