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きんのまなざし ぎんのささやき

朱(あけ)の誓い(2)

さあ、ゴンザさんの思い出話の始まりです!
若き日のゴンザさん、うまく書けるといいんですが。


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「ゴンちゃ~ん! ゴンちゃ~ん!」

明るい木漏れ日の差し込む雑木林の中を、魔戒法師の少女が大きな声を張り上げながら歩いていた。
クリっと大きな目がかわいらしく、顔には幼さが残っている。
だが、身体は年相応に成長しつつあり、歩くたびに網タイツを履いた足が見え隠れしていて、顔とのアンバランスさが不思議な魅力を醸し出していた。
林の奥へ奥へと進んだ少女は、やがて一本の木に目を止めるとまっすぐに近づいた。
そして、木の根元近くで足を止め、腰に手を当て仁王立ちになって上をにらんだ。

「ゴンちゃん! そこにいるなら返事くらいしてよ!」

少女の目線の先には大きく横に張り出した太い枝があり、その枝には、太い幹に背中を預けて枝の上に足を投げ出している似たような年頃の少年が目をつむって座っていた。
少年は少し不機嫌そうに目を開ける。

「なんだ、アンナか。
 その、ゴンちゃんっていうの、やめろよな」

しぶしぶという感じに返事をする。

「あたしがあんたのことを何て呼ぼうと、あたしの勝手でしょ?
 …って、そんなことより!
 もうあの人たち来てるのに、なんでこんなところにいるのよっ」

アンナと呼ばれた少女は、噛みつくように声を張り上げる。

「別にいいんだよ、俺は。
 目立つようなことをするんじゃない、と言われているんだから…」

特に卑屈になっているわけでもなく、至極当然のことのように少年は答えた。
その答えに、アンナは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「なんでよ! 牙狼の称号を持つ魔戒騎士が来てるんだよ?
 誰にそんなこと言われたのか知らないけど、倉橋家の男なら誰だって勇んで出迎えるんじゃないの?
 それとも何? 倉橋ゴンザは倉橋の家の者でも、男でもないってこと?」

どうやら、ゴンザよりもアンナのほうが元気がいいようだ。
ポンポンと機関銃のように次から次へと言葉を投げかける。
樹上のゴンザはアンナに気づかれないように小さくため息をつくと、のそのそと木を降りた。

「何をそんなに怒ってるんだよ?

 闘我様が次の執事の候補を探しに来た、っていうんだろ?
 だったら本家にちょうどいい奴らがいるじゃないか。
 血筋も能力も俺よりもずっといいんだし…
 執事見習いになるなら、塔が立った俺よりもあいつらのほうがよっぽど向いてるだろ?」

ゴンザは噛んで含めるようにそう言った。

確かに、倉橋の家は代々冴島家の執事を務める家系であり、本家の9歳と11歳になる兄弟はもちろん、その栄誉にあずかろうと、倉橋と名の付く家の男児はみな執事の素養を幼い頃からたたき込まれていた。
だが、冴島家の執事になるには、時の運もあった。
当主が変われば執事も変わる、というわけではないからだ。
運よく牙狼の鎧を継承した者から指名を受けるのは数十年にひとり…

そして、当然のごとく、そのひとりに選ばれない者は別の道を選ぶことになる。
多くの者は、早い者では12~3歳、遅くとも15~6歳で、それなりの家の執事見習いとして家を出ることが多かった。
だから、10歳かそこらの本家の兄弟はまさに打ってつけの年頃であり、今年15歳になってもいまだにどこにも行先が定まらずにいるゴンザとでは比較のしようがなかった。

「でもっ!」

「でも、じゃないんだ、アンナ…」

ゴンザは静かに遮った。

「わかってるだろ?
 いくらなりたくても、俺には冴島家の執事なんて無理なんだから…」

ゴンザは諦めというよりも、むしろアンナを慰めるように声を掛けた。
手は無意識に耳を触っていた。

「ゴンちゃん…」

アンナは先程の勢いとは打って変わってシュンとした。
冴島家の執事になれない理由を思うと、いかに元気いっぱいの彼女もしょげてしまう。
それを見て、ゴンザは意識的に明るい顔をする。

「アンナが悲しむことはないよ。
 俺も悲しいわけじゃないからさ。

 ただ、ちょっと…」

そう言うとゴンザは途方に暮れたような顔をした。

「どうしたらいいのかわかんないっていうか…」

けれども、すぐに笑顔を見せて、

「でも大丈夫!
 俺でも役に立つ場所があるはずだよ。
 魔戒騎士の家にこだわらなければ、きっと…

 だから、アンナも気にしないで?
 もうちょっとで、一人前の魔戒法師として認められそうなんだろ?
 俺のことより自分のことを第一に考えなよ」

とアンナの顔を覗き込んだ。
アンナはじっとゴンザの顔を見つめていたが、やがて、うんとひとつうなずいた。

「わかったよ、ゴンちゃん。

 …あ、そうだ、忘れてた!
 闘我様はひとりじゃないんだよ。
 子どもも連れてきてるみたいでね。
 その子がかなりヤンチャな子らしくって、何かあっちゃいけないっていうんでゴンちゃんの手も借りたいらしいんだ。
 だから、一緒に戻ってよ」

アンナはゴンザを探しに来た肝心の用事を思い出して、少し焦って言った。

「ああ、そういうことか…
 わかったよ、すぐに戻ろう!」

そう言うと、ふたりは目を見交わし、にやっと笑った。
そして、どちらともなく走り出す。
幼なじみ故に通じることがあるのだろう。
ゴンザとアンナは競争するように前になり、後ろになりながら、闘我が訪ねているはずの本家へと急いだ。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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