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きんのまなざし ぎんのささやき

月の光を集めて(6)

頭の中で繰り広げられる妄想の数々。
なのに、それを書き留める手の遅いこと、遅いこと… もはや、溜め息しかでません。はぁ~
それでも今夜もまた、ささやかですが、自分なりの精いっぱいをお届けします。
よろしくおつきあいくださいませ。


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街を見下ろす小高い丘の上に立つ零。

つい十分喉前まできれいな茜色に染まっていた空には夜の帳(とばり)が静かに降りてきて、眼下の街波が黒く沈み、その闇を打ち消すように街の明かりがあちこちに灯りだした。
その明かりひとつひとつのもとには人々の笑いが、喜びが、幸せがあるのだ。
そして、それだけではなく、中には、涙が、憎しみが、絶望もあるのだろう。
そう思うと、零はこの目の前に広がる景色を美しいとは思えなかった。
だが、どこか抱きしめたくなるような愛おしさを感じて、心が熱く震えるのを感じていた。

そして、誰に誓うともなく思うのだ。
この人々を脅かすホラーは俺がこの手で斬る。俺が守るのだ、と。



ふと、シルヴァが短く叫ぶ。

『ゼロ!』

シルヴァに呼ばれるまでもなく、零には、こちらに向かってくる青い光を目に留めていた。
遠くに見えていたその青い光は、あっという間に零の元まで飛んできて、零の左の頬すれすれを通過しようとしていた。
それに動じるふうでもなく、光の軌跡を目で追っていた零は、すんでのところでその物体をスッと避(よ)けつつ、右手でパッと掴み取った。
零はその手のものをじっと見ると、眩しいくらいだった光が徐々に弱まって、矢のような形状へと姿を変えていった。
その矢には、1枚の札が結び付けられていた。

『ゼロ、レオからの報告だわ』

「ああ」

返事をしながら零はその札を矢から外して広げた。
すると、札がひとりでに中空に浮かび、魔戒文字が浮かび上がった。

  お尋ねのサヤという名の魔戒法師ですが、
  過去30年の記録を確認したものの、
  それらしい該当者はいませんでした。
  魔戒法師ではなくとも、家族という可能性もあるかと思い、
  引き続き、その方向で調査を進めます。

『これは… どういうことなの?』

「…」

レオには、サヤの年恰好を伝えてそれに当てはまりそうな者がいないかを問い合わせていたのだ。
だが、その答えは該当者なし…

サヤは魔戒法師ではなかったのか?
あるいは、魔戒法師であった記録を何らかの理由で抹消されたのか?

だが、ここでいくら考えても答えなどは出ない。

「もう一度彼女に話を聞いてみる」

低い声でそう宣言した零が踵(きびす)を返そうとしたとき、シルヴァがそれを押しとどめた。

『待って、ゼロ!
 あいつよ、あのホラーの気配を感じるわ!』

「チッ」

零が小さく舌打ちをしたが、すぐに冷静さを取り戻してシルヴァに指示を乞う。
「シルヴァ、どっち?」

『正面よっ! あの時計塔の左側っ!』

シルヴァの声と同時に目標を見定めた零は、ぐっと顎を引き、気を引き締めた。そして、大きく地面を蹴ってホラーの元へと駆けだした。





「ひいっ」

恐怖に顔を歪めたサラリーマン風の男が、目の前に現れた化け物から逃れようと後退(あとずさ)る。
けれど、足は思うようには動いてくれず、手ばかりが空(くう)を泳いでいる。

『ろなれいしねか(お前に決めた)』

ほくそ笑むように白く濁った眼(まなこ)が弓なりになる。

もはや声すら出せなくなった男がへなへなとその場にへたり込み、それでも力の入らない足で地面を蹴ろうとしている。
そんな男にじわじわと近づいたホラーは男に覆い被さるようにして、骨ばった手の先の大きく曲がった鉤爪(かぎづめ)を、男の喉に近づけていく。

あと5センチ… 4… 3…

男は尋常でない汗にまみれ、これ以上は開かないというくらいに目を剥き、がくがくと震えている。

2… 1…

もう駄目だ、と男が目をぎゅっとつむったとき、

「おっと、それ以上動くなよ?」

と、緊迫したその場にふさわしくない、どこか楽しげにも聞こえる声がホラーの動きを止めた。
その声に、男がつむっていた目を恐る恐る開けると、ホラーの首には後ろからソウルメタル製の剣が突きつけられていた。

「!!!」

ひょいっと、ホラーの肩の向こうから端正な顔立ちの男が顔を覗かせて、

「速く、今のうちに行け」

と低い声で言った。
それでも、現状を把握しきれない男が呆けたように動かないのを見て、零は少しを声を荒げた。

「行けって言ってるんだ! おまえ、死にたいのかっ!」

ビクリッ、と身体が跳ねたと同時に夢から覚めたようになった男が、

「うわぁぁぁ」

と叫びながら走り出した。
後ろも振り向かずに一目散に駆けていく男の姿はじきに遠くに消えていった。

「さて、ここから先は俺が相手するから」

そう言ってニヤリと笑う零は、冴え冴えと美しく、底知れない冷たさを湛(たた)えていた。


to be continued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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