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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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月の光を集めて(5)

2019年、1発目です!
新鮮な気持ちで、今年もまた1年、皆様に楽しんでもらえるように頑張ります!

とはいえ、自分が一番楽しんで妄想していくことが目標であり、多分、それを実践していくんでしょうけどね。えへっ♡




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サヤからはこれ以上のことを訊けないと思った零に、サヤは

「お茶でも飲んでいく?」

と誘った。
だが、零は、にこっと人好きのする笑顔を見せて、

「ありがと。でも、もう行くよ」

と言って歩き出そうとする。
が、すぐに、あっそうだ、と歩みを止めて振り返った。
片眉をくいっと上げた零は、立てた人差し指をサヤにまっすぐに向けると、

「まだこの辺をホラーがうろつくかもしれないから、十分気をつけて!」

と言い含めるようにそう言った。
年齢からすれば、サヤのほうが零よりはいくつも年上のように見えるのだが、零はそんなことには頓着しない。
魔戒騎士だとは言え、年下の零にそんなふうに言われたサヤは、最初きょとんとしていたが、すぐにくすっと笑った。

「ええ、わかったわ。あなたも気をつけて…」

その答えに零は満足そうにひとつうなずくと、じゃあ、と手をひらひら振って去っていった。
黒いコートの裾を揺らしながら小さくなっていく背中。
サヤはその後ろ姿をしばらく見送っていたが、やがてひとつ小さく息を吐いて、畑のほうへと戻っていった。




サヤの視線を感じなくなった頃、零はスッと目つきを鋭くしてシルヴァにそっと伺いをたてた。

「どうだ、何かおかしなところはあったか?」

『いいえ… 特にこれと言ってはなかったわね。ただ…』

そう言葉を途切らせたシルヴァの後を受けて零は応える。

「完全にシロとも断定できない、か…」

『ええ…』

確かに、彼女の受け答えに明確に怪しい点はなかった。
けれども、彼女が纏(まと)うどこか儚げでいながらも凛とした佇(たたず)まいが、どこかつかみどころがなくミステリアスな印象を与えていた。



「…」

険しい表情のまま、無言で歩き続けている零であったが、林の木々の中にチカチカと何かが光っていることに気づき、足を止めた。

『ゼロ?』

その零の行動に、シルヴァは怪訝そうに声を掛ける。

「シルヴァ、あれを見ろ」

そう言って、零は光っているほうにシルヴァをかざした。
シルヴァは神経を研ぎ澄ましてじっと様子を窺っていたが、

『邪悪な気配は感じないわ』

と答えた。

「そうか…」

シルヴァの返事を受けても気になるのか、零はゆっくりとその光るものがある木に近づいた。
ごつごつとした幹に手を掛けて、上のほうを透かして見る。
が、青々と茂る葉に邪魔され、光るものの正体はわからない。

「念のため…」

零は誰に言うともなく小さく呟くと、ふっとその場に沈み込み、ジャンプした。太く真横に張り出した枝に右手が届くと、その枝を引き寄せるようにグイっと右手に力を込め、左手も枝に掛けた。
そうしておいてから、足を大きく前に振ってその反動を利用して蹴上がりをして身体を引き上げたかと思うと、すかさず、片足を枝に掛けグンと踏みしめるとともに、手をさらに上の枝に掛けていた。
絶妙なバランス感覚としなやかな筋力とバネを駆使して、零はどんどん上へと登っていく。

「確か、この辺りじゃないかな…」

零は、ちらっと下を見て登ってきた高さを確認すると、枝をかき分けながら目を凝らした。
すると、程なくして、目的のものを発見する。

「これか…」

零がそれに手を伸ばそうとしたとき、

『待って!』

とシルヴァの鋭い声がかかった。
が、すぐに、

『大丈夫よ、問題なさそうだわ』

と緊張を緩めた声で伝えられ、零は止めていた手をそのまま伸ばして、光っていた正体に触れた。
硬く冷たい感触。そして、持ち上げてみると、大きさのわりにはズシリとそれなりの重さを感じた。
零は手の中のそれを裏に返したりしてよく見る。

「結構古いもんみたいだな…」

鎖の部分をつまみ、目の前にジャランとぶら下げてみる。
零の前でユラユラと揺れているのは、懐中時計だった。
傷だらけで少し汚れてもいたが、細かく美しい彫り物がされている。
けれども、残念なことに、その蓋は固く閉じられていて、竜頭の部分を押しても開かなかった。

「なかなかいいものみたいだけど、どうしてこんなところにあるんだ?」

零は疑問を口にするも、誰もそれに答えることができる者はいない。

『さあ…
 それより、そんなもの、さっさと置いて行きましょう?』

正体がわかり興味を失ったシルヴァがそう言うと、

「そうだね」

と答えた零は、懐中時計を手にしたまま、登ってきたときと同様、スルスルと木を降りていった。

  シュタッ

地上に降り立ち、コートに付いた木の葉をパッパッと手で払っている零に対して、シルヴァが怪訝な声を掛ける。

『ゼロ、それをどうするの?』

「ああ、これ?」

零は手の中の懐中時計をちらっと見ると、今降りて来たばかり木の、手近な枝にひょいとぶら下げた。

「ここに置いておこう。
 ひょっとしたら、持ち主の手に戻るかもしれないからね?」

本当にそんなことが実現するとは零も考えてはいなかったが、あのまま誰の目にも触れないところに放置していくよりはいいだろうと、そんな軽い気持ちでいた。

そんな零の気まぐれな行動に、まあいいわ、とため息をついたシルヴァだったが、一転して緊迫感を含んだ声で零に言った。

『ゼロ、今夜こそはあのホラー、片づけるわよ?』

そう言って発破をかけるシルヴァに、ニヤッと笑う零。

「ああ。
 そう何度も逃がしてたまるかよ」

シルヴァにチラッと自信たっぷりな顔を見せると、零は顔を上げた。

(今夜こそ必ず…)

闘志を新たにした零は、しっかりとした足取りで歩き出した。



to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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