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きんのまなざし ぎんのささやき

解熱(2)

「冴島邸にクーラーがついているの?」

そう思われた方もいらっしゃいますよね?

表向きは財閥なんだし、「全館空調完備でしょ」な~んて思ってたりした
のですが…
(もちろん、部屋の雰囲気を壊すような作りにはしておらず、ちゃんと
 うまく隠している! …と思う)

でも、レトロな扇風機のある風景も捨てがたい、というわけで、結果的に
なんだかとっても中途半端になった感があります。 (苦笑)


そんないい加減な妄想なんですが、体調を崩したカオルちゃんに対して、
鋼牙さんがどうするのか…
ちゃんと、’解熱’ に持っていけるのか…

続きが気になる、という方はどうぞ。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

こんな夜でも、指令書は届く。
時と場所を選ばずホラーを生み出すのは、深く哀しい人間の陰我。
ホラーを斬り、陰我を断ち切るのが、魔戒騎士の宿命だ。
そのことに、鋼牙は一片の揺らぎも覚えない。

幼い頃より、父の生き様を目にし、牙狼の称号を受け継いでからは、
がむしゃらにホラーを斬ってきた鋼牙にとって、闘いに明け暮れる日々は
至極 ’当たり前’ のことだった。


(俺はいい。
 だが、カオルは…)


そう、カオルは違う。
闘いとは無縁の、ごく普通の生活をしてきた人間。

カオルにしてみれば、具合の悪い自分を置いて、ホラー狩りに行ってしまうなど、
理解できないことかもしれない、と鋼牙は思った。
冷たい、と罵られたとしても当然のことだと、そんなふうに思えた。



「すまない、カオル」

カオルの気持ちを思いやり、謝る鋼牙に、ソファに横たわったカオルは
手を伸ばした。
その手を取った鋼牙に、カオルは笑いかける。

「いいんだよ、鋼牙。
 それよりも… 気を付けてね」

弱々しく鋼牙の手を握り、弱々しく微笑むカオルのけなげさに胸を痛めながら、
それでも鋼牙は屋敷を後にした。



この日、鋼牙の相手となったホラーは、’ついてない’ の一言だ。
出会った瞬間、鋼牙のすさまじい闘気に圧倒される。
逃げるか闘うか迷ったその一瞬の後には、牙狼剣に貫かれ、夜の闇に
粉々に雲散してしまっていた。

『今夜のお前には、どんなホラーも叶わないだろうな』

おどけるように言ったザルバの言葉に、一言、鋼牙は答えた。

「…帰るぞ」

『はいはい…』

もし、ザルバに身体があったら、大きく肩をすくめただろう感じで、
ザルバは小さく呟いた。




屋敷に戻ってみると、カオルは穏やかに眠っていた。
顔色もよく、呼吸もゆっくりとした一定のスピードで繰り返されている。

「もう心配はないでしょう…」

鋼牙の横で、眠るカオルを同じように眺めていたゴンザが、鋼牙に向かって
言った。

「それはよかった」

鋼牙はそう答えておいてから、先程から持っている疑問をゴンザにぶつける。

「ところで…
 なぜカオルはここに寝ているんだ?」

カオルはリビングのソファーから、鋼牙の部屋に移されて、鋼牙のベッドで
眠っていた。

「鋼牙様にお伺いも立てずに、勝手に判断させていただきました。
 申し訳ございません。
 お叱りは甘んじて受ける覚悟でございます」

ゴンザは馬鹿丁寧に頭を下げたが、そのわりには、少しも悪びれた様子は
なかった。

「ですが、いろいろ考えたうえで、こうさせていただきました」

「どういうことだ?」

「はい。
 まず、カオル様の部屋では落ち着いて眠れない、と思いまして…

 客間のほうに、とも考えたのですが、カオル様のことを考えると、
 バスルームに近いほうが何かと便利だろうと思ったわけでございます。

 その点、鋼牙様のお部屋なら、バスルームが隣接していますから、
 カオル様にかかる負担も少ないでしょう」

なるほど、理には適(かな)っている。
だが、何かしら作為のようなものを感じて、鋼牙には疑心も芽生えかけて
いた。
その疑心が確信に変わる前に、カオルが目を覚ましたため、鋼牙の思考は
中断された。

「う、うん… 鋼牙、帰ってたの?
 おかえりなさい」

出掛ける前のカオルよりは少しだけ力を取り戻したのか、カオルは
ゆっくりとだが、そう言った。

「あぁ…
 起こしてしまったな、すまない」

鋼牙の言葉に、カオルはゆるゆると首を横に振った。


「カオル様、ご気分はどうですか?」

横からゴンザが控えめに尋ねた。

「あぁ、ゴンザさん…
 さっきより、ずいぶん楽になったよ。
 でも、また頭が少し痛いのと、食欲が全然なくて…」

弱々しい笑みを添えて、カオルはゴンザに言った。

「頭痛の方は、ゆっくり休まれればよくなりますから心配ありません。
 食欲のほうは、なければ無理に食べなくて結構ですよ。
 フルーツや軽食などは枕元にご用意していますから、召し上がりたいときに
 いつでもどうぞ。

 ただし、水分は喉が渇くのを待たずに、頻繁にお摂りください。
 いいですね!

 では、わたくしがいたのではゆっくり休めないでしょうから、これで
 失礼いたします」

カオルに慈愛に満ちたまなざしを向けていたゴンザは、ふいに鋼牙を振り
返った。

「ところで、鋼牙様。
 鋼牙様も、熱中症にはご注意くださいませ」

最後の「ませ」に妙に力を込めてゴンザが言った。
鋼牙は少したじろいだ。
なぜなら、ゴンザの目に異様な威圧感のようなものを感じたからだ。

「いいですか?

 熱中症にはいろいろな要因がありますが、体内の水分や塩分が不足して
 起こるものや、体温調節機能が失われて発生するものなどがあります。

 熱が体内から外に出ない状態… これは非常に厄介です。
 つまり、熱を溜めこんでいてはいけないのです。
 だから、上手く熱を外に出すことが必要だ、ということになります」

人差し指を立てたゴンザが、一言言うたびに鋼牙にぐいっと近付いていった。
その迫力に、鋼牙も知らず知らずのうちに少しのけ反る形になった。

「あ、あぁ」

その様子に気分をよくしたゴンザは、ふふん、と笑うと、すっと身体を引いて、
話を続けた。

「従って…
 鋼牙様の胸の内に秘めていらっしゃいます ’熱’ も、時には外に…
 そう、言葉や態度にしてお出しいただかないといけません。
 どなた様かを誰よりも大事に、大切に思われていらっしゃいます、
 その ’熱’ を、です。

 そうでないと、鋼牙様も大変なことになりますよ」

「…」

にこやかに鋼牙を見ているゴンザの目だけは笑っていなかった。
その目を、鋼牙は真正面から受け止めた。


「では、鋼牙様、わたくしはこれで…

 念のため、客間のほうのベッドメイクは済ませてございます。
 よろしければ、いつでもお使いいただけますので。

 鋼牙様、カオル様、お休みなさいませ」

ゴンザは涼やかな顔で一礼すると、鋼牙の部屋から出ていった。



言葉もなくゴンザを見送った鋼牙は、ドアが閉まると、ほぉっと息をついた。
だが、すぐに、再びドアが勢いよく開き、ゴンザがひょっこり顔を出した。
鋼牙はぎょっとして、ドアを振り返る。

「言い忘れておりました。
 先程、’熱’ は外に出すようにと申しましたが、鋼牙様のその ’熱’ を
 お出しになるのは、別の日になさってくださいませ。
 今晩では、カオル様がまた ’熱’ を出されてしまいますから。

 それでは…」

  パタン…

言いたいことを言うと、ゴンザは再びドアを閉めた。
それ以後、再び開かれることはなかったが、鋼牙はしばらくの間、ドアを
じっと睨んでいた。



「くすくす…」

鋼牙の後ろで、カオルが笑い声を立てた。
鋼牙が振り向くと、カオルも笑うのをやめた。
ほんの少し、沈黙があった。

「鋼牙の ’熱’ の相手って…
 あたしが思ってる人と同じ、かな?」

カオルは恥ずかしそうに、パイル地のケットで顔を半分隠して言った。



鋼牙はベッドの端に腰を下ろすと、指の背でカオルの頬に触れた。

「さぁな…
 とにかく今晩はゆっくり休め」

カオルはちょっと残念そうな顔をしてみせながら、渋々うなずいた。

「はぁい…」

そんなカオルを愛おしそうに見つめる鋼牙に、カオルはちょっぴりだけ
我がままを言ってみた。

「ねぇ、鋼牙。
 あたしが眠るまで、そばにいてくれないかなぁ?」

鋼牙はカオルだけにしか見せない、優しいまなざしを向けて返事をした。

「あぁ、いいだろう」

それを聞いたカオルは安心して、静かに目を閉じた。



カオルは、普段より少し高めの自分の体温を感じていた。
それは、熱中症によるものなのか、別の原因なのかはよく解らなかった。

でも、ちょっぴりしあわせな体温だな… などと感じていた。



to be continued(おまけへ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


はい、おしまいです。
「熱中症」が「しあわせな体温」って、どないなっとんねん、っていう
ツッコミもあるでしょうが、鋼牙さんに見守られるカオルちゃんの気分って
やっぱ、嬉しいんじゃないかな~ などと思います。
(違うかな?)

さてさて、’解熱’ というタイトルにしてみましたが、その後、鋼牙の ’熱’ が
ちゃんと解放されたのかは神のみぞ知る、デス。 (笑)

妄想の中のカオルちゃんは、寝不足と水分不足による、軽い熱中症という
ことで書いてみましたが、もう少し重篤(じゅうとく)な状態だったら、
鋼牙さんやゴンザさんの反応も、また全然違っていたでしょうね。
そんなことを妄想するのも楽しそうですよね?

みなさんも、いろんなふうに妄想してみてくださ~~~い!

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ゴンザさんったら~
こんばんは、selfish様
具合が悪い時には気分が落ち込みがちで、特にひとりだととっても心細くなりがちですが、鋼牙さん、ゴンザさんに見まもられて、カオルさんは家族っていいなぁ~としみじみ幸せを感じていると思います。

ザルバさんではないけれど、こんな時の鋼牙さんに出会ったホラーは迫力負けして瞬殺されちゃうんでしょうね。
で、急いで帰ってみれば、カオルさんは鋼牙さんの部屋でお休み中。しかもゴンザさんにはそれが必然のごとく語られ、鋼牙さんも熱を溜めこまずに外に出すよう諭され、その挙句に、今日はダメですよと釘までさされ。:-P
ゴンザさん、煽っているのか止めているのか、どちらでしょうか。

これでは、鋼牙さんはカオルさんを優しく見守りつつも、カオルさんが全快したら、思う存分、熱を発散させようとそれまで我慢だ!とか思っているのではないでしょうか。。
あっ、その前にまたカオルさんが熱中症にならないよう、生活指導をはじめてしまうかもしれませんね。
私の中の鋼牙さんは、ことカオルさんに関しては心配症で過保護で、独占欲は子供並みです。

楽しいお話をMがとうございました。
Mie 2013/08/28(Wed)00:26:43 編集
Re:ゴンザさんったら~
Mie様、コメントありがとうございます!!
あははは!
ゴンザさんったら、鋼牙さんをたきつけてるのか、止めてるのか、どっちやねん! ですよね?
勢いのまま、「鋼牙様、少しは態度に示してよ」と言って退場させたはいいけど、「いや、待てよ。今、示されちゃってもダメじゃん」と引き返してもらいました。
selfish 自身の思いつきのまんま動いてもらったので、よりリアル(?)な感じになったかも… (←言い訳です  苦笑)

カオルちゃんへの生活指導はゴンザさん担当でしょうね。
っていうか、「カオル様おひとりのときにこうなっていたらと思うとぞっとします。ぜひ、この夏は屋敷のほうにいてくださいませ!」と強く申し立てるかもしれませんね? うふふ

「心配症で過保護で、独占欲は子供並み」の鋼牙さんだったら、可愛いでしょうね。
そんな鋼牙さんとはちょっと違うかもしれませんが、selfish の場合は、その心配だったり、愛情だったりをうまく表現できない不器用な感じに鋼牙さんのことを書けたらいいなぁ、と思ってま~す!

【2013/08/28 20:37】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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