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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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朱(あけ)の誓い(3)

15歳のゴンザくん。そして、5歳くらいの大河くん。
目一杯、想像するんだ! がんばれ、自分!


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雑木林を駆けながら、ゴンザは本家の門をくぐるのか、と少しばかり憂鬱になった。
というのも、ゴンザはある理由から本家の人達にあまりよく思われていなかったからだ。
いや、本家の人間だけではない。
一族の者達から、何か異質なもので見るように見られていたのだった。

ゴンザは左手で耳を握りつぶすように掴んだ。

(こんなものさえなけりゃ…)

けれども、今更そんなことを思ったところでどうしようもない。
ゴンザはわずかに先を走るアンナの姿を見つめた。
アンナは幼なじみだ。
アンナと出会う前の記憶なんかないくらい幼いときからのつきあいで、今も変わらず、ゴンザに接してくれている。

(そうさ、アンナのように俺を俺として受け入れてくれる人だって、どこかにきっといるさ…)

なかば自分に言い聞かせるようにそう思うと、ゴンザはぐっと力を込めて大地を蹴る。
前を走っていたアンナに並び、そして抜き去る。

「アンナ、急ぐぞ!」

首だけちょっと回して、そう叫ぶ。
アンナは抜かれたことに一瞬ムッとしたが、すぐにニヤッと笑うと、

「わかってるよ!」

と叫び返した。




幸いなことに、本家よりももっとずっと手前で、ゴンザとアンナは子ども達の姿を捉えた。
よく見知っている本家の兄弟やその他、分家の子ども達が、見知らぬチビを中心にして、何やら騒いでいた。
恐らく、そのチビが闘我の息子であろう。

「だめだよ。やめなよぉ」

「やだ!」

「危ないったら」

「危なくないよ!」

風が運ぶ子ども達の声が、少し緊迫している。

「どうしたんだ、サトル」

子ども達の元に駆け付けたゴンザが、その中の一番年長の少年に声をかける。
本家の兄弟のうちの兄のほうだ。

「ああ、ゴンザ…」

ゴンザの姿を認めたサトルが、少しだけほっとしたような顔をした。
一族の大人達からはよく思われていないゴンザだったが、子ども達の間では少し違った。
まったく ’ない’ わけではなかったが、それでも大人達ほどの露骨な拒否反応はない。
どちらかというと穏やかで面倒見のいいゴンザは、大人の目がなければ、頼りになる優しい兄貴という存在として捉えている子どもも多かった。

「大河様が… あっ、今うちに来ている牙狼の称号を持つ闘我様の子供なんだけど、その大河様がハチの巣に石を投げたいと言ってきかないんだ」

見ると、サトルが掴んでいる大河という名のチビの手には、石が握られていた。
それを見て、ゴンザの顔は険しくなる。

そこに一瞬の油断が生じた。
大河はサトルの腕をブンと振り払うと、持っていた石をハチの巣めがけて投げつけたのだ。

投げる、投げるな、というサトル達との押し問答にいい加減イライラしていた大河が、ゴンザの登場でより一層面倒なことになりそうだと肌で感じたのだろう。
いち早く行動に出たのだ。

「あっ」

石を投げた大河は、やってやったとばかりに得意そうな顔をする。
ゴンザ達は、なす術(すべ)もなく、石の行方を見守るしかない。

  ひゅん

5歳の子が投げたにしては思いの他よく飛んだが、幸いなことにハチの巣までは届かなかった。
大河を除いた他の子ども達は、強張っていた顔を安堵の表情に変えた。
ゴンザもアンナも同じようにほっとしたが、暴挙に出た大河に言い含めようと振り返ったところで青ざめた。
自分の投げた結果に満足しなかった大河が、早くも2つ目の石を手に取っていたのだった。

「やめろっ」
「だめっ」

ゴンザとアンナの静止の声とほぼ同時に第2弾が投じられた。
もちろん、今回も当たるはずもなく手前で落ちたが、それを見た大河が悔しさからその場で地団太を踏んだ。
2回の石礫(つぶて)の攻撃と、地団太の振動。
それらは、ハチ達を興奮させるには十分なものだった。
巣の中からたくさんのハチ達が飛び出してきて、ブンブンという羽音が大きくなる。

「みんな、静かに後ろに下がれ。
 ゆっくりとだぞ!」

みんなを庇うようにゴンザは両手を広げ、極力声を潜めてサトル達に指示を出す。

「姿勢を低くしてっ
 絶対手で振り払うなよ!」

子ども達はすぐにゴンザに言われたように姿勢を低くしてゆっくりと後退し始めた。

(よしっ)

ゴンザはサトル達が言う通りに行動しているのを見てうなずくと、自分も下がろうとした。
が、すぐにぎょっとする。

「僕は牙狼になるんだ!
 だから、ハチにだって負けないっ!」

仁王立ちになった大河が、うるさく飛び回るハチに向かってブツブツとそう言っているのが聞こえたからだった。
その波動を敏感に感じ取ったのか、ハチ達の羽音が一層大きくなる。

「あぶないっ」

ゴンザは咄嗟に大河に覆いかぶさり、自分の身体を盾にしていた。
ゴンザの背に、恐怖の音が近づいてきた。


to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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