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きんのまなざし ぎんのささやき

朱(あけ)の誓い(4)

石を投げつけられたハチ、相当怒ってます!
絶対絶命、大ピ~ンチ!

どうなるゴンザ!?
どうなる大河!?


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無防備に脅威に晒されている背中に、じきに感じるであろうはずの無数の痛みを思うと、ゴンザの身体は自然と強くこわばった。
目をぎゅっと閉じ、歯を食いしばりながら、腕の下の小さな少年に覆いかぶさっていたが、どうしたことか、いつまでたっても何の痛みも感じてこない。

(あれ?)

ゴンザは少年の上から少し身を起こすと恐る恐る後ろを振り返り、目をみはった。

「アンナッ!」

ゴンザの後ろには、仁王立ちのアンナが何百というハチに向かって筆を突き立てていた。
ゴンザ達を襲おうと飛びかかってくるハチは、アンナの数十cm先で何かに阻まれるように弾き返され、こちら側には一匹たりとも侵入できずにいた。
どうやら、咄嗟にアンナが結界のようなものを張り巡らせて、ゴンザ達を守ってくれたようだった。

「ゴンちゃん、なんとか間に合ったみたいだね!」

そう言うアンナは険しい顔をしてハチ達を睨みつけていて、こちらを振り返る余裕はなさそうだった。

「でも、この術もあまり持ちそうにないから…
 だから、少しづつ下がって!
 とにかく、この場を離れなきゃ…」

額に汗が拭きだしたアンナが、それだけを言うとゆっくりと呼吸を整えるように肩を上下させた。
どうやら、小さな無数の敵を相手するのは、かなりの集中力が必要なようだ。

「わかった!
 …あっ、アンナ、ちょっとだけ待ってくれ!」

ゴンザは何かを思いつくと、すぐにそれを行動に移した。
何やら背後でゴソゴソと動いているゴンザのことが気にはなるが、アンナはハチに集中するために振り向けない。

「何やってるの、ゴンちゃんっ!
 もたもたしてる暇はないんだけどっ! …っく…」

叫ぶようにアンナが言うと、

「よし、もういいよ!」

と立ち上がったゴンザがアンナの腰に腕を回した。
そして、もう片方の手で大河の手を握ると、

「よし、ゆっくり進むぞ!」

と歩き始めた。
アンナは、ゴンザの歩みに合わせて一歩ずつ後退する。
後ろ向きに歩くのは難しかったが、支えてくれるゴンザを信じると心を決めたら、案外、怖くはなくなった。

じりじりと何歩か進むうちに、アンナはゴンザがさっき言った「ちょっと待って」の意味が何なのかに気がついた。
それは、さっきまでアンナ達がいた場所に、ゴンザのシャツが脱ぎ捨てられているのを見たからだった。
ハチは黒など濃い色に向かって攻撃する習性があるが、同様に汗の匂いなどにも敏感なのだという。
ゴンザのシャツは白かったが、ゴンザの汗は染みついている。
だから、少しはハチの注意を引きつけられるかもしれないと思ったのだろう。
確かにゴンザのシャツには徐々にハチが群がり、白い部分がだんだん見えなくなっていった。
それを見たアンナは

(よ~し…)

と札(ふだ)を一枚、懐(ふところ)から取り出すと、ブツブツと口の中で小さく呪文を唱え、狙い定めて投げつけた。
ぴゅうっと風を切って森の中を飛んだ札は、ゴンザのシャツに見事に張り付いたかと思うと、シャツがふわりと宙に浮き上がった。

(よし!)

心の中でガッツポーズをしたアンナは、魔導筆を左手に持ち替えて、右手の人差し指と中指を口の前にピンと立てた。
そして、口笛を吹くように細めた口から細く長く息を吐きだしながら、それに合わせて立てた指を左右に振る。
すると、その指の動きに合わせて、宙に浮いたゴンザのシャツが右に左に揺れ始めたではないか。
やがて、左右だけではなく、時に上下にも指を動かして、アンナはゴンザのシャツを操り、ハチに攻撃されて暴れまわる人のような動きのように見せた。
その作戦が功を奏し、暴れまわるシャツにターゲットを絞ったハチ達が、見る見るうちにシャツへと狙いを変えていった。

だが、そろそろ札の効力も限界だ。
アンナは精神を統一し、右手を大きく前方に突き出した。
すると、シャツがピュッと一直線にハチの巣めがけて突進して、巣の手前1mほどのところで急に動きを止めてバサッと地上に落ちた。
シャツと同様、無数のハチの毒針の餌食となった札が、空中へと溶けるように消えていき、その役目を終えたのだった。

その間も後退を続けていたゴンザ達は、だいぶんハチの巣から離れ、ゴンザ達を攻撃しようとするハチの姿もほとんどなくなっていた。

「ゴンちゃん、術を解くよ!
 ここから先は走って逃げよう!」

「よし!」

「じゃ、解くよ?
 いーち、にーい、さんっ!」

アンナの掛け声を合図に、ゴンザは大河を抱き上げると、アンナとともに一目散に駆けだした。





なんとか無事、倉橋の本家にたどり着いたゴンザは、大河を引き渡すとさっさと辞去しようと思っていた。
大河さえ無事に送り届ければ自分の役目は終わったし、本家にはできるだけ長居したくなかった。
外の日差しの下からうす暗い玄関先に入ったところで、対応に出たちょっとすました中年女性の使用人に大河を押し付けて背を向ける。
が、しかし、

「待て!」

と、家の奥から、少ししゃがれた野太い声がゴンザの背中に投げかけられた。
反射的に足が止まり、そして、ゴンザは小さなため息をつく。

けれども、すぐに覚悟を決めて振り返った。
ゴンザは、声を掛けてきた相手の顔は見ずに深く腰を折った。

「お久しぶりでございます、旦那様…」

ゴンザは、倉橋家の当主の気配に身を強張らせながら、頭をあげることができない。

「うむ。挨拶はいい。中に入れ…
 アンナ、おまえもだ」

うむを言わせぬ迫力に、玄関脇で息をひそめて様子を窺っていたアンナも、ついつい直立不動になる。
当主は何か小声で使用人に指図すると、すぐに奥へと戻っていった。

「奥の座敷にお通りください…」

使用人のすました声に、ほんの少しだけ丁寧さが加わってふたりを中へと促す。
ゴンザとアンナは複雑な顔をして互いの顔を見合ったが、ここで帰るわけにもいかないので、観念して使用人の後ろに従うことにした。



to be countiued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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