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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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最近の’お礼’

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哀しい証(あかし)(1)

忍者ブログがなんだかスゴく混みあっていて、妄想を書くことも、コメントへの
お礼を書くこともできなくて、あまりの手持ち無沙汰に見始めてしまった
MAKAISENKIの第22、23、24話。
以前から気になっていたこと、書いてみようかな… という気になりました。

スキマなんかの妄想は、需要がないのは解っているんです。
オチもないし、ね。
それでもいい、という方はど~ぞ!



拍手[19回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

空中高く舞い上がった冴島邸は、もはや原型をとどめていなかった。

鋼牙とシグマとの闘いが激化して、ふたりが傷ついていくのと共鳴するように、
屋敷もまた崩壊のスピードを加速させていく。

鋼牙とシグマは、今、カオルの描いた絵がかつて飾られていた壁を足場にして
睨み合っている。

レオがシグマに刃(やいば)を向けることを自分の右腕で止めた鋼牙に、
シグマは、

「甘いなっ
 弟が兄を斬り殺す… それが忍びないとでも思ったのかっ」

と蔑むように言葉を吐いた。
だが、鋼牙は、決して、シグマの言うようなセンチメンタルな憐憫から
レオを止めたわけではなかった。
鋼牙は叫んだ。

「違う!
 おまえを斬るのは俺の定めだ!
 これは、かつての俺との約束なんだっ!」





鋼牙の背中を見る位置に漂う、折れた柱にしがみついていたあたしは、
その鋼牙の言葉に涙が溢れた。

(鋼牙…)

今、鋼牙が対峙しているのは、闇に堕ちてしまった只の魔戒法師では
なかった。
鋼牙にとって大事な大事な…

あたしの脳裏に、ふと、昼間のことが甦ってきた。




鋼牙は、心を奪われ、イデアとかいうものと一体化してしまい、閉じ込められて
いるのだと聞かされた。
零くんや邪美さん達に手を貸してもらって、あたし達が、ようやく鋼牙の心を
取り戻したとき、すでに、イデアは復活の兆しを見せていた。
鋼牙は、それを阻止するため、すぐにシグマを追うことになった。

「カオルを頼む」

邪美と烈花に険しい顔を向けていた鋼牙が、ふと、あたしに顔を向けた。

「…」

言葉は何もない。
だけど、シグマを必ず食い止めるという、強い意思を宿したその瞳に、
一瞬、微かにだったが、あたしにだけ向けられた想いが確かに見えた。
だから、あたしも精一杯の想いを鋼牙に返す。無言のままで…

(鋼牙…)

次の瞬間。
鋼牙はあたしに背を向けると、少しの躊躇もなく、目の前に開いた、底の
知れない深く暗い穴へと身を投じていった。

鋼牙を見送った余韻に浸る間もなく、ゴンザさんたちと安全な場所へと
移動する。
邪美さんに導かれて走りながら、厳しい闘いの地に赴く鋼牙へと必死に
祈っていた。


(お願い、鋼牙、みんなを守って…

 …そして、必ず無事に帰ってきて)





鋼牙の無事を願って待っている間、ゴンザさんや邪美さんから、これまでの
ことをいろいろと聞かされた。

破滅の刻印のこと。
鋼牙だけでなく、零くんたちすべての魔戒騎士が命の危険にあったこと。
鋼牙のお陰で、破滅の刻印は発動されずに消滅したこと。
今は、イデアの復活を阻止するために闘っていること。
イデアとは、人間を糧にホラーを狩るという恐ろしいものであること。
そして、その復活を画策しているのが、レオくんの双子のお兄さんである
ことも…

一度にたくさんのことを聞いたあたしは、クラクラとめまいのようなものを
感じた。

(あたしが、絵本の制作に没頭している間に、鋼牙はこんな恐ろしいことに
 巻き込まれていたなんて…)

深刻な顔で黙り込むあたしを心配して、ゴンザさんが声をかけてくれた。

「大丈夫ですか、カオル様?」

「うん…」

うなずいてはみたものの、引っ掛かりを感じていたことが、ついポロリと
口からこぼれた。

「でも…
 どうして鋼牙は、あたしに何も教えてくれなかったんだろう?
 あたしにも、分けてほしかったな…」

言ってしまってから、あたしは慌てて打ち消した。

「あっ、ごめんなさい。
 今頃こんなこと言ってもどうしようもないのに、あたしったら」

なんとか無理矢理笑顔を作ろうとしてみた。
でも、それはものの見事に失敗していて、ゴンザさんから見れば、泣きそうな
顔にしか見えなかったようだった。

「…」

ゴンザさんの顔が哀しそうに歪んでいた。
気まずいまま、ふたりして黙り込んだときだった。

「カオル」

邪美さんが声をかけてきた。
あたしはハッとして邪美さんを見た。
邪美さんは、こちらを見ずに、油断なく周囲に目を向けながら言った。

「あんたも鋼牙のことはよく知っているだろう?
 あいつは、自分から話すようなやつじゃないってさ…」

邪美さんはあたしを責めるふうでもなく、そんなことを言ってから、ちらっと
こちらを見て笑った。

(そんなことは解ってる。 解ってるけど…)

心に刺さった小さな刺(トゲ)は、ふとしたはずみにズキズキと痛んでくる
のだからしょうがない。

「でも…」

反論しようとするあたしを、邪美さんは手で制して続けた。
邪美さんの視線は、元のように周囲へと向けられたままで。

「まぁ、聞きな。

 あいつ、自分の胸の破滅の刻印のことは、誰にも喋らなかったみたいだよ。
 そう、そこにいるゴンザにもね」

あたしは驚いて、ゴンザさんを振り返った。
すると、ゴンザさんは、無言でうなずき返してくれた。

「わたくしが鋼牙様から破滅の刻印について聞かされたのは、カオル様が
 お知りになった後のことでございます」

鋼牙は、あたしが知ったあの晩、屋敷に戻ってから、初めてゴンザに
打ち明けたのだそうだ。

「あいつは、あいつなりの考えで、あんたやゴンザの笑顔を守りたかったん
 だろうねぇ。

 いや、鋼牙の本心を聞いたわけじゃないよ。
 これは、ただのあたしの推測だけどね…」

その言葉に、嬉しさも確かに感じたけれど、自分に頼ってはもらえないのか
という寂しさも根強く残ったのも事実だった。
なかなか表情の晴れないあたしに、邪美さんは言った。

「ふふふ、それでもまだすっきりとはいかないかい?
 それじゃあ、こうしちゃどうだい?」

邪美さんは意味ありげな笑いを浮かべて、あたしに顔をぐいっと近づけた。

「この闘いが終わったら、鋼牙のやつをとっちめてやりな。
 なあに、遠慮はいらない。
 こんな大事なことを内緒にしてるなんて、あたしを馬鹿にしてるのか
 ってね。

 あたしも今回のことに関しちゃ、カオル、あんたとおんなじ気分なんだよ。

 心配させまいという男の気遣いは、かえって女を傷つけてるってこと、
 わかっちゃいないんだから。
 中途半端な秘密なんてやめてほしいよ、まったく。
 魔戒騎士っていうヤツは、ほんとに、どいつもこいつも…」

なんとなくだったが、邪美さんの怒りの対象は鋼牙ではない、別の誰かの
ように感じられた。

(邪美さんはいったい誰に対して言っているんだろう?)

怒りながらブツブツ呟いていた邪美さんを、あたしが不思議そうに見ていると、
邪美さんはそれに気付いて照れ臭そうに笑った。
その様子があんまり可愛らしかったので、邪美さんにつられて、あたしも
笑った。

「ちょっとは元気が出たかい?

 とにかく、グダグダ考えるのはあとにしようか。

 鋼牙たちは、今頃、必死になって闘ってるよ。
 だから、あたしたちも、自分にできる限りのことをやろう。 いいね?」

邪美さんは笑っていた口元をきりっと引き締めて、そこにいるみんなを
ぐるっと見渡した。
あたしは、それに応えるようにうなずき、ゴンザさんたちとも互いに
顔を見合わせて、力強くうなずき合った。




それからしばらくの間、いろいろなことが目まぐるしく起こった。

突如現れた、からくり人形のような敵がたくさん襲ってきたかと思えば、
それ以上に多くの魔戒法師たちが集まってきた。
そして、その法師たちが呼吸を合わせて、鋼牙の消えていった穴に向かって
術を放ち続けた。

そうこうするうちに、たくさんの騎士たちも集まってきて、次々と穴の
中へと消えていく。
術を放ち続けていた法師たちは、少しずつ疲労していっているのが判ったが、
この騎士たちの登場によって、再び力をみなぎらせたみたいだった。
残る力を振り絞り、懸命に術を繰り出す法師たち。

何もできないあたしは、ただ、歯がゆい想いをかみしめることしかできなかった。

やがて、何か手紙のようなものを邪美さんが受け取ると、邪美さんは大きな
声を張り上げて、その場にいる法師たちに指示を出した。
邪美さんは、神経という神経を研ぎ澄ませて穴の中から伝わってくる気配に
集中していた。

「今だっ」

邪美さんの号令が飛び、その場にいた法師たちは、法師の命とも言える魔導筆を、
一斉に穴の中へと投げ入れた。

そのとき、ゴンザさんがあたしのカバンを持ってきた。

(筆が…)

あたしの筆が金色に輝いていたのだった。
それが何を意味するのかは解らなかった。
ただ、あたしは、その金色に輝く筆に、精一杯の想いを込めて、法師たちの
後から筆を投げ入れた。

(届いて! あたしの想い!)



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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