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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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家に帰ろう(4)

selfish にしては、ちょっと長い回になりました。
2回分に分けてもよかったのですが、まっいいか… と、何も考えず、
そのまま公開します。

さぁ、そろそろ、うちに帰るとしますか? 鋼牙さん!

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

湖のほとりのパーキングスペースに車を止めたときには、陽もだいぶん
落ち、空の色が刻一刻と移ろっていた。
鮮やかなグラデーションを描く空と、それを映し出す湖面の美しさに、
車から降りて眺めていたカオルは、

「きれい…」

と、時間が経つのを忘れた。

運転席に座ったままの鋼牙は、全開にした窓に肘をかけ、そんなカオルの
様子を眺めていた。

が、気温がずいぶん下がってきた。
山では陽が落ちるとあっという間に闇に閉ざされ、気温も一気に下がる。
最後の陽光が消えるのも時間の問題だった。
鋼牙も車を降り、先ほど雨に濡れたカオルを気遣う。

「寒いぞ。
 そろそろ行くか?」

「あっ、うん、そうだね。
 … くしゅん」

急に寒さを感じたのか、カオルが自分の身体を抱くようにして腕をさする。
鋼牙はコートの中に包み込むようにして、カオルを抱きしめた。

「あったかい…
 でも、なんだか恥ずかしいよ…」

そう言って、鋼牙のコートの中でもぞもぞする。

「じゃあ、車に入るか」

鋼牙がカオルの背中に回していた手をほどくと、

「ごめん、やっぱり、もう少しだけ…」

そう言って、カオルはぴたりと鋼牙の胸にしがみついた。
鋼牙はわずかに笑みを浮かべ、また元のようにカオルを抱くと、何気なく
視線を上げた。
太陽を背にして初めて、鋼牙はそれに気づいた。

「見ろ、カオル」

「えっ?」

鋼牙の視線の先へと振り返ると、弱々しい光の架け橋が見えた。

「虹…」

カオルがそう呟いた途端、山の端に引っかかっていた夕日がふつりと
消え、かき消すように虹も見えなくなってしまった。

「あぁ」

カオルが落胆の声をあげた。

「…なんか急に寂しくなっちゃったね…」

「…」

鋼牙が言葉を捜せないでいると、カオルが急に明るい声で言った。

「ねっ、鋼牙?
 うちに帰ろう!
 ゴンザさんが待ってるわ。
 帰ってゴンザさんのおいしいご飯、一緒に食べよ!」

鋼牙の腕の中で、鋼牙の顔を見上げ、花が咲くように笑っているカオル。

「…そうだな」

「うん、そうしよ!」

湖面を渡る風は肌を差すように冷たく、互いを温めあうように寄り添って、
ふたりはその場を後にした。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ヘッドライトに浮かび上がる単調な景色を注視しながら、鋼牙は、ゴンザの
待つ家へと車を走らせていた。
程よく温められた車内はとても居心地がよく、助手席では、カオルが
穏やかな寝息を立てていた。

『大丈夫か、鋼牙?』

逢魔が時は、事故が多い。
ザルバは鋼牙を気遣った。

「あぁ、問題ない」

ならいい、とばかりに、ザルバは黙ろうとした。
すると、鋼牙のほうから話しかけてきた。

「ザルバ、北の管轄にはもう慣れたか?」

(こんな話題を出すとは、鋼牙にしては珍しい…)

だが、ザルバはそれには触れず、返答してやった。

『慣れたとか慣れないという感覚は、俺様にはないな。
 どこであろうと、やるべきことに変わりはないからな』

「そうか…
 なら、特に東の管轄に思い入れがあるわけでもない… か?」

『なんだ、鋼牙?
 お前は、東の管轄が恋しいのか?』

「いや、そういうわけではない…」

『おいおい、歯切れが悪いな。
 何が言いたいんだ?』

ザルバはズバリと聞いた。
回りくどく聞くより、ダイレクトに聞かれたほうが、鋼牙も話しやすかった。

「北の管轄に来てから1年以上経つが、ずっと馴染めない気がしていた。
 だからといって、東の管轄に戻りたいわけでもない。

 自分の落ち着く場所がない感じに、どうにも説明がつかなかったのだが、
 ザルバはどう感じているのか、と思ってな」

『こいつぁ、驚いた!
 いつからお前はそんなに繊細になっちまったんだ?』

「ふんっ
 何とでも言っていろ」

いつもなら鋼牙はそのまま黙るところだったが、不思議なことに話し続けた。
ザルバに話しかけることが目的ではないのかもしれなかった。

「だがな、カオルの言った言葉を聞いてふと思ったことがあったんだ」

『カオルの… ?
 何か特別なことでも言ったか?』

ザルバは考えている風だったが、それにはお構いなく鋼牙は続けた。

「ゴンザの待つ家に一緒に帰ろう…
 帰ってメシを食おう…と」

そのごくありきたりな言葉から鋼牙が何を思ったのか想像がつかず、
ザルバは聞き返した。

『それに何か意味があるのか?』

「俺が帰る場所は、東だとか北だとかは関係ない。
 ゴンザやカオルの待つ家だと、今更だが気づいた。

 あいつらのいる家に俺は帰る。
 俺の落ち着ける場所は…… そういうことだっ!」

あまりに正直に自分の心情を吐露したことがだんだん恥ずかしくなり、
最後には、鋼牙は言い捨てるようにして言葉を切った。

『ほぉ~、なるほどな。
 だが、これまでだって、ゴンザはお前の帰りを待っていたじゃないか?

 北の管轄に来てずいぶん経つのに、今になってあの屋敷に安心感を
 感じるのはどうしたわけだろうな?

 大事なのは、ゴンザの待つ家ってんじゃなく、カオルの…』

「ザルバっ!」

鋼牙は左手の拳を持ち上げ、ザルバを真正面から睨んだ。
それから、ちらっとカオルの寝顔を見た。

あと10分もすれば冴島邸に着く。
いつものようにゴンザが迎えてくれる。
カオルがおしゃべりをする。
そして、ザルバが混ぜっ返す。
鋼牙は、軽い疲労感を覚えながらも、自分の戻るべき場所に辿り着いた
安らぎを、今宵もまた噛み締めるだろう。

ザルバが再び口を開いた。

『よかったじゃないか、鋼牙。
 おまえにも帰る場所ができて…

 これから先、何があっても、カオルの元に絶対帰ってやろうぜ』

鋼牙は表情をゆるめた。

「あぁ、もちろんだ。
 俺は必ず戻る。
 どんなことがあっても、だ」

そう言うと、鋼牙は左手をステアリングに戻した。
前を見つめる鋼牙の表情は、とてもとても穏やかだった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


この妄想は、小説「妖赤の罠」の前日くらいのつもりで書きました。
これから鋼牙は、サバックに出場し、そしてそのまま使途ホラー殲滅の
旅にGo! の予定。 (多分)

その前に、selfish は、鋼牙とカオルにドライブして欲しかったんです。
MAKAISENKIの、あの回につながるように。

たったそれだけを設定して、いざ書いてみると、なぜか、執事の芝居から
始まって、どんな困難があっても必ず戻る! という鋼牙の決意へと話が
転がってしまいました…
こんないい加減な調子で書いてちゃダメだと思うのですが、こういう
スタイルが selfish にはちょうどいい…

拍手[53回]

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帰れる場所
子供の通ってる幼稚園の園長が言ってました。子供が具合悪くなって言うのは「おうちに帰りたい」「ママ」って。救急車を呼んでくれって子供は一人もいない、おうちが一番なんですよ~~って。
おうちに限らず、自分の居場所があるって、いくつでも、いくつになっても心の支えですよね。
心太 2012/10/01(Mon)23:49:04 編集
Re:帰れる場所
えぇ話ですな~
家=お母さんのいる場所、みたいなものですよね。

幼い頃に母をなくした鋼牙は、家ってものを実感できずに育ったかもしれないですね。
そして、そういうことを振り向かずに、闘いに明け暮れていたのかも。
自分にもちゃんと待つ人がいるってことを、うちの鋼牙さん、ようやく気づいたみたいです。
【2012/10/02 00:08】
無題
こんばんは、家に帰ろう、最後までつつがなく読めました、嬉しい、ゴンザさん粋な計らいすてきですね,しかしながらパスワードがとけなくて、ただいまピデオ借りてきて見て言いますが…奮闘中。








かなまま 2012/10/02(Tue)21:31:26 編集
Re:無題
かなまま様の借りられたビデオで言ってるといいんですが、パスワードの言葉…

どんなに牙狼を好きな人でも、「大人を魅了する」というヒントだけで、あれだな、ってわかる人は恐らくいません。(苦笑)
かなまま様の愛とか知識とかが足りないわけではないので、その辺で落ち込まないでくださいね。

こんなヒントじゃわかんないよ! という人は、次に ’どうする’ でしょうか?
’それ’ をした人は、だいたいパスワードが判ってると思います。

ただ…
がんばって判ったとしても、パス付妄想が期待通りかわかりませんけどね~ (苦笑)
【2012/10/02 23:49】
かなままさんがんばれー
わたしも最初ちょこっとつまったけど
Selさんのヒントは「大人を魅了する」の部分よりそのあとの?の数が重要なんです。
?の数とパスワードの文字数をよく比較して変換するのです。
龍鈴 2012/10/03(Wed)22:34:19 編集
Re:かなままさんがんばれー
龍鈴様から、かなまま様へのがんばってコメント、入りましたぁ~
かなまま様、がんばって~~~

とにかく7文字のカタカナを探しまくってくださいね。
【2012/10/03 23:32】
無題

おはようございます。龍鈴様有難うこざいます、ない頭でひたすら考え中です、パスは、本当に,苦手なので困りますが、50を過ぎてこんなに,はまったのは初めてで、色んな意味で、頭を使う考える、自分に驚いています、毎日が、楽しいです、家族に呆れらていますが,我道を行くでとおしています。最近娘が、携帯の待ちうけ画面、鋼牙にしてくれました、これには、感謝感激で励みにしてがんば中。
かなまま 2012/10/06(Sat)04:28:01 編集
Re:無題
土曜の朝からコメントいただいて、ありがとうございます!
なんか、ちょ~嬉しいです!

かなまま様、パスワードは、頭で考えていると、なかなか辿り着けないかも…です。
ネットという便利な世界を駆使してくださいませ。

> 毎日が、楽しい…
> 家族に呆れられ…
おぉ~、selfish のことかと思いましたよぉ~ (笑)
ただ、出稼ぎ中につき、書きたいのに書けないというストレスが溜まってきてるので、最近、毎日がちと苦しい…
まだ出稼ぎし始めて1週間なのに、この先が思いやられます…

あ~、でも、出稼ぎ先の会社の方で、A監督にそっくりな声と喋り方(若干、京都っぽい感じですが)をされる方がいて、出稼ぎ中の密かな楽しみはあったりしてます。
その方が話されると、つい、にやにやしてしまうので、それを我慢するのが大変なんです。

> 最近娘が、携帯の待ちうけ画面、鋼牙にしてくれました
うちは、PCの壁紙を、娘が勝手に牙狼と絶狼のフィギュア画像に変えてしまった…
どこの娘さんも母想いですのね。

実は、壁紙を変えたいな~ と思ってても娘に悪くて変えられないってのは、娘には内緒です。  (苦笑)

かなまま様、最後にまたパスワードの件ですが…
一方向で煮詰まってしまったのなら、
「初心に帰る(最初からやり直し)」か
「別方向から攻める」でございますよ。
がんばって!
【2012/10/06 11:15】
無題
あえて無題でコメントします。かなまま様、こちらのパス、ちょっと難しいです。解ればなるほどなんですが。 正直思いました、公開するのがそんなに照れ臭かったのか、selfish様と…。 selfish様の言うようにXXXXXがいいかです。 牙狼は大人を魅了する…を上手く分割してXXXXて、出てきた詳細群の中味を目を皿のようにして見ると「これだ!」と思われるワードに出会うと思います。 ホントはコメントすべきでは無いのですが…。ただなーーー、ほんとに思い当たらないでのよすぐに、うん。 selfish様がNGでしたらこのコメントは公開無しでOKです。

(一部、selfishにより伏せ字としました!)
心太 2012/10/07(Sun)10:34:26 編集
Re:無題
かなまま様がんばって! という心太様の気持ちをお伝えしたくて、コメントを公開しますが、コメントの一部を「XXXX」とさせていただきました。
心太様、事後承諾ですみません!

> 公開するのがそんなに照れ臭かったのか、selfish様と…。
ははは、その通りです、心太様。
できれば誰一人としてわからないようなパスワードにしたかったくらいですもん。
それじゃ、公開した意味ないんですけど… (苦笑)

「難しい」という意味は、多分、「牙狼にこのイメージはない」ってことだと思います。

かなまま様にはぜひとも頑張っていただきたいのですが、これ以上ヒントを出しちゃうと、パスワードをつけた意味がなくなっちゃうので、ゴメンナサ~イ です。
【2012/10/07 13:32】
無題
心太様、selfish様コメント有難うございます、みじくな私のために心ずかいに感謝感謝、こころして今だ模索中、鋼牙に出会え、今だお目にかかったことはありませんがこうやって,いろんな方々とお話できる喜びをひしひし感じております、何事にかけても鈍いですが、これからもヨロシクお願いします、やさしいきす、友なればこそ、続けてのアップ感謝、
かなまま 2012/10/08(Mon)22:26:00 編集
Re:無題
未熟と言えば、selfish の妄想も未熟そのもの…
そんなものを、いろいろな方に読んでもらえて、拍手やコメントをいただいてるなんて、半年前の selfish には考えもつかないことでした。

「牙狼が好きだから」「妄想が楽しいから」という軽い気持ちで始めたんですけど、かなまま様はじめ、みなさんの声に支えられてます~
いただいたコメントからも、インスピレーションが沸いたりするんですよ!
(正直、こんなに沢山の妄想が書けるとは、自分でも思いませんでした。
 作文とか感想文とかそういうの苦手だったし…)

自分の書いたものは、最初の頃は下手くそだな~と思い、この頃はマンネリだな~と思うんですよ。
そんなふうに(かなり後ろ向きに)思いながら書いてますが、ちょびっとだけでも書きたかったことが書けて、そこいいねってコメントもらえると、も~バカだから有頂天なんです。 ははは

だから、こちらこそ、ほんとによろしくお願いします。
【2012/10/08 23:23】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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