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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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おまえのせい(1)

私はとても鋼牙が好きです。
もちろん、カオルも好きです。
ゴンザも、零も、邪美も、翼も、…(キリがない)

だから、今宵も妄想に走るわけです。
不毛なのかもしれませんが、やめられません。
だって、楽しいから… (;^ω^)


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午後のお茶の時間のことだった。

カオルは、マリアージュフレールの
フリュイ・ルージュの香りに包まれていた。
このフランスの紅茶ブランドの紅茶は、味わい深く香り豊かなフレーバーを持っている。
その香りがカオルの心を少しは和ませてくれるのではないかと考えて、ゴンザが昨日入手してきたのだった。
いつもカオルが鋼牙とともにお茶の時間に楽しむのは、もっとずっとシンプルな味わいのものだ。
英国王室御用達のフォートナム・アンド・メイソンのダージリンあたりをストレートで飲むのが鋼牙の好みというのがその理由だったが、あいにくその鋼牙は2週間ほど前から屋敷を留守にしていない。

両親を早くに失くしてひとりで生きてきたカオルは、鋼牙のいない寂しさには慣れっこだ。
いや、そんなふうに見せることに、とても長(た)けていたと言った方が正しいだろうか。
だが、さすがにゴンザの目を欺(あざむ)くことはできるわけもない。
それでも、最初のうちは、ゴンザも素知らぬ振りを決め込んでいたのは、ゴンザの気遣いが逆にカオルの気を遣わせることがないようにだ。
ところが、いつものように鋼牙からは何の便りもなく、1週間過ぎ、10日過ぎ… と月日が過ぎていくと、ひとりでいるようなときに時折すごく寂しげな表情をカオルが見せるようになった。

(何か変わったことでもしてさしあげて、カオル様の気分が変わればいいのですが…)

ということで、今日のようにお茶を変えてみたわけだが、どうやらゴンザの試みは成功したようだ。
カオルはとてもリラックスした
(しかも期待のこもった)顔で、カップを口に運んだ。
鋼牙のいないときはゴンザも一緒にお茶をするのがこの家での習慣となっていて、ゴンザもカオルと並んでソファーに座って、紅茶の香りを楽しんでいた。
なんということはない会話をしながら、午後の楽しいひとときを過ごす。

「ゴンザさん、とってもおいしかったわ」

そう言ってカップをソーサーに戻したカオルに、ゴンザも

「それはようございました。
 たまにはこういう変わったフレーバーのお茶というのもいいのものですな」

と笑顔で答えていた。
と、何かに気付いたようなゴンザが、

「ちょっと失礼いたしますよ」

というと慌ててリビングを出ていった。
その場に残されたカオルは、テーブルの上に置かれた茶葉の入っている黒いカンを取り上げて、そこに書かれている文字を目で追ったりしてみた。
やがて、廊下を進む足音が聞こえてきて、リビングのドアが開いた。
ゴンザが戻ってきたのだと思い、何気なく視線をあげたカオルの目は大きく見開かれた。

「鋼牙!」

カオルの視線の先には、一分の隙もなく白いコートを着こなした鋼牙が立っていた。
低級ホラーなら睨まれただけで震え上がらせるほどの険しさを見せる目も、今は穏やかで温かさを見せていた。

「今、戻った」

カオルは、その低く甘い声に身震いしそうなほどの幸福感を覚えた。
ソファから立ち上がったカオルは

「うん、おかえり」

と笑顔を見せた。
その笑顔は、そうしようとして浮かんできたものではない。
愛する人が怪我ひとつなく無事に帰ってきてくれた喜びが、自然とこぼれ落ちたものだった。
いつだって変わらずに自分を待ち続けてくれる人の笑顔に、鋼牙も胸が熱くなる。

そして、そんなふたりの姿を見て、ゴンザもまた安堵感にも似た喜びを感じるのだ。

『カオル~
 ひさしぶりだな、元気だったか?』

三者三様に感慨深いものを感じているところに、とぼけたようなザルバの声が入ってきた。
鋼牙とゴンザはなんとなく苦笑めいた顔をしたが、カオルはすぐにニコッと笑って

「ザルバ!
 おかえりなさい。

 あたしは元気よ。
 ザルバも元気そうね?」

と鋼牙が持ち上げた左手の拳に向かって言った。

『そうでもないぜ。
 俺様はもうクタクタだ。

 なあ、鋼牙ぁ。
 早く俺様を休ませてくれないかぁ~?』

芝居臭いくらいに疲れた様子でザルバは鋼牙に願った。

「そうだな、今回の指令は久しぶりに長くかかったしな。
 おまえもよく働いてくれた」

ザルバに向かってそう言うと、鋼牙はカオルとゴンザに向かって言った。

「俺も夕食の支度が整うまで、少し休ませてもらう」

「かしこまりました。
 鋼牙様がお戻りになられたのですから、今夜のお夕食は張り切らせていただきます。
 少しお時間を遅めにしてご用意させていただいてよろしいですかな?」

「ああ、構わない。
 …カオルもそれでいいか?」

「ええ、あたしは大丈夫よ」

「それでは少し買い足したいものがありますので、これからすぐに買い物に出掛けます」

「じゃあ、あたしはお茶の後片付けをするわ」

カオルはそう言うとテーブルの上のティーポットやカップなどをトレイに並べだした。
すると、ゴンザは慌てて

「それはあとでわたくしが…」

と手を出そうとしたが、カオルは笑顔で手を振り、

「いいの、いいの。
 その代わり、ご馳走のほう期待してるから!」

とゴンザに言った。

「さようでございますか?
 …それでは申し訳ありませんが、お願いいたします」

困惑気味にゴンザが答えたとき、痺れを切らしたザルバが叫んだ。

『お~い、早く休ませろよ、鋼牙!』

「…わかっている」

鋼牙はやれやれというようにザルバに言うと、

「では、休ませてもらうぞ…」

とふたりに声をかけた。

「はい。ごゆっくりと…」

「ザルバ、鋼牙、おやすみなさい」

それまで静かに進んでいた屋敷の時間が、鋼牙の帰りで一気に加速したようだったが、鋼牙がリビングを出ていくと、再び時の流れが落ち着きを取り戻したように緩やかになった。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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