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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(6)

え! え!
なんでレイを呼んだんだったっけ?

そんな問い掛けを「1週間前の自分」にしたくてたまらないんですが、こればっかりはどうしようもないので、「今の自分」が一生懸命考えます… う~ん、う~ん


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程なくしてコーガの前に姿を見せたレイが、挨拶もなしに問いかけます。

「カオルンがいなくなったというのは本当か?」

急いできたのだろう、あのレイの息が若干あがっていました。

「ああ、本当だ」

対するコーガも、朝早くに呼びつけたことへの謝罪も何もなしにレイに答えました。
互いにそれを許す間柄だ、ということです。
そして、コーガにとって、この男ほど頼りになるやつはいませんでした。

「なぜそんなことに?
 あいつの行先に心当たりはないのか?」

いつもは涼やかな微笑を余裕たっぷりに浮かべているレイが、そのきれいな眉をしかめています。

「それなんだが…」

コーガが口を開きかけた丁度そのとき、ドアが開き、よろよろとゴーザンが室内に入ってきました。
ゼイゼイとした粗い息を静めようと、膝に手をついて大きく揺らして懸命に呼吸をしています。
そのために、なかなか言葉が出てきません。

「はあ、はあ、… レイ様… はあ、はあ、… 速すぎますぞ… はあ、はあ」

それだけ言うと、ようやく上体を起こして額に光る汗をぬぐいました。
ゴーザンの登場で場の雰囲気が少しだけ和み、レイはフッと表情を柔らかくしました。

「ごめん、ごめん。
 でも、カオルンがいなくなるなんて一大事のときに、悠長に構えちゃいられないだろ?」

この頃にはもうすっかり呼吸も落ち着いたレイが答えると、そうでした、とゴーザンも険しい顔をしてふたりを見ました。

「今もコーガに聞いていたんだ。
 カオルンのいなくなった理由と行先に心当たりがないのか、と…」

そう言ったレイが、答えを促すようにコーガを振り返りました。
レイとゴーザンの視線を一身に受けたコーガは、表情を険しくします。

「カオルンは… 確かに最近のあいつはおかしかった。
 急に、その… 避けたり、そうかと思えば甘えてきたり…」

コーガの感じていた’おかしなこと’が、ひどくプライベートなことなために、コーガの返事もどこか歯切れがよくありません。

「昨夜もホラー狩りのために出かけたのだが、早く帰ってこいと無茶を言ったりして…
 いつもなら、そんなこと言わないんだが」

「ホラーだって?」

「ああ、こいつが気配を感じた」

そう言うと、コーガは左手をレイに向け、その中指に嵌められた魔導具がカチカチと動き出しました。

『そうなんだ、レイ。
 確かに昨日、俺様は邪悪な気配を感じた。
 だが、あと一歩のところで逃げられちまった…』

「なんだって!
 それじゃあ、カオルンはホラーのうろつく中、飛び出していったってことなのか?」

『ああ、そうだ。
 だから、正直なところ、こいつも少々焦っている…』

チラリと動いたバルザの視線を追うと、苦虫を噛みつぶしたようなコーガの顔がありました。

「んで、カオルンの居場所に心当たりは?」

と聞いたレイだったが、頭の回転が早いため、すぐに、

「…ないんだな?
 あったら、こんなところでグズグズしてやいない、か…」

と腕を組んで難しい顔をしました。

「…」




なんとも重苦しい空気の中で、ゴーザンがそろそろと口を挟んできました。

「あの… コーガ様…」

「ん?」

と、コーガとレイがゴーザンに注目します。

「これはカオルン様に口止めされていたのですが…」

と言ったきり、まだ迷う風情のゴーザンに

「なんだ?
 何か知っているなら言ってみろ」

とコーガが急かしました。

「そうだよ、ゴーザン。
 なんでもいい、思い当たることがあるのか?」

レイのほうはあくまでもソフトに、優しく促しました。
ゴーザンはそれでも少しの間、悩んでいましたが、やがて心を決めたのか、まっすぐにふたりを見つめて口を開きました。

「このところ、カオルン様は悩んでおられました」

「悩んで?」

「はい。
 その… コーガ様との間にお子ができないことを、でございます」

「子が?」

「はい」

きっぱりと言い切ったゴーザンの顔が悲し気に沈み、

「ちょうど1カ月前ほどです。
 おふたりはとても仲がいいのに、お子が生まれないことをあれこれ言うのを直接お聞きになったことがあるのです。
 その頃からどうしたら子が宿せるのか、カオルン様なりにいろいろお調べになっていたようでした…」

そう言われてコーガにも思い当たることがありました。
あれもこれも、このひと月ほどの間のことです。

「そのようなこと…」

他人にどうこう言われる筋はない!
そう言おうとして、コーガはハッとして口を閉ざしました。

否。
コーガがここサエジーマ国の王で、その子が未来の国王となるのであれば、人々の関心が集まることはやむを得ないことでした。
そのことに思い至ったとき、コーガは唇を噛んで言葉を飲み込むことしかできなくなりました。

(昼間の王としての務めと、夜の務め。
 その忙しさにかまけて、あいつの悩みに気づかなかったとは…)

苦し気に黙り込むコーガの心内(こころうち)がわかるのありましょう。
レイもゴーザンも痛まし気に表情を曇らせています。
が、だからと言っていつまでもグズグズしていても始まりません。

「とにかく、今はカオルンの身の安全を確保することを最優先に考えよう!」

レイの言葉にコーガもゴーザンもハッとして、目を見合わせてうなずきました。
飄々としていながら、時にコーガ以上に冷静であったり、逆に大胆になったりするレイは本当に頼れる存在でした。

「で、カオルンの行先に本当に思い当たるふしはないの?」

重ねてレイが確認してきます。
その言葉に考え込む男達でしたが、そう時を置かずにゴーザンが言いました。

「カオルン様のお耳にまで入っているかどうかはわかりませんが…
 最近、子どもに恵まれない女たちが最後の頼みの綱としているところがあると噂で聞きました」

「なんだって?」

「なんでも、西の方から流れてきた老婆だというのですが、ハーリーとかハーティーとかいう名前だったかと。
 その老婆を訪ね、老婆のお告げの通りにすると、程なくして懐妊するのだと、もっぱらの評判なのだそうです」

「その婆さんのことをカオルンが知ってたら… コーガ!」

希望を見出(みいだ)したレイが明るい顔で振り返ると、そこには予想に反して険しい顔をしたコーガがいました。
そんなコーガを怪訝そうに見つめるレイをスルーして、バルザがコーガに厳しい声をかけます。

『おい、コーガ!』

「ああ、まず間違いないだろう…」

その張り詰めた雰囲気にレイが説明を求めます。

「なんだ?
 何か問題でもあるのか?」

背後でゴーザンもレイに賛同して、うんうんとうなずいています。
すると、コーガに代わりバルザが口を開きました。

『そいつは多分ハーリーティー。
 俺たちが昨日取り逃がしたやつだ!』


to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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