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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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もしもの話(1)

あのシリーズが再びっ!?
このサイト、気まぐれな妄想ばかりなので、シリーズらしいシリーズもないのですが、唯一(かもしれない)あのシリーズが帰ってきました!
すっかりお久しぶりなのでいろいろ忘れちゃってますが(おいおい)、楽しんでいただけたらいいな、と。


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まだ昼にはだいぶん間(ま)があるというのに、すでにもう真夏のような強い日差しがジリジリと照りつけています。
その下で、枝を空一杯に茂らせている木々が濃淡様々に気まぐれな光のコントラストを作る中、緑豊かな庭には初夏の花々が競い合うように咲き乱れておりました。



  パチン

まだ咲ききっていない薄く紫がかったバラを切るハサミの音が響いてきます。
その音の元をたどっていくと、眩しい緑の中に女性の姿が浮かび上がってきました。
今切ったばかりの、まだ朝露に濡れているバラを足元に置かれた花籠にそっと入れると、籠は花でいっぱいになりました。
女性は籠を顔のそばまで持ち上げて、静かに大きく深呼吸をしました。
花々の放つ芳香が胸いっぱいに広がり、女性の顔は自然にほころびます。



ここは、サエジーマ国の都にある、王とその家族の住まう城の中にある庭園の一隅です。
そして、この女性… 淡いペパーミントグリーンのプリーツも控えめな簡素なドレスを着ているために、一見してはそうとはわかりませんが、彼女こそがこの国の王であるコーガの妃、カオルンでした。
そのカオルンが花籠を抱えて庭の小道を城へと向かって歩き始めると、向こうから初老の男がバタバタと駆けてきました。

「カオルン様!」

息をきらせて慌てている男に、カオルンはのんびりとした口調で返事をします。

「あら、ゴーザン。おはよう!
 どうしたの? そんなに慌てて…」

「どうしたの? ではありませんよ、カオルン様…」

そう言いながら、ゴーザンは膝に手を置いて腰を折り、ハアハアと息をつきました。

「ちょっと、大丈夫ぅ?」

ゴーザンの顔を覗き込むようにして背をさするカオルに、大丈夫だから、というように片手をあげて制して顔をあげたゴーザンは、胸ポケットからチーフを引っ張り出して額を拭きつつ、

「カオルン様。いくら城内とはいえ、侍女のひとりもお付けにならずにおひとりで出歩くのは困りますぞ」

と、わざと厳しい表情をしてお小言を言いました。
が、すぐに情けないくらいに眉尻を下げて、

「カオルン様にもしものことがあったりしたら、このゴーザン、コーガ様に顔向けができません…」

と、弱々しい声で言いました。
それを聞いて、カオルンは小さく溜息をつくと、

「ごめんなさい、今度から気をつけるわ…」

と殊勝なフリをして神妙そうに答えました。
すると、今度はゴーザンが溜息をつく番です。

  はぁぁぁぁ

ゴーザンは長い長~い溜息の後、

「今度、今度と言いますが、いったいいつになったら…」

とついつい本音を漏らしています。
カオルンは申し訳なさそうな顔をしつつも、何も言わないことで、論外で行動様式を変えるつもりがないことを伝えていました。


彼女はミツッキー国のプリンセスでしたが、幼い頃に国を追われ、平民と同じように暮らしていました。
そのため、城内の堅苦しい暮らしにはあまり慣れていません。
そんないきさつを知るゴーザンは、カオルンに同情しつつも、カオルンのため、そしてコーガのため、ひいてはサエジーマ国のために、こうしてお小言を言うようにしていました。

カオルンも、決して意地悪ではなく、自分のために言ってくれているゴーザンの気持ちは解っています。
だから、どちらかというと奔放な彼女でしたが、できるだけ大人しくするように努力はしていました。


「カオルン様、今日も暑くなりそうでございます。
 お身体に触るといけませんから、何か冷たいものなどいかがですか?」

ゴーザンは、カオルンの手から花籠をもらうと、並んで歩き出しました。

「そうね、あたしよりもゴーザンのほうが必要かもしれないわ。
 だから、一緒に飲みましょう! ねっ?」

いたずらっぽい笑顔を浮かべてカオルンは言いました。
城の中では主従の関係でしたが、かつては長い旅で苦楽を共にしてきた仲間だったふたりは、気の置けないおしゃべりを楽しみながら、庭の小径(こみち)を辿っていきました。





「それにしても、お妃(きさき)様は、まだご懐妊の兆しはないのかい?」

そんな声が聞こえてきて、ドキリとしたカオルンとゴーザンの足が同時に止まった。

「あのコーガ様があんなに大事にされてるのにねぇ」

「ほんとに、ほんとに。すぐにでもおめでたい話が聞けると思ってたけど…」

「ご結婚されて何年になるんだい? 3年? いや、4年になるかい?」

「もっとじゃないかい?
 うちの孫が生まれる前だもの…」

「コーガ様に子種がないのかねぇ? それとも、カオルン様のほうに…」

「あらあら、めったなことを言うもんじゃないよ」

「でもねぇ?」

「そうだよ、お世継ぎがいないのでは困るもの!」

茂みの向こう側では、城の下働きをしている女たちがそんな話題で盛り上がっていました。
気まずい雰囲気の中、ふたりはどうしたものかとその場に佇(たたず)んでいましたが、

「王子を生んでくれそうな、どこぞの王女様を探したほうがいいんじゃないかい?」

という声が聞こえてきたとき、ゴーザンはこれ以上聞いてられないとばかりに茂みの向こうへと行きかけました。
ですが、カオルンがゴーザンの腕に取りすがり、声を潜めて止めました。

(だめっ!)

(ですが、カオルン様…)

(いいのよ!)

不服そうなゴーザンを、腕を引っ張ってその場から引き離したカオルン。
十分離れた場所まで来てから、ようやくカオルンはゴーザンの腕から手を離しました。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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