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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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L'Oiseau bleu(7)

毎日、暑いですね。
夜、熟睡できていないのか、眠くて、眠くて…
昼前に30分、夕方にも30分という変則的なお昼寝をとってしまいました。
(それでも、やっぱり眠い…
 いや、そんな変な睡眠の取り方だから眠いのか?)

さあて… 今夜のメルヘンは、前回が短かったのでちょっと頑張って
書いてみました!
書いてみましたが… あんまり進まないんだな、これが。

とにかく!
暑さに寝付けない子は、いますか?
そんな子には、眠るまでのしばらくの間、今夜のお話をしましょう…





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

太陽は、今、目覚めたばかりでした。
夜の冷気をまだ少し残した空気は、ひんやりとレイの頬を冷やします。
森の木々の間からこぼれる光は、風をはらんだ薄いレースのカーテンのように、
レイの頭上を斜めに、幾重にも重なっています。

レイは、一歩一歩西の森へと足を進めながら、昨夜の王子との会話をぼんやりと
思い出していました。


………

「…というわけ。

 でさ、急で悪いんだけど、明日の朝に発(た)ちたいんだ。
 せいぜい2~3日だと思うんだよね、城を空けるのは。

 だめかな?」

王子は先程から黙ってレイの言うことを聞いていました。
レイも、言うべきことを言うと、黙って王子の視線をまっすぐ受け止めて
います。
無茶な頼みとは重々承知していましたが、レイは一刻も早くシャロンを
救いたいと思っていたのでした。
王子がそれを解ってくれるか…

ふたりの無言の会話は、時間にしてそう長くありませんでした。

「…わかった。

 城のことは気にするな。
 おまえひとりいなくてもどうということはない」

レイに無用な

「あっ、ひっでぇ。
 もうちょっと、こう、言いようってもんがあるんじゃない?

 …まっ、いっか、許してくれたんだから。
 礼を言うよ」

ふたりは少しだけ笑み交わしました。

「ところで…」

王子はすぐに笑みを引っ込め、真面目な顔で切り出しました。

「西の森の魔女は、相当、手強(てごわ)いと聞く。
 おまえひとりで、大丈夫なのか?

 助けが必要なら言えばいい。
 魔女退治は、シャロンひとりを救うだけじゃないんだしな。
 兵でも馬でも、こちらで用意できるものがあるなら、なんでも用意する」

レイを気遣い、尋ねる王子にレイは言いました。

「大丈夫、ひとりでなんとかなるさ。
 気持ちだけもらっとくよ」




………

「あ~あ、なんにもいらないって言ったけど、馬を借りときゃよかったかな。

 そうすりゃ、魔女退治した後も、早く帰れたよね…」

小鳥のさえずりを聞きながら、失敗したなぁ、などと呟くレイでした。



さて…
西の森にたどりつくまでに、いろいろな人に聞いた話は、それまでの話と
大きな差はありませんでした。

「西の森の魔女だって?
 見たことあるわけないだろ?
 もし見てたら、今、こうしておまえさんの目の前に立っとらんよ」

「あの森にひとりで入ろうっていうのかい?
 やめときな、やめときな。
 あそこにひとりで入って無事に出てきたモンなんか、あたしゃ知らないよ」

「西の森にどうしても入る必要があるなら、絶えず、連れの者と喋り続けろ。
 俺の爺さんがそう教えてくれたぜ。
 ひとりだけ喋るのは駄目だ。
 どんな無口なヤツだろうが、相槌はうっとけ、ってな」


「…そっか、ありがとう…」

話を聞かせてくれた、農夫のおじさんや洗濯していたおばさんに笑って礼を
言いながら、

(西の森の魔女はひとりのやつを狙う、っていうわけか… なるほどね)

と、レイはひとりで納得しました。



そうこうするうち、西の森の入口までやってきました。

「いよいよ… だな」

そう言うと、レイはニヤッと笑ってから、臆することなく森の中へと入って
いきました。

西の森は、これと言って特におかしなところがあるようにも思えない、
ごく普通の森のように見えました。
耳を澄ませば、美しい小鳥の声が聞こえ、風が通り抜ければ、ザワザワと
葉ずれの音がしました。

ただ、人が森に入るのを嫌がっているためか、けもの道のような道しかなく、
倒木や落石があるようなところは、数メートル前に進むのでさえ、ひどく
骨が折れるところもありました。
小さな沢を渡り、巨木を眺め、ウサギやシカとの遭遇も楽しみながら、
森に入ってから30分以上が過ぎました。

ところが、何も起こる気配がありません。

(魔女はひとりのやつを狙うって聞いたのに、どうして出てこないんだ?)

いぶかしく思いながらも、

(安全だと思わせて気を抜いたところを襲うつもりかも…)

と思い、レイは決して気を抜きませんでした。

ですが、さらに10分以上経過すると、さすがにレイも集中力が持ちません。

「おっかしいなぁ…」

思わず、そう呟いたときでした。
明らかに森の中の空気が変わりました。
小鳥のさえずりはピタリと止まり、森の動物すべてが息を潜めているような
緊張感に満ちた感じになりました。
代わりに何かがこちらの様子を窺っているような視線を感じます。

(なんだ? 西の森の魔女か?)

レイは感覚という感覚をすべて、研ぎ澄ませました。
が、向こうもこちらの出方を待っているのか、じっとしています。

(俺がひとりかどうか窺っているのか?)

試しにレイは、動いてみることにしました。
最初は、そろりそろりと注意深く歩きましたが、それでも何も起こらないため、
だんだん普通と変わらないように足を進めるようにしてみました。
それでも、何も起こりません。
こちらを見られている、という感覚もどんどん薄れていきます。

「なんで、なんにも起こらねぇんだ?」

レイが思わず呟いた、そのときです。
ギン、という感じで、こちらに向かって視線を感じました。

(あれ?)

レイは、わざと数メートル動いて、その辺の石を蹴ってみたり、木の枝を
揺すって音を出してみました。
何の変化も感じられません。
そこで、

「おい」

と小さく一言、発してみました。
すると、明らかに空気が変わりました。

(そうか、ヤツは人の声に反応するのか。

 …そうだと判れば)

レイは辺りを見回して周囲を確認しました。
木々が密集しているこの場所では剣を振るえないと判断すると、闘いの場所を
見つけるために、どんどん森の奥へと移動し始めました。

すると、ぽっかりと開けた場所に出ることができました。

(お~けぇ~、ここなら暴れられるかな?)

そう思うと、レイは大きく声を張り上げました。

「お~い、魔~女さんっ!  出てきなよ!
 聞こえてるんだろ?  ちょっと、あんたに聞きたいことがあるんだ!」

レイは、双剣の柄をひそかに握り直すと、目だけを左右に動かして、魔女の
出現を待ちました。

後方左手あたりから、何者かが近づいてくる音が聞こえます。
そして、何とも言えない匂いが漂ってきます。
何かが腐ったような匂いと、かびたような匂いとが入り混じったような、
とにかくものすごく強烈にイヤな匂いでした。

(おいおい、いくら美しくてもこの匂いじゃ、モテそうにないぜ…)

できるだけ大きく息を吸い込まないようにしながら、レイはそちらのほうを
ゆっくり振り返りました。

「!」

レイは驚きの余り、一瞬、動きが止まりました。

レイのほうに向かってゆっくりゆっくり近づいてくるのは、美しいとは
冗談でも言えないような化け物でした。

2メートルを優に超えるずんぐりとした牛によく似た巨体には、泥なのか
汚れなのか区別のつかないものが全身にこびりつき、背中の中央から
シッポにかけて ’たてがみ’ のように見える部分には、一部にカビなのか
コケなのか判らないものが生えていました。

その大きな体の上には、アンバランスなほどに小さな頭が乗っかっていて、
知能はさほど高くない印象を受けました。

何よりも驚いたのは、その化け物には目がありませんでした。そして、鼻も。
小さな頭には不釣り合いなほどに大きな耳と、大きな口だけしかなかった
のです。
その耳は、蝙蝠の耳のように薄く、先が尖っていて、絶えず周囲の音を
拾うためにバサバサと動かされ、締まりのない大きな口からは薄汚れた
歯が見え、ダラダラとヨダレがこぼれていました。

(なに、こいつ?
 これが魔女?)

レイは少し混乱しましたが、おもむろに足音の小石を手に取ると、化け物の
右側にある木を目がけて投げました。

  ヒュン…  コンッ

風を切って飛んでいった小石は、ものの見事に木に当たりました。
ところが、化け物は、なんの反応も示しません。

「へぇ~」

意外だとばかりに、レイが思わず声を漏らしたとき、化け物の様子は一変
しました。

4本足で一直線にレイのほうに向かって突進してきました。

「おぉ」

あまりの迫力に、レイが驚愕の声をあげました。
その声に反応して、化け物は一層スピードをあげます。

かよわい女子供であれば、それこそ悲鳴を上げるほどの恐怖でしょう。
もちろん男でさえも、この恐怖に冷静さを失わない者はいないでしょう。

(なるほどね… だから、目や鼻がなくても困らないってわけか)

そう考えながら、レイは左手に横っ飛びに避けました。
数秒後、それまでレイのいた場所に猛然と化け物が突っ込みました。

化け物が通り過ぎたとき、土埃とともにものすごい臭気が襲います。

「うっ」

レイは慌てて腕で鼻を塞ぎます。
レイが思わず漏らした声を敏感に聴き取って、化け物は方向を変えました。

「うわっ、ちょっと待って、待って!」

慌てるレイに、化け物はもちろん待つはずもなく、レイはすんでのところで、
交わしました。

(あっぶねぇ…)

とりあえず、声を出さなければ向かってくるわけではないはずで、レイは
迂闊に声を漏らさぬよう、左手で口を押さえました。

でも、こうしていても拉致があきません。
シャロンのことを聞こうにも、声を出せば攻撃されます。

(…倒すしかない、か)

そう決心すると、レイは、剣を握りなおしました。



to be continued(8へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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