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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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もしもの話(5)

先週はUpできず、すいませんでした!

今週はお盆休みに突入ですね。
皆様、いろいろお忙しくて覗きに来れないかもしれませんが、通常運転に戻った頃合いにでも楽しんでいってくれたらな、と思います。

さて、今回は、ちょいと画像を探してきて入れてみましたよ!
フリーで使える画像を提供している「ぱくたそ」からお借りしてきました。
画像があることで、より皆様の妄想の手助けになればいいな、と思って…
どうですかね?


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ホラーの姿を求めて一晩中駆けずり回ったコーガ王が城に戻ったのは、朝日が山の端から顔を出そうかという頃になってからでした。

「おかえりなさいませ」

いつもと変わらずにコーガを迎え入れたゴーザンに、コーガは疲れた顔で

「ん…」

と短い返事を返し、

「2時間ほど休む」

とだけ言って、頭を下げるゴーザンの前を通り過ぎました。



この夜、ホラー狩りの成果はありませんでした。
どこまでも狡猾なホラーは、あとわずかで手が届くというぎりぎりのところで、何度も巧みに姿をくらましてしまい、心身ともに重くのしかかる疲労感だけを携えて、コーガは寝室へと続くドアに手を掛けました。
一瞬、出掛ける前の尋常ではなかったカオルンの様子を思い出しましたが、その件に思いを巡らせ何らかの答えを出すのは、今のコーガには難しいものでした。そのくらい、疲れ切ってたのです。

身体ごとぶつけるようにドアを押し開けると、まだ朝の光が届ききらない薄暗い部屋が見渡せました。
部屋の中央には広いベッドがあり、どうしたわけか、そこにはベッドの端に腰掛けているカオルンの影が見えました。

驚くコーガが声を発するよりも早く、王の帰還に気づいたカオルンがぱっと立ち上がり、

「おかえりなさい、コーガ。
 よかった、無事で…」

と安堵の色を滲ませて言いました。

「すまない、遅くなった」

そう力なく返事をするコーガに、すぐにカオルンから

「疲れたでしょ? 少し休んだらどう?」

と労(いた)わりの声を掛けられ、

(出掛ける前のあれは何でもなかったのだな…)

とほっとしました。
そして、安心した途端、猛烈に襲う睡魔に屈し、

「おまえも一緒に…」

と言いながら、カオルンに覆いかぶさるようにベッドに倒れ込むと、あっという間に深い眠りに落ちていきました。


「お、重たい…」

コーガの腕に抑えつけられるように下敷きになったカオルンは、息がつけるくらいに、なんとかその腕を少しずらしてから、眠るコーガの顔を覗き見ました。
無防備なまでに深く眠るコーガに、フッと笑みが漏れますが、やがて、その顔は悲しそうに歪みます。

「コーガ…」

小さく漏れた呟きは王の耳には届きません。
コーガの額にかかる前髪を、そっと漉(す)きながら、カオルンはいつまでもその寝顔を見つめていました。




王が目覚めたのは、およそその2時間後。
うつぶせになり、ふかふかの枕を抱きしめるような格好で目を開いたコーガは、まだ眠そうにゆっくりと周囲に視線を配りました。
広いベッドにはカオルンの姿はなく、

(ああ、もう起きたのか…)

そのくらいにしか思っていませんでした。


だが、事件はすでに起こっていたのです。
その朝、王妃カオルンの姿が城から消えました。




「どういうことだっ」

イライラしたコーガが、ゴーザンに厳しい声で尋ねました。

「コーガ様。
 カオルン様は、どうやらご自分の意志で城を出られたようです。
 まずは、これを…」

そうやってゴーザンから手渡されたものを奪い取るように掴むと、コーガはそれに目を走らせました。
それは、カオルンがみずから認(したた)めた置き手紙でした。


  コーガへ

 この手紙をあなたが読んでいる頃、城は大騒ぎになっているでしょうね。
 ごめんなさい。

 供(とも)を連れずにひとりで城外に出るだなんて、一国の王妃に許されることではないとわかってはいるけれど…

 でも、どうしてもやってみたいことがあるの。
 それは誰かに頼んで代わりにしてもらう、ってわけにはいかないことだから、あたし、行きます!

 黙って出ていくことを許してください。
 ううん、許されなくても当然だと思っています。
 でも。
 これは多分、最後のチャンスかもしれないから。


愛してます。
カオルン


読み終わったコーガは、目一杯、不機嫌な顔になりました。
そんなコーガに、ゴーザンは報告を続けます。

「今朝早く、南の城門の門番に王妃から軽食の差し入れがあったそうです。
 門番はその… 全力で断ったらしいのですが、王妃じきじきの差し入れだったこともあり最終的には断りきれず、それを一口くちにした途端、あまりのマズさ… ゴホン、ユニークな味わいだったために意識が昏倒してしまい、そのすきに城門を突破したようです。

 また、厩から馬が一頭いなくなっていることも確認できています」

「…」

「どういたしますか?
 すぐに追いかけになったほうが…」

渋い顔をして何も言わない王に、ゴーザンはそう持ち掛けますが、コーガは遮るように言いました。

「ゴーザン、レイを呼べ」

「はい? レイ様ですか?」

「そうだ。すぐにここに呼んで来い!」

コーガの厳しい声が飛び、ゴーザンは、はい! と直立不動の姿勢になってから、すぐにバタバタと部屋を出ていった。

to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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