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きんのまなざし ぎんのささやき

家に帰ろう(2)

ゴンザさんからの伝言です。

「わたくし、きっかけだけは作らせていただきました。
 あとは、どうぞ、お任せいたします」


次は、selfish からの連絡事項です。

「あまり過剰な期待はなさりませんように。
 外出先のカオルを鋼牙が連れ帰る… ただそれだけのお話です」


このあとは淡々と進むだけです。
ほんとにそれだけです。



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

(あっ、来た!)

ゴンザが迎えに来るであろう辺りをぼんやり見ていたカオルの表情が、
ぱっと明るくなる。
ゴンザがいつも買い物などに使用している、幾分コンパクトなタイプの
車が滑り込んできた。
針葉樹の深いグリーンを背景に、きれいに磨き上げられたシルバーの
車体が、雨の滴を身にまとってキラキラと輝いて、よく映えていた。

やがて、駐車場の一画にぴたりと車が止まった。
カオルの位置からは運転席の人の顔は見えなかったが、ナンバーも
ゴンザの車に間違いなかった。

雨はずいぶん小降りになっていたので、カオルは車の位置まで
走ろうとした。
そのとき…
運転席側のドアが開き、中から長身の男が出てきた。
その人物が誰なのかに気づいたカオルは、ひどく驚いた。

「えっ… 鋼牙…?」

雨が降っているというのに、鋼牙はいつもの足取りで、目を見開いている
カオルの元に真っ直ぐやってきた。
カオルの目の前まで来ると、足を止めた。

「帰るぞ」

表情も変えずにそう言うと、差さずに手に持っていた傘をカオルに差し出す。
前髪から雨をしたたらせる鋼牙の顔と、傘とを交互に見てから、カオルは
吹き出した。

「なんだ?」

「だってぇ…
 その傘、差せばいいのに、と思って…」

カオルは笑いをかみ殺しながら言った。
鋼牙は少しも面白くない、という感じで、ぐいっと傘をカオルに押し付け、
来たときと同様、車に向かい戻っていく。
カオルは慌てて傘を広げる。

「待って、鋼牙…」

カオルは鋼牙の背をめがけて駆け出した。
ようやく追いつくと、ぐいっと、鋼牙のコートの肘のあたりを引く。
やれやれという具合に立ち止り、カオルの方に振り向くと、今度はカオルが
鋼牙に向けて、無言で広げた傘を差しだす。

「…」

カオルは、言葉にすると自分が照れてしまうから、と黙っていたのだが、
鋼牙にすれば、 「一緒に入ろう?」 と言われたなら 「俺はいい」 と
断ることができたはずで…
カオルが無言だったばっかりに、結果的には、鋼牙は拒否するきっかけを
失い、仕方なく、カオルから傘を無言で受け取る羽目になった。
そのとき触れたカオルの手は冷たかった。

車までのほんの少しの距離、1本の傘にカオルとふたり、黙って歩く。
ただ一言だけ鋼牙は言った。

「濡れるぞ」

ぐいっとカオルの肩を引き寄せた。
思わず鋼牙を仰ぎ見るカオルだったが、鋼牙は前だけを見ている。
少し湿った白いコートが、カオルの上気した頬に気持ち良かった。

(もう少し遠くに車を止めてくれればよかったのにな…)

カオルはそう思いながら、鋼牙に寄り添い黙って歩いた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ふたりが車に乗り込み、鋼牙がエンジンをかけようとしたとき、ゴンザから
電話が入った。

「カオル様?
 鋼牙様と会えましたかな?」

「今、ちょうど会えたとこ…」

そこで、カオルは急に声をひそめて言う。

「あたし、鋼牙が来るなんて、ひとっことも聞いてないんですけど!」

「おやっ、言い忘れましたかな?
 とにかく、無事にお会いになれたなら結構でした。

 それはさておき…」

少しもったいをつけてからゴンザがカオルに、あるお願いをした。

「うん…  うん…  えぇ…
 じゃあ、遅れるようなら連絡します。
 うん、それじゃ…」

電話の途中、カオルが赤くなったように思った鋼牙は、無視するわけにも
いかず、電話を切るのを待って尋ねた。

「ゴンザがなんだって?」

「それがね…」

カオルは今しがたのゴンザの電話の内容をかいつまんで鋼牙に話した。

夕食の準備にもう少し時間がかかるということ。
1時間程度帰宅が遅れたほうが都合がいいということ。
もちろん、真っ直ぐ帰ってきてもいいし、もっと遅くなるようなら、それでも
構わないということ。

実は他にも、

「せっかくの機会なので、どこかドライブしてきてはどうでしょう?」

と言われたのだが、そのことは鋼牙には黙っておいた。

「どうする?
 このまま真っ直ぐ帰る?」

カオルは、期待とは反対のことを言った。
鋼牙は車のエンジンを作動させ、ワイパーでフロントグラスの雨粒を
払いのけた。
鋼牙はハンドルを抱えるような格好で、空をじっと見つめた。
雲の流れは速い。
東の空は明るいようだった。
それらを確認すると、エンジンをかけ、静かに車を発進させた。

「すぐに雨は止みそうだ。
 少し遠回りして帰る」

思いがけない言葉に、カオルはまじまじと鋼牙を見つめた。
視線を前に向けたままの鋼牙が聞く。

「…なんだ?」

カオルは、くすっと笑ってから

「なんでもない…」

そう言ってから、上質なシートにゆったりと身体を預けた。



to be continued(3へ)
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拍手[31回]

コメント
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期待してないw
うーん、最初から期待しないってのも如何なものかとむしろ作者様に申し訳ない気が致しますがw。プレッシャーになるなら言わないわ、たまにしか♪。

そうですね~、ママン的な立場で押せ押せ路線を推奨したのが良くなかったかもと考え直しました。押せ押せ!だと子供は引き気味に、いけません!と押し付ければ逆に押せ押せになる、つまり反動の法則(ホントか?)で行けば…。

selfish様教育路線変更です、黄金騎士には清く正しく女性には振り向かない方向で行きましょう。
いや待てよ、反動でまさかの男色……。サイトが違うカップル構成になりそうですね…。
心太 2012/09/29(Sat)23:38:31 編集
Re:期待してないw
’期待しないで読みに来る人’ なんて、いないですよねぇ
なのに、「期待するな」 というのも失礼な話でした。
楽しみに待ってていてくれるの、とっても嬉しいですよ!

まだ連載途中なので曖昧にしておきたいところもあって、そういう意識から微妙な表現になってましたけど、えっとですね…
「期待はしていただいてOK!」
でも
「期待どおりじゃないこともあるよ~ン!」 
くらいな感じですぅ~

まっ、結局は ’楽しみ’ で書いてるんで、プレッシャーは、そんな ’ない’ ですよ。
(書いてる間は ’ない’ です。
 書き終わった後、「どんな反応が返ってくるのかなぁ」「こんな反応返ってきたぁ」ってところで、初めて感じることはありますけど)

うふふ、男色ですか?
アリじゃないでしょうか。
鋼牙さん、性別を気にする人じゃなさそうな…  (問題発言っすか?!)
もし、書くんだったら、攻め VS 攻め が面白いかと…
いや、書きませんけど!
【2012/09/30 09:29】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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