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きんのまなざし ぎんのささやき

解熱(1)

今年の夏も暑かった…
(いやいや、まだ終わってませんが)

夏と言えば、これかなぁ… ということで、書き始めたはいいものの、
ちゃんとオチが見つかるかな? と不安です。
どこかに落ち着けるといいのですが…

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「鋼牙様。
 お夕食の準備が出来たのですが… カオル様はいかがいたしましょう?」

リビングのソファで読み物をしていた鋼牙に、ゴンザがおずおずと声を
かけた。

鋼牙が顔をあげると、若干弱くなった夏の日差しが、窓からゆるゆると
差し込んでいた。

(もうそんな時間か…)

そう思いながらも、鋼牙はゴンザの言葉の意図を素早く理解していた。

カオルは、今日一日中、絵の制作で部屋に籠りっぱなしなのだ。
画家の卵であるカオルは、絵のこととなると寝食を忘れてしまうことも
あった。
この日も、朝食は摂らず、昼食も部屋で軽食を少しつまんだだけ。
お茶の時間にもとうとう顔を出さなかったのだ。
そういうわけで、夕食だからとカオルに声をかけていいものかどうか、
ゴンザは迷っていたのだ。


「用意はしてあるのだろう?」

「はい、もちろんでございます。
 毎日、暑い日が続きますから、お夕食だけでもきちんと召し上がって
 いただきたいのですが…」

カオルの身体を心配して、ゴンザが訴えた。

「わかった。
 俺が呼んでこよう」

本をパタンと閉じて、鋼牙が立ち上がる。

「そうしていただけると助かります…」

ゴンザがほっとした表情で、リビングを出ていく鋼牙を見送った。



エアコンの効いたリビングから廊下に出ると、むんとした熱い空気が鋼牙を
襲った。
今日はいつもより気温はそれほど高くはなかったのだが、湿度が高いため、
蒸し蒸しとして不快感は強かった。
階段を上がっていくと、その不快感は徐々に増していく。
気温以上の暑さを感じ、邸内を歩いただけだというのに、鋼牙の額にじんわりと
汗が噴き出した。

カオルの部屋の前まで来て、鋼牙はドアをノックする。

  コンコン…

当然、中からあるはずのカオルの返事が聞こえない。

「カオル?」

ドアに近づき、声を掛ける。
だが、やはり返事はない。

「開けるぞ」

鋼牙は少し緊迫したような声をかけ、すぐにドアを開けた。
室内は廊下よりも風通しが悪く、絵の具や油の匂いが充満していた。
鋼牙は思わず、一瞬、息を止めたくらいだ。

すぐに室内を見回す。

窓は開けられていたが、風はない。
部屋の中にはレトロなデザインの扇風機が1台あったが、温かい空気を
いたずらに撹拌しているだけだった。
その扇風機の前のキャンバスには、描きかけの絵があったが、肝心の
カオルの姿がなかった。




「こ… がぁ…」

足元からひどく弱々しいカオルの声がして、鋼牙は驚いた。
見ると、ドアのすぐ脇に座り込み、だるそうに壁に背中を預けたカオルの姿が
あった。

「!」

鋼牙はすぐにひざまずき、カオルの肩に手をかけた。
ひどく汗をかき、眼には力がなかった。

「どうした、カオル」

「なんか、気分が悪くて…」

鋼牙の問いにカオルは弱々しく答えた。
そんなふたりのやりとりを聞いていたザルバが、横から口を挟んだ。

『鋼牙。
 とにかく、涼しいところに運んでやれ』

「そうだな」

鋼牙は短く答えると、カオルを揺らさないようそっと抱え上げ、階下へと
連れて行くことにした。

鋼牙の腕の中に身を委ねてたカオルは

「ごめんね…」

と、小さな声で謝った。
眉間に小さなシワを作り、階段を降りていた鋼牙は、ふっと穏やかな顔に
なり、

「いいから、黙ってろ」

と、カオルに言った。

「…うん」

カオルはうなずくと静かに目を閉じ、鋼牙の胸に額を預けた。





リビングのドアが開いたので、ゴンザはにこやかな笑みを浮かべてそちらを
見た。
だが、鋼牙に抱えられてぐったりしているカオルを見ると、その笑顔は
瞬時にして凍りついた。

「どうなされたのです?」

カオルをそっとソファに下ろす鋼牙に代わって、ザルバが答えた。

『気分が悪いって言うんだ。

 カオルの部屋は風通しが悪く、かなり温度が上がっていた。
 それに、大量の発汗が見られる…』

それを聞いて、ゴンザは、すぐにカオルのそばに近づいた。
そして、顔色、手足の状態、そして脈などを手早く診ていった。

カオルはうっすらと目を開けて、ゴンザにも謝った。

「ゴンザさん、ごめんなさい。
 ちょっと無理し過ぎたみたい…」

ゴンザはカオルを安心させるように、にっこり笑った。

「どうやら、軽い熱中症のようですな。
 寝不足や疲れなども重なってのことでしょう。

 なぁに、ゆっくり休んでいれば、じきに楽になります」

ゴンザの言葉を聞いて、鋼牙も、そしてカオル自身も少しほっとした。

「私は身体を冷やすものを用意してきます。
 鋼牙様は、カオル様の衣服を緩めておいてくださいませ」

そう言ってゴンザは立ち上がると、リビングを飛び出していった。

後に残された鋼牙は、ゴンザに言われたとおり、カオルの身体を締め付けて
いそうなものを緩めていった。
カオルは、目を閉じて浅い呼吸を繰り返し、鋼牙にされるがままだった。

それが終わると、鋼牙はソファの脇にひざまずき、カオルの顔に張り付いて
いる髪をそっと掻き分けてやった。


「つらいか?」

鋼牙の問いかけに、カオルはゆっくりと目を開け、力なく笑った。

「ゴンザのいうことを聞いて大人しくしていれば、じきによくなる」

優しく言う鋼牙に、

「うん… 心配かけて、ごめんね。 鋼牙…」

と、カオルは再び謝った。



to be continued(2へ)
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教えて下さい
初めまして いつも ドキドキしながら読んでます❗️
パスワード入力画面が出てこないんです
どうしたらいいのですか❗️
ちゃ〜〜 2016/08/22(Mon)18:18:30 編集
Re:教えて下さい
ちゃ〜〜様、初めまして!
「パスワード入力画面が出てこない」だなんて、selfish のほうがドキドキしちゃいます。なぜだろう?

ちゃ~~様、ひょっとしてiPhoneでSafariを使ってますか?
「iPhone Safari Basic認証が出ない」と検索すると、結構出てきますね。

以下、iPhoneでSafariだと仮定して…
一度、Safariを完全に停止させて、それから起動してはどうでしょうか?
「完全に停止」というのは、ホームボタンを2回タップして、マルチタスク画面でスワイプして、っていうアレ。
これで出るといいんですが、そうじゃなかったら、URLにIDとパスワードを埋め込んでアクセスしてみるとか?(具体的にどうやるかは、ググってみてください)
あとは、Safari じゃないアプリ(Chromeなど)で見てみるという手もあり、かと。
もし、Google が入っていれば、そこからこのサイトにアクセスしてみては?

で、iPhoneでSafariでないとしたら、検索条件に「お使いの環境」を入れて検索してみてくださいね。

どうでしょう?少しはお役に立つといいのですが。
【2016/08/23 21:10】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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