きんのまなざし　ぎんのささやき

妄想が砂と化して消えてなくなる前に、書いて、消して、また書いて…
そうやっていくうちに良くなっているのか、悪くなっているのか
分からなくなりますね。
これが見切り発車の落とし穴なのでしょうか？

こんな妄想でご迷惑をおかけしますが、え～い、公開しますっ

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翌日、カオルが起きるのを待って、鋼牙はカオルを誘った。

「スケッチにいい場所を見つけたんだが…
　行くか？」

「えっ、鋼牙が案内してくれるの？
　…じゃあ、ちょっと待ってて。
　用意してくるから。」

カオルは嬉しそうに部屋に戻っていった。
カオルがスケッチブックなどの入った大きなカバンを提げて戻ってくると、
ゴンザも出かける用意を整え、車の脇で待ち構えていた。

「ゴンザさんも行くの？
　なんだか家族で遊びに行くみたいだね？
　う～ん、楽しくなってきちゃった。」

一人はしゃぐカオルの姿を見ながら、ゴンザは居たたまれない気持ちに
なった。
そっと鋼牙を覗き見ると、鋼牙は真っ直ぐカオルを見つめていた。

（やはり、鋼牙様のお気持ちは固いのだ。
　わたくしも最善のことをなさねば…）

「ささっ、カオル様、参りましょうか？」
「そうだね。
　鋼牙も早くっ！」

車で小1時間ほどで、大きな公園に着いた。
公園の奥はそのまま雑木林につながっているようだ。
入口近くの遊具のある場所には何組かの親子がいたが、少し奥に向かって
歩くと、もう人の気配はない。
どこを切り取っても絵になる風景に、カオルは先頭になって歩いていた。
やがて、ひときわ大きな樹に狙いを定め、スケッチに没頭していった。
そんなカオルの様子をしばらくの間、愛おしそうに眺めていた鋼牙は、
やがておもむろに立ちあがった。

「鋼牙様、もう、よろしいのですか？」
「あぁ。」

短く返事をした鋼牙の手には、記憶を封じる赤い札が。
カオルに近づくと、躊躇なく、その額に張りつけた。
その瞬間、カオルの意識が遠のく。
崩れ落ちるカオルを受け止めた鋼牙は、優しく大地に横たわらせた。
札をそっと取り、カオルの顔を一瞬だけ見つめた後、鋼牙はすっくと
立ち上がり、ゴンザに言った。

「この足で管轄の見回りに行く。
　あとのことは頼む、ゴンザ。」

（鋼牙様、あなたという方は…）

長年世話をしてきたゴンザには鋼牙の胸のうちが痛いほどわかった。

『ゴンザ、俺からも頼むゼ。
　カオルにとっていいように…　なっ』

それまで沈黙を守っていたザルバもゴンザに願う。

「かしこまりました。
　出来る限りのことをさせていただきますので、ご安心を。」

ゴンザの言葉に鋼牙はうなずき、歩き出した。
一度も振り向かず真っ直ぐに歩いていく鋼牙の背を、ゴンザは黙って
いつまでも見送っていた。

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『ふ～っ
　ゲートになりそうな陰我は、この付近にはもうないな。』
「そうか。
　なら、屋敷に戻るぞ。」

カオルたちと別れ、管轄地に戻ってから、鋼牙は仕事に専念した。
仕事の開始が遅れたにもかかわらず、普段以上に集中して、実に
無駄のない手際だった。

『…今日から屋敷も静かになるな。』

思わずザルバが口を滑らせたが、それには答えず、鋼牙は屋敷への
道を黙々と歩いた。

（カオルがいた頃は、鋼牙も俺の冗談に少しは乗ってくれたもんだがな。
　まぁ、カオルが来るまでは、これがフツウの鋼牙だったか…
　ふっ、もう忘れちまったゼ。

　…なんだぁ？
　カオルがいなくて寂しいのは、実は俺様だったりするなのかぁ？）

鋼牙の左手で、ザルバが自嘲的に笑った。



to be continued（4へ）
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[7回]