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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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雨宿り

このサイトに読みに来ていただいてます是空様。
すでにみなさんもご存じかもしれませんが、pi●iv上で素敵な作品を
発表されていらっしゃいます。

その是空様のある作品を読んでいるうちに、selfish の妄想脳がユサユサと
揺さぶられてしまい、ついフラフラと書いてしまいました。
せっかくなのでと、是空様にお願いしてみたところ、快く公開を許して
いただきました。
ありがとうございます、是空様!


ただし、ひとつ、問題がありまして…

実は、この妄想には零くんの恋人として「陶子(トウコ)」という名の
女性が出てきます。
もちろん、この人物は、selfish が勝手に捏造した人物になります。

零くんがどこの誰とも判らない女性と付き合っていることに違和感を
感じられる方は、この先に進まないことを強く強くオススメします。



拍手[14回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

夜半過ぎ。
夢うつつの状態で、陶子は雨の音を聞いた。

(すごい雨…
 …零、大丈夫かな)

この日は、指令書が舞い込んできて、零は、今にも降りだしそうな夜の街へと
出掛けて行った。
今、陶子がベッドの中で聞く雨の音は、思ったよりも強く激しく、零のことが
心配になった。
だが、それも朦朧とした意識の中のことで、彼女はまた夢の世界へと
引き込まれていきそうになった。
いや、実際、引き込まれていたのかもしれない。
どのくらい時間が経過したのか判然としないまま、次に彼女が現実の世界に
意識を取り戻したのは、玄関のドアが閉まる音を聞いたときだった。

  バタン…

(あぁ、零、帰ってきたんだ…)

ぼんやりそう思いながらも、陶子は、自分の体温が馴染んだ居心地のいい
ベッドから離れられずにいた。

ところが、帰ってきたはずの零がなかなか家の中へと入ってくる気配が
なかった。

(あれ?
 …ずぶ濡れだから入ってこれないのかな?)

そんなふうに思って、陶子はベッドから身体を無理矢理起こして、玄関へと
向かった。
寝室のドアを開け、吹き抜けとなっている玄関を上から見下ろす。
零のために点けっ放しにしておいた表の玄関灯の明かりが、家の中にも
漏れてきているので、そこはぼんやりと明るかった。
玄関ドアのすぐ前に、シルエットがひとつ。

(…!)

思った通り、そこに零の姿を認めることができたのだが、陶子は、すぐに
零の異変に気づいた。
零の様子が明らかにおかしかった。

陶子の目には、ドアに背中を預けて微動だにしない零の姿が映っていた。
足元には、どす黒い水溜りができている。
零は項垂れて、その水溜りをじっと見つめているみたいだった。
陶子の存在にも零はすでに気付いているはずなのに、頭をあげる気力もない
みたいだ。

ただ、怪我をしているようではなかった。
もし、そうなら、シルヴァが陶子を呼んだはずだ。

ダメージを受けているとしたら、それはきっと…



陶子は零の名を呼ぼうとしたが、すぐに思い返すと、言葉を飲み込んだ。
大きくひとつ深呼吸をしてから、階段をゆっくりと降りていった。

零の目の前まで来て足を止める。

零の髪から今も水滴が滴り落ちていた。
コートの袖からも、裾からも。
足元の水溜りはどんどん大きくなっているみたいだった。


「零、おかえり」

陶子は静かに、そして心持ち低いトーンで声を掛けた。
いつもの零なら、にこやかに返って来るはずの返事がない。
随分待って、ようやく一言返ってきた。

「あぁ…」

陶子は言葉を続けた。
あくまで、落ち着いて、さりげなく。

「何かあった?」

「…」

今度はいくら待っても返事はなかった。

「そう…」

無言の返事を汲み取ったように返事をした陶子に、零が突然、下を向いたまま
口を開いた。

「ねぇ、陶子さん…
 抱きしめてもいい?」

陶子の眉がピクリと動いたが、慌てずに穏やかな調子のまま言った。

「だ~めっ」

零は頭をあげて、ムッとした顔を陶子に向けた。
睨む零に、陶子は微笑んだ。

「風邪、引いちゃうよ。
 先にお風呂入っちゃいなさい」

まるで母親のようにそう言うと、陶子は零の手を取って、バスルームの
ほうへと引っ張った。
釈然としないまま、それでも零は、ドアに預けていた身体を重たそうに
引き剥がし、促されるまま動き出した。

  チッ

せめてもの反抗で、小さな舌打ちが、陶子の背後で聞こえた。
だが、陶子は気付かないフリをして歩いた。
零の冷たい手に陶子の体温が伝わる。
振り返りもせず、何も言わずに、零の手を握りしめる手に、彼女はぎゅっと
力を込めた。

「…」

零は少しハッとして、前を歩く陶子の背を見たが、こちらも黙って大人しく
ついて行った。



洗面所まで来たところで、ようやく陶子は零を振り向いた。

「着替え、持ってくるから」

笑顔でそう言ってから零の横を通り過ぎようとしたところで、陶子の足が
ふいに止まった。

零に後ろから抱きすくめられたからだ。
陶子の耳元で零の声が聞こえる。

「陶子さんの言うこと聞くからさ、俺の言うことも聞いてよ」

ふてくされるように言う零の言葉に、陶子は身体の力をフッと抜いて、
ゆっくり零を振り返った。

「…いいよ」

穏やかな笑顔を浮かべて零を見つめる陶子の目に、一瞬泣きそうな零の顔が
映ったが、すぐに上から覆いかぶされるようにして零に抱きしめられた。
雨に冷えた零の身体は冷たく重く、陶子をも哀しい気持ちにさせた。
陶子は零の背中に手を回し、何度かゆっくりと撫でた。

零は、陶子の髪に顔を埋(うず)め、彼女の香りに包まれながら、柔らかい
身体の感触に浸った。
しばらくそうした後で、零は彼女の肩に手をかけ、そっと身体を引き離すと、
少し哀しそうな眼差しを向けてから、その唇に自分の唇を重ねた。
その唇は氷のように冷たく、いつもの零とは違って、荒々しいキスだった。

陶子は零の気の済むように、されるがまま、すべてを受け入れた。

唐突に零の唇が止まり、陶子からスッと身体を離した。
自分のやっていることに嫌気が差したのか、陶子の視線を避けるように
顔を背ける。

それを見て、陶子は、今度は自分から零の頬に手をやり、零の唇に優しく
キスをした。何度も何度も…

零は、陶子の唇を感じながら、その温かさも感じていた。

ほんの少し、零の唇に温かさが戻ったとき、陶子は零に言った。

「お風呂、入りなさいね…」

そして、陶子は静かに零から離れると、洗面所を出ていった。





風呂から上がった零は、陶子が用意してくれた、清潔でよく乾いた着替えに
腕を通した。


心はまだ寒かった。
でも、身体は十分に温まっていた。
アンバランスなまま寝室へと向かう。

ほんの少し、ドアを開けることが躊躇われたが、ドアノブを握る手に力を込め、
静かにドアを開けた。

中に入ると室内は暗く、陶子はベッドの中にいて、こちらに背を向けていた。

「…」

零は無言で、ベッドに腰掛けた。
陶子がモゾモゾと寝返りを打ち、それが振動となって零に伝わってきた。

「お風呂、あがったんだね。
 よく温まった?」

「まぁね…」

陶子の言葉に零は素っ気なく答えた。
すると、陶子は、ベッドから起き上がり、零の肩に掛かっていたタオルを
掴んだ。

「まだ髪が濡れてるじゃない…」

そう言うとゴシゴシと零の髪を拭きだした。

「…」

零は陶子にされるがままにしていた。
やがて、陶子の動きが止まり、そっと、零の背中に彼女の重さが加わった。
陶子が零に寄り添っていた。

「…」

「零。
 まだ外、雨降ってるね」

「…」

何も答えない零に構わず、陶子は呟きを止めなかった。

「でもね、雨は必ず止むから…

 また、降る日が来るかもしれないけど、ひょっとしたら土砂降りかも
 しれないけど、それでも、絶対止むからね」

陶子はそう言うと、零の背中を撫でた。



「陶子さん…」

「ん? なに?」

零が唐突に切り出したので、陶子は顔を少しあげた。

「雨が降ったらさ、俺と一緒に雨宿りしてくれる?」

「…」

零の表情は陶子から見えなかったが、陶子には零が今どんな顔をしているか
判る気がした。

「いいよ。
 雨が止むまで一緒にいるよ」




外の雨足がまた急に強まったのが聞こえた。
この分では、まだまだ当分止みそうもなかった。


降っている雨を止めることなんて、誰もできやしない。
雨に打たれてでも、やらねばならないこともある。
雨に濡れることは、これまでも、そして、これからも避けて通れることじゃ
ないだろう。


(でも、今は、雨宿りさせてよ…)


その日、零は陶子に抱かれるようにして眠った。
だいぶん弱まった雨音と、規則正しく刻まれる零の呼吸を聞きながら、
陶子はそっと零の額にキスを落とす。



  雨が降ったら、一緒に雨宿りしよう。

    明日は…

      明日は、晴れるといいね、零…




fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


妄想の発端となった、是空様の作品をちょっとご紹介しますね。
雨の後」という作品になります。

「雨の夜、激しく打ちひしがれた魔戒騎士が、恋人に暖めてもらう…」
という設定を、零くんと山刀鈴ちゃんというカップリングで書かれた作品に
なります。

その作品とこの妄想は、肝(きも)となる設定と、零くんの話、という点
以外は、実はあまり共通点はないのです。
是空様の作品は、タイトルどおり、雨があがった後の展開があり、
それこそが是空様の書きたかったことなんだろうなと思うものです。

素敵なので、もし、まだご覧になっていなければぜひ!


ただし、この作品は、是空様の書かれている、零×鈴シリーズの35番目の
作品となります。
ご本人様は、「零鈴だし、同棲してるし、シリーズの途中の作品だし」と
心配されています。
もし「零鈴」「同棲中」「シリーズ途中」に違和感など覚えられる方が
いましたら、ご訪問はお控えくださいませ。
是空様にご迷惑になるようなことが起こるのだけは避けたいので、
よろしくお願いいたします。

(この作品のみご覧になっても大丈夫かと思いますが、シリーズの中の
 ひとつの作品ですので、最初から読まれたほうが、
「あぁ、この鈴ちゃんだからこそ零くんが救われるんだ」
 ということが響いてくると思います♥)
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ガクブル
selfish様ファンの方、こんばんは。
selfish様が素敵な小説をお書きになったので、それは素敵とばかりに承諾しました、元になったとは胸を張って言えないへたれ作文を書いた是空です。
鋼カオ好きな皆様に零鈴などという妄想捏造カプを書いてる私が出しゃばってすみません!と今、ガクブルです。

その小説、もうすっかり忘れてましたが、最後の部分「いってらっしゃい」が一番言いたかったのを思い出しました。
人間それぞれ違うフィールドで生きてる、恋人でも夫婦でも家族でも。で、その世界で疲れた時癒してくれたり励ましてくれたりするのが愛する人だと思ってます。だから、最後「いってらっしゃい」同士で返してます。「いってきます」じゃないとこがミソ。お互いがお互いを支え合う、そんな2人を書きたかったんでした。

もし零鈴キモ!とかでなければ暇つぶしにご覧ください。こちらの小説の何分の一かは楽しめるかもしれません。
sel様、素敵な作品ありがとうございました。
P.S.陶子さんって言うのは年上なのかな?
是空 2013/07/29(Mon)17:23:06 編集
Re:ガクブル
是空様、フォローいただきすいません、というか、ありがとうございます!
是空様の作品を読んで刺激されたのは紛れもない事実なのですが、似たようなところができるだけないようにしたつもりです。
というのも、そうしないと、是空様の素敵な作品に比べて、自分の妄想の出来があまりにも… と落ち込むこと必至だから… (へへへ)
それぞれ別モノの作品として、読み手のみなさんにお楽しみいただけるといいなぁと思っています。

「いってらっしゃい」を言い合う零くんと鈴ちゃんがね、うん、いいですよねぇ~
最初読んだときは、どっちか一方は「いってきます」じゃないのかな、と思ったのですが、どちらも「いってらっしゃい」でしたね。
鈴ちゃんも仕事をちゃんとしているから、零くんはそれをきちんと認めてあげて、送り出してあげるんだな~  そんな零くんがとてもステキだぁぁぁ! って思いましたよ。
零くんは、パートナーとしてこんなに出来た男なんだから、公式でもぜひしあわせになってほしいもんです。

そういえば…
是空様に「こんなの書いたのですが」と読んでもらったときは、零くんは「陶子」と呼び捨てにしてましたね。
すいません、公開間際に「さん」づけに直しちゃいました。
確かに、「年上」を想定してます。(鈴ちゃんが年下だから、ってわけではないんですが)
そのことがさりげなく伝わるといいな、と思って変更したので、伝わってよかったデス!
【2013/07/29 20:45】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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