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きんのまなざし ぎんのささやき

ちいさきもの(2)

今日はお天気もよく、近所の家の縁側では猫がのんびりお昼寝してました。
それを横目にバタバタと外出を繰り返している自分を見るにつけ、人間と猫はどちらが幸せなんだろう? と答えのない問題をぼんやりと考えてみたり…

妄想できるだけ幸せと感じなきゃ! ね?


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その夜、夕食のテーブルに雷牙の姿はなかった。
「食べたくない」と言って自分の部屋から出ようとはしなかったのだ。
カオルもゴンザも雷牙をなだめたりすかしたりといろいろやってみたのだが、彼の気持ちを曲げることはできず、鋼牙の「好きにさせておけ」という言葉が駄目押しとなり、何年振りかの大人だけの食卓となった。
雷牙のいない食卓はシーンとしていてなんとも味気ないものになったが、そんなことは少しも意に介していないのか、鋼牙は何も話さず、カオルも無理に沈黙を破ることはしなかった。
無表情に黙々と食事を進める鋼牙をちらりと盗み見ながら、カオルは気付かれないように小さな溜め息をつき、それを見たゴンザも表情を曇らせて目を伏せるしかなかった。

夕食を終えると、鋼牙はリビングのソファに座って時を重ねて琥珀色に変色した書物に視線を落としながら ’その時’ がくるのを待った。
今宵はホラー狩りに出掛けるのだ。
これから闘いの場に出向くというのに、妙な緊張も高揚もない。
ただ淡々と時間が流れていた。

普通の家庭でいえば、夕食後の一家団欒の時間帯だ。
この屋敷も、それまでの執事との静かな生活に、カオルが、そして雷牙が加わり、いつもなら賑やかで温かい時間が訪れているはずだった。
だが、今日は、雷牙が部屋に籠ったきりで、それを心配したカオルも様子を見に行っていてリビングに姿はない。
まるで、ひとりで孤独に闘い続けていた昔のような静かな静かな時間だった。

ふと、目を閉じていたザルバが、ぱちりと目を開けた。
それとほぼ同時に鋼牙は本をパタンと閉じた。
どうやら、その時間がやってきたようだ。
書物で調べ上げた攻略法によって、今宵こそ、あのずる賢いホラーに引導を渡さなければならない。

「ゴンザ、行ってくる」

白いコートを着込んだ鋼牙は、ゴンザの見送りを受けて屋敷を出ていった。
主(あるじ)の出ていったドアがパタンと音を立てて閉まると、ゴンザは深々と下げていた頭を起こした。
ゴンザとしても、いろいろ思うことはあるものの、今はただ、主の無事な帰りだけを願うだけだ。
しばらく玄関ドアを見つめていたゴンザだったが、キッチンでは夕食の後片付けの続きと明日の朝食の仕込みが待ってる。

「さて…」

と呟いて気持ちを切り替えると、キッチンへと足を向けた。
すると、そのとき、トレイを手にしたカオルが階段を降りてくるのが目に留まった。

「鋼牙… 出掛けたの?」

階段の途中で足を止めたカオルが尋ねる。

「はい。
 お帰りを待たずにお休みください、とのことでした」

「…そう」

カオルは少し沈んだ表情を見せた。
ゴンザは努めて明るい顔をつくった。

「雷牙様はお召し上がりになられましたか?」

「ええ。最初はごねてたけど…
 やっぱり、お腹が空いたら我慢できなくなったみたいで、きれいにペロリ! …ほら」

カオルは下まで降りてくると、トレイの上に並んでいる空っぽになった食器をゴンザに見せた。

「ほ~、それはようございました。
 今日は少し遅くなりましたが、温かいお風呂に入ってぐっすり眠れば、雷牙様も少しは落ち着かれることでしょう」

「そうだといいんだけど…」

寂しげな笑みを浮かべてカオルが答えると、ゴンザは、

「大丈夫ですよ」

と慰めの言葉をかけた。
何の確証もないが、この有能な執事にそう言われるだけで、カオルの気持ちも少し落ち着く。
鋼牙が全幅の信頼を寄せるこの執事は、カオルにとっても誰よりも頼りになる心強い存在なのだ。

「ねえ、ゴンザさん。子犬のことなんだけど…
 やっぱり、鋼牙は飼うのを許してはくれないのかしら」

「それは…」

尋ねられたゴンザも思わず言葉を濁した。
ゴンザにとっては、かわいそうな子犬を飼ってあげたい雷牙の気持ちも、飼うのは駄目だと言い張る鋼牙の想いも、それを見守るカオルの憂いもわかるだけに、いい加減な返事などできないのだ。

「カオル様、鋼牙様には鋼牙様のお考えがあってのことなんでしょう。
 何をすることが雷牙様にとっていいことなのか、そしてその子犬にとっていいことなのか…
 きっと何か道はあるはずです」

「ええ…
 そうね。ちょっとでもよい方向にいくように、あたしももう少し考えてみるわ」

笑顔を浮かべたカオルがそう答えると、

「はい。
 わたくしも出来る限りのことはさせていただきます」

とゴンザも笑顔で応じた。
そして、ゴンザはカオルからトレイを受け取ると、ふたりは仲良く肩を並べてキッチンへと向かうのであった。



数時間後。
日付が変わってすぐの頃、鋼牙が屋敷に戻ってきた。
その様子には、どこかホッとしたような感じが見受けられた。
どうやら無事にホラーを倒すことができたのだろうと察し、ゴンザもカオルも安堵した。
リビングに向かった鋼牙が、いつものようにゴンザに白いコートを預け、誰にともなく尋ねた。

「雷牙は?」

聞かれたカオルとゴンザはなんとなく顔を見合わせた。
ゴンザが軽くうなずいて回答をそれとなくカオルに託した。
カオルは笑顔を作り、

「もう寝ちゃってるわ」

と答えた。

「そうか…」

鋼牙はカオルにそう返事をしてから、今度は白いコートをハンガーに掛けているゴンザに向かって、

「今日はもういい。休んでくれ」

と言った。
そして、その足で鋼牙は2階の子供部屋へと赴(おもむ)いた。
鋼牙の後を追って、カオルもそっとついていく。
子供部屋の前まで来ると、鋼牙はそっとドアノブを回して部屋に入る。
大きな音を立てないように注意しながら雷牙の枕元に立つと、ベッドサイドに置かれた小さな電気スタンドが、温かみのある明かりを雷牙の寝顔に落としている。
あどけない雷牙の寝顔だったが、目元や頬に涙の痕が残っていた。

「…」

鋼牙は黙って、小さな傷がたくさんあるゴツゴツした手で雷牙の髪をそっと撫でた。
カオルも鋼牙のかたわらに来て、優しい表情で夫と息子を見る。
やがて、カオルが思い切って

「ねぇ、鋼牙…」

と声をかけた。

「子犬のこと… どうしても飼っちゃいけない?」

カオルは真っ直ぐに鋼牙を見つめている。
鋼牙はカオルと視線を合わせると表情を少し曇らせたが、ポツリと答えた。

「…無理なんだ」

「どうして?」

「うちで飼うと… そいつは長くは生きられない」

「え?」

驚くカオルに対して、鋼牙は息子の寝顔を見ながら淡々と話し出した。



to be continued(3へ)
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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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