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きんのまなざし ぎんのささやき

白花想

みなさんのお盆はどんなだったでしょうか。

亡き人を偲んで… ということで、とても短いのですが書いてみました。
よろしければ、お先へどうぞ。

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白い花を見ると、あの人のことを想い出す。

白い服のよく似合う、儚げなあの人を。
野に咲く花が好きだった、可憐なあの人を。



零の脳裏に、彼女の在りし日の姿がまざまざと浮かんだ。
優しげな微笑みをたたえて、自分の名を呼んでいる。

「銀牙…」



捨てたはずの名前…
そして、守り切れなかった人…

ほんの少しだけ、鼻の奥がつんとする。



(やれやれ…
 もうそろそろ、忘れさせてくれたっていいのにな…)

ふっと寂しげな笑いを漏らし、そんなふうに考えたりもするのだが、
それは強がりであることを、零自身が一番よく判っていた。



ふらりと立ち寄った花屋で、白い花を求めた。
赤いエプロンがよく似合う可愛い店員が選んだのは、白いトルコギキョウ
だった。
それを持って海へと走る。


少しだけ高くなった空。
目の前には穏やかな海。
引いては寄せる波の音。
髪を撫でていく潮風。
自然の一部にでもなったかと錯覚するほど、心を空っぽにする。



やがて、零は持っていた花束を、海にそっと投げ入れた。



白い花を見ることで、愛した人を想い出し、
白い花を手向けることで、その想いを解放しようとした。



過去に縛られるほど弱くはない。
だが、忘れることができるほど強くもない。



白い花束が波の合間を見え隠れしている。
その様子をほんの少しだけ眺めると、零は、ふっと笑って回れ右をする。
そして、一度も振り返ることなく、しっかりとした足取りでその場を後に
した。




静香…
白い花のような人。
俺の愛した、ただひとりの人。

どうか、安らかに…



fin
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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