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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(8)

のらりくらりと気ままに妄想して(いや、これが通常運転ですが)、なんと8話目です。
おお! こいつは’末広がりで縁起がいい!

…な~んて喜んでばかりもいられません。

迫りくるカオルンへの脅威!
どうなる! どうする? コーガァァァァァ




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陽の光が一切届かない地下。
そこは、採石場の跡のようで、四角く切り取られた広い空間は、天井も壁も床も白っぽい岩肌で覆われていました。
その無機質な広間を、怪し気に揺らめく何本もの蝋燭の炎が幻想的に照らし出していて、まるで地下神殿のような荘厳さです。

 くすくすくす

ふいに、若い男の笑い声が響いてきました。
そして、ざわざわとさざめくような話し声が幾重にも重なって聞こえてきたかと思うと、先程まで無人であったその場所に、いつの間にか幾人もの男たちが現れたではありませんか!
男たちはそれぞれ自由に寛いでいるようでした。

さらさらとまっすぐな黒髪を物憂げにかき分ける指。
白いシャツの前を大きく寛がせてしなやかな筋肉を垣間見える胸元。
ゆったりと組み替えられる長い足。
柔らかそうにうねる、やや色素の薄い前髪の下から意味深に流される揺れるような視線。
こっくりとした深い紅色の液体の入ったグラスを傾け、同じ色に濡れる薄い唇と、大きくゆっくりと上下する喉仏。

どの男も驚くほどの美形で、仕草のひとつひとつがひどく退廃的で魅惑的だったため、この場所が何か特別な場所であることは一目瞭然でした。

するとそのとき、男たちの中で一番若く華奢な少年が立ち上がり、そこにあったフルーツ皿の中からボルドー色の葡萄の房を手に取ると、半端ない色気をプンプンさせている男たちの間を通り抜けて、中央にある黒光りする玉座のような椅子に近づいていきました。
その玉座の周りには、ここにいる男たちの中でも特にセクシーさだだ漏れの男たちがいて、しどけない恰好で侍(はべ)っています。

玉座のそばまで来た少年は悪びれもなく、そこに座る人物の膝に座ると、にっこりと笑って、その人物に持ってきた葡萄の房を差し出しました。
差し出された人物は、少年ねと視線を移すと、嫣然と笑いかけます。
それは、滑らかな真っ白な肌に、黒曜石のような瞳の、男たちに負けないほどに怪しげな美しさを持つ、男たちとはそう年の変わらないように見える女でした。

女は、黒く長い爪の先で葡萄の一粒を器用に摘まむと、その形よい真っ赤な唇を開いて、真珠のような白い歯を当てました。
小さく音を立てて弾けた果実がジュルっと音を立てて口の中へと消えていきます。
ですが、すすりきれずに溢れた真っ赤な果汁が口の端からツウッとこぼれてしまいました。
それを見た少年はふっと笑うと、真っ赤な舌を出して女の顎やら口やらをペロペロと舐めだしたのです。
やがて、すっかりきれいに舐めとると、女は少年の頬にそっと手を添えて、

「ありがとう…」

と甘い声で礼を言いました。
それを嬉しそうに聞いた少年は、女のふくよかな胸に顔をうずめて甘ると、女は愛おしそうに少年の髪を撫でます。
やがて、すっと視線を上にあげると、その場にいる男たちに向けて口を開きました。

「息子たちよ、よくお聞き!
 もうじきごちそうがやってくるよ!」

それを聞いた男たちは喝さいをあげます。
それを満足そうに見ていた女がすっと手をあげると、男たちは母の言葉を待って静かになりました。

「今度の獲物はこの国の王妃だよ!
 その場ですぐに喰っちまおうか?
 それとも、餓鬼が大きくなるまで待つことにするかい?」

男たちから、またひときわ大きな声があがります。

「あっはっはっは、楽しみだねぇ~

 さあさ、王妃を孕(はら)ませるのは誰がいい?
 おまえかい? それともおまえ?

 この際、みんなで楽しむってのもいいだろうねぇ?」

男たちは昂奮を隠し切れず、見目麗しい外見から、真の姿であるホラーの禍々しい姿がチラチラと見え出しました。
そうした子供たちの姿を満足そうに見ながら、女は

「王妃はどこまで耐えられるかねぇ?
 わたしの可愛い子たちは、どの子も手練れだから… くっくっくっ」

と呟き、ほくそ笑みました。
その顔はぞっとするほど醜悪に歪んでいました。





  おいで… おいで…

うすい靄が掛かったような頭の中に、直に響いてくる声に従って、カオルンは月毛の馬に揺られていました。
やがて、森の奥深くまで来たカオルンは、生い茂る蔦(つた)に隠されるようになっている岩の裂け目の前で馬を止めると、しばらくの間、光のない目でその裂け目をじっと見ていましたが、ずるりと落ちるように馬から降りて、そのまま躊躇なく地獄の入り口のような裂け目へと身体を滑り込ませて消えていきました。

それから程なくして、それまで大人しかった馬がぶるぶると首を横に揺り動かし始めました。
カオルン同様、ホラーに操られていた馬の意識が徐々に戻ってきたのでした。
しばらくその場で落ち着かない様子で足踏みなどしていた馬は、耳をブルルと振るわせると、何かの気配を感じたのか、元来た道を戻っていきました。





『コーガ!』

緊迫したバルザの声に、コーガが瞬時に反応しました。

「なんだ!」

『たった今、ホラーの気配が消えた!』

「なんだって!」

一瞬、言葉をなくしたコーガでしたが、すぐに、

「カオルンは? あいつの気配はどうなんだ!」

と、一縷の期待を込めて、彼女の行方を尋ねました。

『それもない…
 ホラーの張った結界の中にいるか、あるいは…』

重い溜め息とともにバルザが返します。

「…」

あまりのことに言葉を失くすコーガが、思わず馬の足を止めました。
突然のことに、後続のレイも慌てて手綱を引きます。

「どうした、コーガ!?」

驚いたレイに、バルザが事情を手短に説明すると、

「そんな…」

とレイも戸惑いを隠せません。
気持ちが焦る中で、これからどうするか、どうすべきかを懸命に考えようとしていた矢先、一頭の馬がこちらに向かってくるのが見えました。

「コーガ、あれは!」

レイの言葉に、目を凝らしてその馬を見ていたコーガが、大きくうなずいて、

「あれは… カオルンが乗っていった馬だ!」

と確信を込めて言いました。

しばらくの後(のち)、コーガがその馬の手綱を取ると、首を優しく叩いて落ち着かせました。
ところが、月毛のその馬は首を大きく動かして、じわりじわりと後ずさりをします。
じっと馬を観察してみますが、ホラーに操られているわけではないようです。
そこへ、バルザが口を開きました。

『コーガ、こいつはどうやら、こっちへ来いと言っているようだ…』

「バルザ、おまえ、馬の言うことがわかるのか!?」

レイが驚いたように尋ねると、

『ハッ… まあな!』

とバルザはドヤ顔で答えます。

「すげぇな、おまえ… っと、感心している場合じゃねぇや。
 コーガ、行くぜ! こうしている間にもカオルンが…」

「ああ」

月毛の馬に跨(またが)ったコーガは、レイに一瞥をくれると、すぐさま、ハッと息を吐いて馬を走らせました。
それを見送ったレイは、乗り手のいなくなったゴーテを連れて、ギガを走らせ、コーガの後に続きました。

コーガたちがあの岩の裂け目に着いたときには、夕方のとはいえ、森の中はだいぶん暗くなっていました。


to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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