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きんのまなざし ぎんのささやき

鳴らない鈴(12)

6月も終わろうかと言うのに、この妄想、まだ終わりません…
(月日が経つのはなんて早いんだろう、2017年も半分終わるのかぁ(遠い目…)

こんなにぐだぐだとお付き合いさせて申し訳ないなぁと思いつつ、どうか見捨てないでぇ、と祈っておりますデス、はい。


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カオルは自分の服を着終わると、鋼牙が脱ぎっぱなしにしていった衣服を丁寧に畳み始めた。
そうしておいて、愛おしそうに胸にぎゅっと抱きしめる。

(あの人とあたし、とうとう…)

照れ臭いけど無償に嬉しくって、顔が自然とほころんでしまう。

『おいおい… それじゃあまた畳み直さなくちゃならないぜ』

少し呆れたようにそう呟くザルバは、今、カオルの指に嵌(は)まっていた。
ほんの少し前、水浴びをしてくると言ってこの場を離れようとした鋼牙が、コートのポケットの奥からザルバを出して、

「ザルバ、俺が離れている間、カオルを頼む」

と託したのだった。

「ひゃっ」

ザルバにいきなり声を掛けられて、カオルは素っ頓狂な声をあげ、慌てて手で口を押さえる。

「びっくりするじゃない」

カオルはザルバを軽く睨む。
けれども、ザルバは少しも意に介していないようだ。

『おい、カオル。
 鋼牙のこと、少しも思い出さないのか?』

ストレートにそう尋ねられて、カオルは顔を曇らせる。

「…ええ」

『俺様のことも?』

「…」

カオルは黙って小さくうなずく。

『はぁぁぁ、傷つくなぁ』

大仰なくらいに大きな溜め息をつくザルバ。

「ごめんなさい…」

申し訳なさそうにカオルは謝る。

『いやなに、カオルが謝ることじゃない。

 …そうだよな、記憶がないのはおまえさんのせいじゃないんだ。
 カオルを責めたつもりはないんだが… もし、そう聞こえたなら、悪かったな』

「そんなこと…

 でも、やっぱり思い出せなくて悪いわ。
 こんなところまで来てくれて、あたしを連れ戻そうとしてくれてるのに…」

湿っぽい空気がふたりの間に漂った。
だが、そんな時間もそう長くは続かない。
気を取り直すようにカオルは明るい顔をして言った。

「でもね、たまに、フッと不思議な感覚になるときがあるの。
 何かをはっきりと思い出したわけじゃないけど…
 こう、なんていうか懐かしいっていうか、落ち着くっていうか、うまくは言えないんだけどそんな感じがするの…」

『ほお、懐かしい、ねぇ…
 で、それはどんなときだ?』

カオルは、う~ん、と中空を見上げて考え込む。

「どんなとき、って言っても…

 何ってことないんだけど、例えば、前を歩く鋼牙の足音とか… 風が運んだ香りとか…手を貸してくれたときの感触とか…
 やだ、なんだかこれって変態じみてない?」

顔を赤らめながら動揺するカオルとは裏腹に、ザルバは冷静に言った。

『ふむふむ、どうやら感覚的なところではまったく忘れ切っているわけではないようだな…』

と、そのとき、カオルの指先に何か硬いものが触れた。

(なに?)

カオルが自分の手の先に視線を移すとそこには鋼牙の革のパンツが…
そのベルト穴からぶら下がっているのは銀色の鈍い光を放つ小さな鈴だった。

(これは…)

カオルはそれを手に取るとじっと眺めた。
見た目よりもずしりと重たい。
カオルの様子がおかしいことに気付いたザルバが

『どうした、カオル?』

と少し緊迫した声で訊いたが、カオルの手にしたものが見えたので、すぐに

(ああ、それか…)

と安心した。

『ん? なんだ? それに見覚えでもあるのか?』

「見覚え?
 う~ん、そう言われると、何も…」

そう言いながら、カオルは音色を聞こうとして鈴を摘(つま)み上げてそっと振ってみた。

(あれ?)

「これ、鳴らないわよ?」

カオルは鈴をひっくり返し、どうして鳴らないかとじっと目を凝らしてみる。
すると、何か接着剤のようなもので埋められているようだった。

『それは、わざと鳴らないようにしてあるんだ』

カオルの見た物をそのまま裏付けることをザルバが言った。

「どうして?」

『所構わず鈴が鳴るとホラーを狩るときに鋼牙の不利になる、ってんで、どうやらそうしたらしい』

「誰が?」

『…』

ザルバはそれには答えず、クイっと顎でカオルを指した。

「あたし!?」

うむ、とザルバはうなづいた。

『これと同じものが実はもうひとつあって… それは雷牙が持っている』

そう言いながら、ザルバはカオルの反応を確かめるべく、じっと見つめた。

「雷…牙…」

『ああ、前にも話した通り、雷牙は鋼牙の血を引く冴島家の直系で、ゆくゆくは黄金騎士になるはずだ。
 つまり、カオル… おまえさんの息子でもある』


to be continued(13へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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