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きんのまなざし ぎんのささやき

もしもの話(9)

やだ、もう!
自分の手の遅さに悲しくなってきます。

焦らしてるわけじゃないんですよ! ほんとに!
気長にお付き合いください、としか言えない…


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コーガたちが岩の裂け目から中に入ろうとすると、激しく火花が飛び散り、びりびりと痺れるような衝撃を受けて弾かれた。

『ホラーの張った結界だ!
 こいつのせいでカオルンの気を感じられなかったんだな…

 コーガ! 俺様をかざせっ!』

バルザが叫ぶと、コーガはすぐさま岩の裂け目に向かって左手をぐいっと突き出した。
すると、岩の裂け目の黒御影石のように硬い闇が徐々に変化をし始めた。

  ピシッ

小さな破裂音がひとつ、またひとつと聞こえてくると、まるで鏡に石礫でも投げたように小さな稲妻のようなひび割れが縦横に走っていく。
ほどなくして黒い破片が四方に飛び散ったかと思うと、砕けるように霧となって消え去っていった。
途端に、肌にまとわりつくような嫌な空気が岩の裂け目から漂ってきて、コーガとレイの表情がゆがむ。
が、すぐさま口を真横に引き、無言のままうなずき合うと、躊躇なく結界が解かれた隙間から、ホラーの巣窟へと身体を滑り込ませていった。




ごつごつとした岩肌が剥き出しの中を早足で急ぐふたりは、足を進めるたびに嫌な汗をかき、身体が冷えていくのを感じていた。
目の前には、薄暗い岩穴が続いているのに、絶えず意識の深いところに怪しく艶めかしいイメージが送り込まれていたのだった。


切なげに歪む眉と、きつく閉じられた目の端から零れる涙。

苦しそうにあえぐ口元に、噛みつくようにむしゃぶりつく男の唇。

白く柔らかそうな女の肌には、肉厚な舌がいくつも這いずり回っている。

ビクンとつきあげるように動いた丸い乳房が、筋張った男の手に揉みしだかれて形を変えていく。

汗の匂いまでが漂い、甘い嬌声までが聞こえるような濃密なイメージ…

女が誰なのか、男は誰なのか、判然としないまま、獰猛なほどの欲望に耽(ふけ)る姿は、吐き気がするほど醜悪に感じられたが、しつこくコーガたちの感覚を揺さぶった。


「くっ、たまんないぜ…」

憎々し気に舌打ちするレイ。

『落ち着けふたりとも!
 それはカオルンじゃない。奴らの見せる幻影だ!』

「わかっている!
 これがあいつであってたまるか!」

頭ではわかっていても、じりじりとした焦りと苛立ちにコーガもレイも苦しめられていた。




「きれいね。ほーんときれい…」

洞窟の中とは思えない、白い大理石が敷き詰められたバスルームで、金の猫足のバスタブの淵に腰かけた老婆が呟いている。
バスタブの中を満たす乳白色のお湯には、カオルンが浸(つ)かっていた。
老婆は、なんともいえない芳(かぐわ)しい香のするとろりとしたお湯を手ですくっては、カオルンの細い肩に何度も掛けていた。

「さあ、いいだろう?
 ぴかぴかに磨いたその身体を、わたしの息子たちにかわいがってもらう時間だよ…」

そう言って老婆が手のひらを上にしてクイッと指先を上に引き上げると、それを合図にしたかのようにカオルンが立ち上がった。
身体を伝って落ちる水飛沫がキラキラと光っている。
老婆はニンマリと不気味な笑みを浮かべると、真っ白なタオルをカオルンの身体にふわりと巻き付け、ぎゅっと抱きしめた。
皺だらけの手が、カオルンの髪や背中を愛おしそうに撫でていく。

「ああ、なんていい気持ちなんだろう…」

うっとりするような老婆の声が心なしか透き通ってくる。
カオルンを撫でる手もいつの間にか皺が取れ、陶器のように白く艶やかになっていた。
ごわついていた髪も黒々とし、艶やかになり、カオルンの首のあたりにうずめていた顔をあげると、老婆の醜い顔はなく、蠱惑的な魅力を浮かべた美女が現れた。

「どうやらおまえを追って、王じきじきのお出ましだね。
 おやおや、いつにも増していい顔つきをしていること。それに、なんてたくましい身体をしているんだい…

 おや? ひとりじゃないんだね?
 ふふふ、もうひとりも負けず劣らず、なんておいしそうなんだ…」

さっきまでカオルンが浸かっていたお湯が、鏡のようにコーガたちの姿を映し出していた。

「さてさて、どうやって王様をもてなそうかね? うふふ…」

美しい女の姿をしたホラー、ハーリーティーは、カオルンの顎をクイッと上向きに持ち上げ、心底楽しくてたまらないという笑みを浮かべた。




そうこうするうちに、コーガたちは洞窟の奥の少し広くなった場所に出た。
あのハーリーティーの息子たちがたむろっていた場所だ。

見知らぬ人間の男の登場に、それぞれに寛いでいた男たちが気色ばむ。

「なんだぁ、君たちは?」

一見、どこかの貴族の息子たちのように優雅で美しい男たちに、コーガたちは驚いた。
コーガはすぐさま、

「バルザ?」

と朋友(とも)に説明を求めた。

『こいつらみんなホラーだ。
 ハーリーティーにはたくさんの息子がいて、ぱっと見、優男に見えるが、そうやって油断させて自分たちになびいた女たちを食っちまうんだそうだ』

それを聞いて眉をしかめたのはコーガたちばかりではない。
その場にいたホラーの中でも特に美形なひとりが、不本意そうな顔をして進み出てきた。

「おやおや、とんだ言われようですね。
 別にいつもいつも女を食うわけじゃありませんよ?
 赤ん坊のほうが女より何十倍もおいしいってこと、知りませんか?
 女たちをあんあん喜ばせて、孕ませたほうが何倍も楽しめるというものです」
平然とそう言い放つホラーに、レイは苦々しく唸った。

「なんて野郎だっ」

今にも剣を抜いて飛びかかろうとするレイを片手で制してコーガが叫んだ。

「お前たちを遊んでいる暇はない! カオルンはどこだ!」

「なにい?」

すると、そこに凛とした女の声が響き渡った。

「お前たちの探している女はここにいるよ!」

コーガもレイも、そこにいたホラーたちも一斉にその声のしたほうに顔を向けた。


to be continued(10へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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