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きんのまなざし ぎんのささやき

君ヲ想フ(8)

最初はギャグを描こうと思ったのです。
カオルちゃんが子どもの鋼牙と楽しく遊び、時々、鋼牙のことをいじめる
ような…

それが、いつの間にかこんなことになっちゃいました。


でも、まぁ、いいですよね?

「面白い」って言ってくれる人がいて、
「先が楽しみ」って言ってくれる人がいて、
今日も勝手気ままに妄想する selfish がいま~す!



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

昼食を食べ終わると、鋼牙は剣の練習がしたいと言いだした。

とはいえ、牙狼剣を振るえるわけもなく、ゴンザは、子ども用の鉄の剣を
どこからか探してきた。
大人の剣よりは短く、華奢なつくりではあるが、それでも鉄の剣を
振り回すには多少の慣れが必要だった。

鋼牙の動きには、カオルの眼にもはっきりとわかるくらい無駄が多く、
重い剣に振り回されて何度かバランスを崩したりもした。

ゴンザは心配して、途中何度も止めてみたが、鋼牙は強情にそれを
突っぱね、フラフラになりながらも稽古を続けた。

肌寒い時期だというのに大量の汗をかくまで頑張った鋼牙が、ようやく
剣を下ろしたとき、ゴンザはすかさず鋼牙に言った。

「お風邪を引いてはいけませんから、すぐにお風呂に入ってください
 ませ!」

嫌とは言わせぬゴンザの迫力に、さすがに鋼牙も素直に従い、剣を
ゴンザに渡すと風呂に直行した。


風呂から上がると鋼牙は疲れが出たのか、ひどく眠そうな様子を
見せたので、ゴンザが気遣った。

「少し横になってはいかがですか?」

それには、鋼牙は必死にかぶりを振った。
だが、鋼牙が必死に眠気と闘っているのは一目瞭然だった。

(夢を見るかも… って寝るのを嫌がっているのかも…)

そんなふうに考えたカオルは、鋼牙に申し出てみた。

「ねえ…
 眠るまで一緒にいてあげようか?」

「…いいの?」

鋼牙がカオルを真っ直ぐに見つめる。

「いいよ」

「眠ってからもいてくれる?」

不安そうに尋ねる鋼牙に、カオルは胸を張って明るく言った。

「もっちろん!」

カオルの返事を聞いて鋼牙は嬉しそうな表情を見せたが、すぐに
不安そうな顔で、今度はゴンザのほうを見た。
ゴンザも安心させるように大きくうなずいた。
鋼牙は、よかった、とばかりに安堵の息をついた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ふたりは鋼牙の部屋に行った。
鋼牙はベッドへ潜りこみ、カオルはベッド脇の椅子に腰かけた。

「ずっといてあげるから、安心して眠っていいわよ」

カオルが優しい微笑みで鋼牙に約束した。
それを聞いて、鋼牙は安心したのか、すぐに目を閉じた。
だが、しばらくすると、鋼牙が目を開けた。

「カオル…
 俺の身体がなぜ大人なのか… ザルバは俺にこう言ったんだ。

 『お前はホラーの術にかかって、大人の身体になっちまったんだ。
  ゴンザが年をとったように見えるのも術のせいだ』

 って…」

「…?!」

ザルバがなぜそんな風に鋼牙に教えたのか?
いや、そもそも。その話をなぜ今、鋼牙がするのか?
どう答えたものか決めかねたカオルは、黙っているしかできなかった。

「でも…
 それって、ウソだよね?」

「えっ…」

思わず、驚きの声が漏れた。

「ホントは、逆なんでしょ?
 術にかかっておかしいのは、子どもの俺のほうなんじゃないの?」

「…そんなこと…」

ない、と言ってあげたかったが、カオルの表情は笑顔を作ることができず、
言葉は飲み込まれたままだった。
カオルの態度を見て、鋼牙は自分の考えが正しいと悟ったようだった。

「だって、俺の知らないことばかりなんだもん…
 この屋敷も、年をとったゴンザも、それにカオルも…
 俺が、ホントは大人なんだ、って考えた方が、全部合う気がする…


 それでね、ザルバは、『すぐに術は解ける』って言ったんだ。
 それはきっと、ホントのことだろ?

 もうすぐ、俺… この身体から消えてなくなるんだろ?」

悲しげな瞳で鋼牙がカオルを見る。

(何か言わなきゃ…)

 カオルはそう思ったが、今、口を開けば泣いてしまいそうだった。

「なんか言ってよ…」

どんな言葉でもいい、鋼牙は、カオルの言葉が欲しかった。
鋼牙の切ない願いに、カオルは堪(たま)らず、鋼牙から視線をそらした。
握りしめた手に一層強く力を込めることしかできなかった。

鋼牙は辛抱強く待ったが、カオルが何も話せそうにないのを見て、ふっと
視線を外した。
そして、無理やり笑顔を作ると、別の質問をした。

「カオルは、大人のほうの俺とは恋人どうしなの?」

「なっ…」

いきなり飛躍した質問に驚き、カオルは慌てて鋼牙を見る。
顔がどんどん赤らむのが解り、さらに慌ててしまう。
そんなカオルに、鋼牙は大人びた視線を投げる。

「俺、カオルのこと好きだよ」

「…?!」

「カオルは、バカみたいにいつでも笑っててくれてたから…」

「バ、バカで悪かったわねっ!」

カオルは思わず、鋼牙に食ってかかった。

「ほら、そういうとこ…
 カオルは、ちゃんと俺にぶつかってきてくれる。

 俺… カオルとおんなじだよ。
 本気でぶつかってくれるヤツ… そういうのに弱いんだ…」

鋼牙は寂しく笑った。
そして、ひどく眠そうに何度もゆっくり瞬きをする。

「俺、今、とっても眠い…

 なんでかな?
 寝ちゃったら、もうカオルと会えない気がするんだ…」

「鋼牙…?」

目に涙を浮かべたカオルは、鋼牙にすがりついた。

「ね? カオルも俺のこと好き?」

「好きだよ! とっても好き!」

優しい表情で眠りに引き込まれようとしている鋼牙に、カオルは偽りでは
ない気持ちを必死に訴えた。

「大人の俺とどっちが好き?」

「そんな…」

答えに戸惑うカオルを見つめ、鋼牙はゆるゆると手を伸ばした。

「カオル、ごめんね…

 泣かせてごめん…」

いやいやをするようにかぶりを振るカオル。
鋼牙の指が、涙に濡れるカオルの頬に触れる。
だが、次の瞬間。
糸の切れた操り人形のように、鋼牙の指が動きを止め、ゆるゆると力なく
落ちていった。
鋼牙の瞼が静かに閉じられようとする。

「鋼牙… ねぇ…

 目を開けて?

 鋼牙ぁ…」

カオルは振り絞るように声を掛ける。
鋼牙が、ふっと目を開けた。

「…カオル…

 笑った顔… 見せ…て…よ」

優しい瞳がカオルを捉える。
カオルは、今できる最高の笑顔を鋼牙に贈った。
鋼牙に見せたい笑顔を…

鋼牙の顔にも微かに笑顔が浮かぶ。

「ありが…と… カオ… ル」

鋼牙は礼を言って、そして目を閉じた。



…カオルは泣いた。

彼と過ごしたのは、24時間にも満たないほんの短い時間だった。
だけど、かけがえのない時間を共有した、大事な大事な人だった。

カオルは、薄暗い部屋で、ひとり静かに泣いた。
二度と会えない ’鋼牙’ という少年のことを想って…



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


終わりましたぁ~
お付き合いいただけた方、ありがとうございました~

ギャグが書けそうもないと、わりと早い段階で挫折しましたので、
どう締めくくろうかな~ と手探りで進めていましたが…
こういう最後でいかがでしょう?


今回、原作のスキマではなく、わりと自由にシチュエーションを設定して
妄想いたしました。

一応、北の屋敷にカオルが住んでいると想定しての妄想だったので、
MAKAISENKIでなく、白夜の後くらいの時期になるかと思います。
妄想の中でも、ザルバが連絡したのは ’元老院’ ではなく、 ’番犬所’ に
なっています。
お気づきでしたか?

ゴンザさんの心情なども盛り込めると厚みが増すなぁと思いつつ、
人間が薄っぺらい selfish には無理でした、ごめんなさい。
もし、みなさんが、もう一度この妄想を読み返すようなことがあれば、
ゴンザさんはもちろん、少年鋼牙やザルバなんかの心情もお好きなように
妄想していただけると楽しいかなぁと思います。

拍手[49回]

コメント
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胸がキュ~ンの連続
あ~、終わっちゃいましたか…。
子供だからこその台詞や仕草に、何だか胸がキュ~ンの連続でした。

この後、大人に戻った鋼牙との会話も気になったりして…。
(カオルには、やっぱりソッチの方が良いでしょうかね?)

次回の "妄想" にも期待してまッす!
CHIGAYA URL 2013/01/29(Tue)10:50:20 編集
Re:胸がキュ~ンの連続
寡黙な鋼牙に 「絶対言わないような台詞」 をいろいろ言わせちゃったので、CHIGAYA様は引いちゃったかな~ と、実は思ってました。
なのに、「胸がキュ~ン」なんて言われたら、調子にノっちゃいます~~~

selfish は、「鋼牙には不器用であってほしいなぁ~」 みたいな願いがあるのですが、小賢しいくらいの少年鋼牙も、大人になってからのギャップがあって面白いなぁ、などと自己満足してます。

「君ヲ想フ」はひとまず終了ですが、大人に戻ってからの鋼牙…
絶対、面白そうですよね?
それはそれで別の妄想として書きたいな~ なんて思ってますよ。
(あっ、面白く書けるかどうかは不明ですが)

書けたら、また、ぜひ遊びに来てくださいね!
【2013/01/29 12:39】
無題
こんばんは、君ヲ想う、有り難うございました。ザルバ、子どもだと思って鋼牙を甘くみてましたね、さすが鋼牙、周りをよく観察していますね、カオルともっと子どもの鋼牙と話をしてもらいたかったな、でも早くもとの鋼牙にもどってほしいやうな、複雑、
かなまま 2013/01/29(Tue)21:49:21 編集
Re:無題
selfish は大人鋼牙には、どちらかというと「鈍感」でいてほしいのですよぉ。
もうちょっとカオルちゃんの気持ちを考えてあげろよ~ ってこちらが思うくらいの鋼牙が好みです~
でも、少年鋼牙は、少し大人びたくらいが好みなんですよねぇ
ははは… 矛盾していますね。
でも、少年時代を演じた流星くんが、そういう雰囲気を持っていませんでしたか?

  「少年鋼牙もなかなかいいんじゃない?」
と思っていただけたところで、次は、
  「いやいや、大人鋼牙もやっぱり素敵だ!」
と思わせないといけませんねぇ~
がんばります!

かなまま様、平日なのにコメントいただき、ありがとうございました!
それだけ、かなまま様がこの妄想を「よかった」と思っていただけのかなぁと、嬉しくなります!
【2013/01/29 22:56】
お願い事です
私のブログに Selfish 様のブログをリンクさせて頂ければなぁと思っているのですが、いかがでしょうか?
許可を頂ければ、ソッコーでリンク致しまッす!!

さて 「 鋼牙には不器用であってほしい 」 ですが、全くもって同感です!
それプラス 「 世間知らず 」 でもあって欲しいです! ( 笑 )
世間知らずゆえに、零くんやザルバにニヤニヤ笑われる、そんな鋼牙であって欲しいですね。( …歪んでますかねぇ:笑 )

また来まぁ~す!
CHIGAYA URL 2013/02/05(Tue)12:58:15 編集
Re:お願い事です
リンクの件ですが、こんなサイトでいいですか?
よろしいのでしたら、どうぞ、どうぞ!
それでは、うちのサイトにもCHIGAYA様のサイトへのリンクを張らせていただきますね?

「世間知らず」 ですかぁ~  なるほど、なるほど。
どこまで知っていて、どこからを知らないのか… の 「さじ加減」 が難しそう。
意外なことを知っていて、「えっ、そこ?」というところを知らない、ってのがイイ感じかな?
また、いつでも、おヒマなときにいらしてくださ~い!
【2013/02/05 19:56】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



tomy 様[07/27]
麗羽 様[08/23]
夕月 様[12/22]
夕月 様[07/15]
夕月 様[07/14]
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