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きんのまなざし ぎんのささやき

さざなみ(2)

記憶がない! …って、いったいどんな感じなのでしょう?
selfish はお酒で記憶がなくなった… という経験はないので、
どうもピンと来ないのですが。
(あっ、お酒に強いってわけじゃなくて、飲めないんですけどね)


どうやら子ども鋼牙のときの記憶は、大人鋼牙にはない模様…
さぁ、どうなる?





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鋼牙の記憶がない間の出来事を、ゴンザはすばやく頭の中で整理した。
そして、穏やかな調子で語り出した。

「鋼牙様がお帰りになったのは昨晩のことでした…」

そうして、できるだけ事実だけを時系列に沿って、簡潔に話していった。



ゴンザの話を聞きながら、鋼牙は父の死んだあの夜を思い出していた。

あの日、愛弟子であったバラゴを闇から救うために、鋼牙を残して
屋敷を出た大河。
その後を追って、鋼牙は夜の森を走った。
そこから先は、フラッシュバックのようにしか思い出せなかった。

月も見えない夜の森。
その夜の闇より、なお暗い木々の影。
その闇の中に、光のように浮かぶ白いコート。

父の対峙する黒い影は、圧倒的な力で父を追い詰めていた。

高く宙を舞い上がった牙狼剣。
父の窮地に初めて遭遇し、後先を考えずに走り出す。

(この剣さえ使えれば…)

幼い鋼牙は、投げ出された牙狼剣の柄を握り、満身の力を込めて持ち
上げようとする。
だが、鋼牙にはソウルメタルが扱えるはずもなく…

ヒヤリと冷たい気配を感じて顔をあげる。
それは、自分に目がけて迫りくるバラゴの殺気…

「うわぁぁぁ」

自分の目の前に金の鎧が立ちはだかった。
そして、その鎧を突き破り、突き出された黒い腕。
牙狼の腹にぽっかり空いた穴の向こうに、醜悪で残忍な顔が見えた。

ドサリと倒れた父は、もはやピクリとも動かない。
見開かれたままの眼(まなこ)は何も映さず、固く結ばれた唇はもう
鋼牙の名前を呼んではくれない。

冷たい雨の中。
何度も何度も父を呼んだ。

「とうさん! とうさん!」

父という鋼牙にとって絶対的な存在が突然消え去った夜。
あの夜を境に、自分の中の重心を失くしたように、ふわふわと不安定で
空虚な日々が続いたことを思い出していた。

無性に自分の存在が許せなくなり、無闇に自分を痛めつけることもした。

(そうか… この傷は、自分で…)

鋼牙は拳の傷を見る。
記憶はない、といっても、あの当時の自分のことなのだから、この傷が
どのようにしてできたのか、大体のところは推測できた。



「…と稽古に疲れたようで、1時間あまりお休みになられました。
 そして、お目覚めになった今、こうして元の状態に戻られたと、まぁ
 こういった感じですが、お解りいただけましたか?」

ゴンザの話が終わった。

『なるほどな…
 やはり、俺様の読みどおり、1日も経たずに元に戻ったってことだな』

ザルバが満足そうに言った。
鋼牙は何気ない風を装いながらゴンザに聞いてみた。

「ところで、俺は… 無様な様を晒してはいなかったか?」

鋼牙に聞かれてゴンザは少し考えるそぶりを見せたが、すぐに返事を
した。

「はて… そのようなことは…

 少なくとも、わたくしは鋼牙様のそのようなお姿を見てはおりません。

 あの頃と… 大河様を亡くしたときと同じでございました。
 鋼牙様は、ひとりでじっと悲しみに耐えておられたように見受けました」

痛ましそうな表情で答えたゴンザは、その後、真っ直ぐに鋼牙を見つめた。
そのゴンザの言葉には、嘘偽りはないように思えた。

「そうか…」

安心したように返事をした鋼牙に、ゴンザは言葉を足した。

「ただ、あの頃とは違い、カオル様がいらっしゃいました。

 カオル様の明るさによって、鋼牙様はずいぶん救われていたようで
 ございましたよ」

そう言うと、ゴンザは今朝の追いかけっこを懐かしむように中空を見つめ、
自然に相好を崩して言った。

「カオル、カオル、とそれはもう、よく懐かれて…

 つい先程も、お休みになられるときには、カオル様に
 『そばにいてほしい』 などと… フッフッフ」

口元を抑えるようにして笑った。
そのとき、鋼牙の手の傷がゴンザの目に留まった。

「それに、その傷…

 その傷の手当ても、カオル様に絆創膏を貼ってもらいたいと
 甘えられ… て… ゴホゴホ…」

ゴンザは急に咳き込み、最後まで言葉を続けることができなかった。
それは、ものすごい形相で睨んでいる鋼牙に気付いたからだった。

『よかったじゃないか、鋼牙。
 今回はカオルに感謝しなけりゃな!』

鋼牙が不機嫌になっていることを十分承知のうえで、ザルバはからかった。
睨む相手が、ゴンザからザルバに変わったところで、すかさず、ゴンザが
退散する口実を告げる。

「あ、あの…
 わたくしはそろそろ夕食の支度に取り掛かりますので、これで…」

そうして、鋼牙の返事も聞かずに、書斎をあたふたと出ていった。

『気にするな、鋼牙!
 カオルに甘えたのはお前じゃない。
 お前の幼いときの記憶を持った別人、とでも思えばいいじゃないか?

 いや、それはそれで問題があるか… クックック』

無責任に面白がるザルバの言葉が、鋼牙の神経を逆撫でする。

「うるさい!」

苛立ちから一喝するが、ザルバは少しも気にしてなどいなかった。


to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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