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もしもの話(7)
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コーガの横を景色がものすごい速さで後ろに飛んでいきます。
彼の髪が、息をもつけないほどの向かい風に激しく踊っているのは、コーガは疾駆する愛馬、ゴーテの馬上にいました。
すぐ脇を、レイの乗るギガが並走しています。
濡れたように艶めく漆黒のゴーテに、全身が光を弾くように真っ白で、銀糸のようなたてがみをたなびかせるギガは、西の山嶺に沈んだ太陽の放つ残照を受けてわずかに金色に染まりながら、目的の場所に向けてひた走っていました。
それをさかのぼること10時間ほど前。
早朝、いなくなってしまったカオルンの行方が全く知れないため、コーガとレイはそれぞれに行動を開始しました。
コーガのほうはというと、バルザに、カオルンの気配とハーリーティーの邪悪な気を追うように指示した後、王としての公務を猛スピードでこなしていきました。
愛する妃がピンチと言えど、今すぐ動けないのであれば、王としての務めを果たさなければならないと考えたのでした。
もともと手は抜かないが、それでいて決断力に富み、精力的に仕事に取り組むコーガの仕事はとても速いものでしたが、今日の彼の働きはまるで風神のような勢いでした。
生活面だけではなく仕事の補佐にもあたっているゴーザンが、今日ばかりは目を回さんばかりに自分の限界に挑戦し、最後の書類を関係機関に回した後はヘナヘナと椅子に座り込んでしまったくらいです。
口を半開きにしたまま、しばし茫然自失となったゴーザンでしたが、それでもカオルン妃の身を案じて、ガタガタになった身体に鞭打って、コーガ王の元に急ぎ戻ってきました。
一方、レイのほうは独自の情報網を駆使し、ハーリーティーという老婆に姿を宿したホラーについて、情報を集めにかかりました。
レイは、この国に来てから、元来の人懐っこさとフットワークのよさで、国の隅から隅までたくさんの知り合いを作っていたのです。
街のパン屋のおかみさんから、街はずれの鍛冶屋の親父、山のふもとのヤギ飼いの少年に、国の伝統的な工芸品であるマッカイ織りの織り子の少女に至るまで。
ものの小一時間、あちこちの人々の何人かに頼んだだけで、「レイが、ハーリーティーについて知りたがっている」ということが瞬く間に国中に知れ渡ったのでした。
その噂が水面に小石を投じてできる波紋のように国の隅々まで到達すると、今度は、寄せた波が返すように、大小さまざまな情報がレイの元に次々と集まってきました。
「その婆さんなら2週間ほど前まで、うちの近くの空き家に身を寄せていたぜ」
「婆さんには息子が3人いるって話だ」
「いや、俺は5人いるって聞いたがな」
「見た、見た! あたしゃ、その息子って男たちを見たよ。
そりゃもう、揃いも揃ってすんごいイイ男だったよぉ~♡」
「フラッと来たかと思えば、10日もせずにいなくなって、なんだか薄気味悪かったぜ?」
「なんでも、南の湖水地帯に行くとかって噂だが?」
「おいらは’灰色の森’に行くって聞いたけどな?」
そんな話とともに、なんとも危な気な話も集まってきました。
「あの婆さんのとこに行くと子供が授かるんだよな?」
「そうそう、隣の家のじいさんとこの孫娘も、それで赤ん坊ができたって喜んでたぜ」
「あたしの知ってる娘もその婆さんのお陰でやや子ができたんだけどね。
かわいそうに、ある晩、家に強盗が入って殺されちまってねぇ」
「あれだろ? 腹がかっ裂かれてたんだって?
中の赤子が引きずり出されていて見つからなかったって言うじゃないか…」
「わしは、その婆さんのお陰で授かった子が神隠しにあったという話を聞いたがなぁ」
「あたしゃ、婆さんに頼みに行った娘(こ)が帰ってこなかったって話を知っているよ。
婆さんはそんな娘は尋ねて来なかったって言ってるらしいけど…
怪しいもんだとみんな噂したもんさ」
集まってきた噂がすべて真実ではないかもしれませんが、得てして真実が隠れているだろうことも否めません。
レイの口から、集まってきた様々なキナ臭い話を聞いて、コーガの顔はみるみるうちに険しくなり、眉間の皺はこれ以上ないというくらい深く深く刻まれていきました。
なんとも言いようのない重苦しい空気の中、それを破って能天気なくらいに飄々としたバルザの声が聞こえてきました。
『コーガ、今、ハーリーティーの気配を感じたぜ?
ま~だ微かだが、間違いない。こいちは奴の気だ!』
それを聞いたコーガは、レイと視線を合わせてうなずき合いました。
そして、
「それで、奴は今、どこにいる!」
とバルザに厳しく問いました。
『まだなんとも言えないが、とにかく南西の方角へ向かってくれ。
近くに行けば、もっと奴の気配を掴みやすくなる。
それに、夜になれば奴らの匂いはいやでも隠しきれないってもんになるぜ』
それはとても頼もしいバルザの言葉でしたが、レイは厳しい顔のまま静かに口を挟みました。
「それはつまり、夜になれば、カオルンの身に降りかかる危険もそれだけ大きくなるってことだよな?」
レイがコーガに向けた流し目に、コーガは静かにうなずき、緊迫した低い声で朋友(とも)に願いました。
「レイ、おまえの力を貸してくれ」
それに対して、レイは笑みを返す。
「ハッ、当たり前だろ?」
そして、ぐっと表情を引き締めると
「必ずカオルンを無事に連れ帰るぜ」
と決意を口にしました。
サエジーマ国の双璧とも称されるふたりの若者が静かな闘志を漲(みなぎ)らせています。
その姿をゴーザンは頼もしく感じながらも、馬上の人となり、城を後にするふたりの背を見送りながら、不安そうな面持ちで無事な帰りを祈るばかりでした。
さて、こちらは早朝に城を出たカオルン。
ハーリーティーに会うにはどちらに向かえばいいのかまったく分らぬまま、それならばと、ひとまずは ’子宝の泉’ と呼ばれる、城下の町を抜けたところにある場所を目指しました。
カオルンが旅のお供に、と馬小屋から失敬してきたのは、毛の色が月毛(つきげ)と呼ばれる淡い栗色の馬でした。
足の先だけが真っ白で、まるで白い靴下でも履いているようにも見えるこの馬は、穏やかな気性の雌馬です。
その馬の背に揺られたカオルンは、なんとか無事に ’子宝の泉’ に到着しました。
そこは、岩の隙間から湧き出る水が一カ所に集まり、1mに満たない小さな滝を作っている場所でした。
その滝の小さな滝つぼのようになっているところのすぐ脇に生えている木に馬をつなぐと、馬は水辺に近寄り、ごくごくと水を飲み始めました。
それを見たカオルンは、馬から離れ、滝の真正面にあたる場所まで移動すると、水際にしゃがみ、そっと手を浸(ひた)してみました。
(冷たい…)
一度水から手を出したカオルンは、ゴオゴオと絶え間なく清涼な水を落とす滝に向かい、胸の前で手を組み祈りました。
(どうかコーガの子を宿させてください…)
悲痛なくらいの表情で目を閉じていたカオルンですが、そっと目を開けると、改めて泉の水をすくって口にしました。
冷たく柔らかい水が喉を通り、カオルンの身体にゆっくりと落ちていくのがしっかりと感じられました。
そのまましばらく滝を眺めながら、時折聞こえる鳥の声や、木立を抜ける風にサワサワとなる木々の葉擦(ず)れの音を聞いていたカオルンでしたが、
(さあ、このあとどうしよう…)
と思い、小さく吐息を落としました。
すると、そこに森閑とした空気を震わす一陣の風が吹いたではありませんか!
髪をバサバサと乱されたカオルンが慌てて髪を抑えると、’その声’ がすぐ近くで聞こえてきました。
「子が欲しいのかえ?」
それは、耳障りな老婆の声でしたが、カオルンの脳に直接響くように鮮明に聞こえました。
「えっ?」
カオルンは慌てて周囲を見渡しました。
ですが、カオルンの他には、彼女が乗ってきた馬が1頭いるだけです。
馬も何かを感じ取ったのか、落ち着きがなくブルブル言いながらその場で足踏みをしています。
おかしいなと思いながら、なおも神経をとがらせていると、程なくして再び ’その声’ が響いてきました。
「子が欲しいならこちらにおいで… おまえに子を授けよう。
さあ、こっちだよ…」
最初こそ少しおびえたような表情をしていたカオルンでしたが、おいでおいでと誘う声に何度も呼ばれるうちに、焦点をなくしたように瞳から光が消え、やがて表情をなくしていきました。
そして、木につないでおいた馬にふらふらと近づくと、手綱をほどいてゆるゆると馬にまたがり、’その声’ に導かれるままに馬を歩かせ始めたのでした。
to be continued(8へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
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