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きんのまなざし ぎんのささやき

Amphibia(3)

タイトルにつけた「Amphibia(アンフィビア)」とは、「両性類」のことです。
「かえる」っていうタイトルでもよかったのですが… フフフ、それじゃあんまりでしょ?
なので、ちょっとだけカッコつけさせていただきました♡


さて。
2つの世界に属することが幸せなのか不幸なのか…
う~ん… どうなんでしょうね?
単細胞な selfish には想像もつかん!
(…といいつつ、妄想する)




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ビールを手にして戻ってくると、零は陶子の隣りに腰を下ろした。
重みで沈んだマットに引っ張られるように、陶子の身体は零のほうへと傾き、陶子の肩が零の腕に触れた。

膝の上に両肘をつき、前かがみに座った零は、ビール缶のプルタブを起こして蓋を開けると、一口軽く飲んでから陶子の顔を覗き込むようにした。
陶子の横顔は、もう泣き出しそうでもなんでもなく普段の顔に戻っていたが、じっと床の1点を見つめていた。

(こんな話、するんじゃなかった… かな?)

ちょっと反省した零は、気を取り直して無邪気そうな笑顔をつくった。

「あんまり深刻に受け止めないでね、陶子さん?
 別に、俺、誰かに仲間外れにされてるわけでも、いじめられてるわけでもないんだからね?

 たまぁ~に… ほんと、すっげぇ~たまに、そう思うことがあったよ、ってだけだから…

 ま、結局それは、すべて俺の未熟さからきているわけだから、俺が強くなれば問題ないってこと!
 陶子さんが気に病むようなことなんてちっとも無いんだから、もう忘れてよ。ね?」

にこにこと笑う零に、陶子はフッと優しい笑顔を返すが、その笑みはすぐに引っ込み、陶子は話し始めた。

「零… あのね…
 私、考えてたの。
 あなたの話の内容とはちょっとズレてるんだけど…」

少し申し訳なさそうな瞳が真っ直ぐ零を見ている。

「私もね、『あぁ、この人は私のことがあんまり好きじゃないんだな』と感じることがあるの。
 それとね、『この場の雰囲気になんか馴染めないなぁ』って思うことなんかもある。

 でも、それはフツウのことだと思ってた。

 だって、みんながみんな、同じ価値観を持ってるはずないんだもん。
 生まれた場所も育った場所も、これまでに経験したこともみんなそれぞれ違うんだから、それが当たり前だって思ってた。

 それとね。
 困っている人が目の前にいて、自分にはその人のためになんにもできないときがあったとして…
 やりきれない思いとか不甲斐ない気持ちとかを感じるのは私も零と同じなんだけど、心のどこかで『しょうがないじゃん。だって、私にはなんの力もないから』って諦めてたりするんだよね。
 そう思うことでバランスを保っているみたいな…」

そこまで言うと、陶子は缶に残っていた最後の一口を飲み乾した。
ぬるくなって不味くなっていたビールに顔をしかめ、

「ごめん、一口ちょうだい?」

と零の手にあるビールに手を伸ばした。
そして、冷たいビールをゴクリと飲むと、

「ありがと…」

と笑って零に返した。

「えっとね、何が言いたいかっていうと…」

話していたことを思い出すような仕草をして、そうそう、と、ひとりで納得する。

「つまりね、私だったら『フツウのこと』とか『仕方がないこと』とかで済ませてしまうことなのに、零は『魔戒騎士として未熟だから』『魔戒騎士の血筋でないから』っていうふうに考えちゃうんだなぁ、って思ったの。

 『魔戒騎士であること』や『魔戒騎士の家に生まれなかったこと』で、あなたが悪いことなんてちっともないのに… って思ってたの。

 零だって人間なんだもん。
 そういう『自分の力だけではどうにもできないこと』を諦めてしまってもいいんじゃないかなぁ?」

優しい目をして陶子は零を見る。

「…」

少し泣きそうな表情で、零も彼女を見つめ返す。

「わかっているよ。
 私が何を考えようと、どんなことを思おうと、つらい状況になったときに零自身がどう考えるかは零次第なんだ、ってことは。

 でもね、もし、そんなときに、あなたが自分を責めるようなことを考えてしまうんだったら…

 …私はこう思っているよ。
 『それはあなたの弱さのせいじゃない』って…」

陶子の瞳が力強い光を放った。

「自分の弱さを理由にそこから逃げようとしない『強さ』なんだと思う。

 ふふふ、あなたを褒めるようなこと、ほんとはあんまり言いたくないんだけど…」

少しニヤッと笑って、もったいぶりながら、陶子は言った。

「零、あなたは強い人だわ。人間を守る力を持つ強い魔戒騎士…
 そして、とっても優しい人。

 私みたいな『ただの弱い人間』から見たら、悔しいけど、カッコいいわよ?」

陶子は、ほんとに悔しそうに顔を歪めたが、すぐにくすくす笑い出した。



 ふわり…

笑っている陶子に、零は覆いかぶさるようにして抱きしめた。
そのまま何も言わない零に、陶子は戸惑いの表情を浮かべたが、黙って零の背中に手を回して優しく撫でた。

「陶子さん…」

「ん? なぁに?」

しんみりしてしまいそうだったが、陶子は意識して、なんでもないように明るい調子で聞き返した。

「…陶子さんは、弱くなんかないよ」

陶子の耳元で、零の声が呟いた。

「ふふふ、そうかしら?

 じゃあ、このお姉さんに、なんだって話してくれていいからね?
 零の弱いとこやカッコ悪いとこ、いっぱい聞いてあげる!」

冗談めかした調子で、陶子が言う。

「陶子さん、それ、調子に乗り過ぎ!
 そうやって、すぐに年上ぶるの、やめてくれる?
 実際、数ヶ月しか違わないんだし…」

すかさず、零は陶子に釘を差したが、少し甘えるような声で言っていたので効果のほどは知れている。

「だって、学年は1コ違うんだもん、立派な先輩でしょ?
 そこはきっちり敬ってもらわないと…」

「はいはい」

「素直でよろしい!
 あ、でも、返事は1回ね」

「…はい」

不承不承、零が返事をする。
ひとしきり笑った陶子が、やがて小さな声で言った。

「魔戒騎士がどうとか、人間がどうとか、考えなくていいんじゃないかな?
 何をどう考えようと、それはあなた… 『涼邑零』の考えだよ。
 零が『いい』と思うこと、『こうありたい』と思うことをやればいい、って、私、思うから…」

「…」

陶子の声が聞こえなかったのか、零は何も言わないままだったが、陶子を抱きしめる彼の腕に静かに力が籠った。

(ありがと… 陶子さん…)



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

最後までお付き合い、ありがとうございました。

この妄想の発端はといいますと…

10日ほど前に、ドイツ人の父、日本人の母を持つ、かわいい女性ピアニストがTVで紹介されているのを見ました。
聡明なお母様は、彼女がドイツ人の血と日本人の血の両方が流れていることから、いずれアイデンティティで悩むだろうことを心配していたわけですが、予感は的中。
彼女は、子供の時に「日本のアニメ映画を見た感動を、ドイツ人である父にいくら説明しても理解してもらえなかった」ことに戸惑いを覚えました。
また、「ピアニストとして日本でCDを作ることになったとき、自分の意見をダイレクトに言えない日本独特の雰囲気」にかなり強いストレスを感じたそうです。

もちろん、両親が違う国というだけで、育つ環境も複雑になるのは事実でしょうが、『彼女は彼女』であって、ドイツが、とか、日本が、とかを考え過ぎなければ、もっと自由になれるのに… と見ていて思った次第です。

もちろん、当人からしてみれば、
「当事者でもないヤツが適当なこと言いやがって!」
と思うんでしょうが。(うん、それもうなずける…)



「あなたはあなたのままでいていいんだよ」

誰かにそう言ってもらえたら、誰だって嬉しいですよね?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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