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きんのまなざし ぎんのささやき

哀しい証(あかし)(2)

一言で言えば、

「カオルちゃんは、絶対、XXXを知っていたと思う!」

ということが書きたかったのです。
書いているうちに、いつものごとく、あっちフラフラ、こっちフラフラして
ちょっと長くなりました。
寄り道は楽しいよね? (と正当化してみる… 笑)


あっ、最後に一言!

「この妄想に、オチはないのです!」

それをお忘れなく。




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

いったいどのくらい経っただろう?
呼吸をするのも躊躇われるくらいの緊迫した時間。
あたしも、ゴンザさんも、そして、ここにいる魔戒法師の誰もが、目の前にある
大きな穴の中を食い入るように見つめていた。
筆を投げ入れてしまったのでは、法師たちも何も為す術(すべ)がない。

「シグマの野望が遂げられたにせよ、鋼牙たちがそれを阻止できたにせよ、
 もうそろそろ何か動きがあってもいいはずだが」

と、あたしの近くにいた魔戒法師が呟いた。
だが、それに応える者はいなかった。

ジリジリとした時が過ぎていった。

すると、何の前触れもなく、穴の中からひとり、またひとりと騎士が
飛び出してきた。
法師たちの間に降り立った騎士たちを、みんなが固唾を飲んで見守る。

騎士の周りにいた法師たちから、次々と歓声が沸き起こる。

どうやらシグマの野望を食い止めることができたようだった。
騎士どうし、法師どうし、そして騎士と法師が肩を叩き、抱き合い、
ともに勝利を喜びあっていた。


穴の中から次々と戻ってくる騎士たちと、それを迎える法師たちとが
ひしめき合う中、あたしは必死に鋼牙の姿を探した。

(鋼牙… どこなの、鋼牙…)

「カ、カオル様…」

後ろのほうからゴンザさんの慌てるような声が聞こえたが、それに構わず、
騎士や法師の間をぶつかりながら、あたしは闇雲に前へと突き進んでいた。
心の中でゴンザさんに謝りながら…


少し進んでは、キョロキョロと辺りを見回してみるが、黒い装束をまとった
人ばかりで、鋼牙の姿はどこにもない。

すると、突然、前方で声にならないようなどよめきが起こったかと思うと、
一斉に周囲の人たちが動き出した。
あたしは何事かと思いながらも、流されるままに人の波に飲まれた。

しばらくするとその動きが止まったので、ホッとしながら周りを見た。
すると、みんなが、同じ方向をじっと見ていることに気付いた。
あたしも、自然にその方向を伸び上がるようにして見てみた。
どうやら数人の人たちが、こちらのほうに向かって歩いてきているようだった。
よく見えないので、何度もぴょんぴょんとその場で跳ねてみる。

(鋼牙!)

大勢の人たちが脇に下がってできた道を、鋼牙を中心として、零くんや
レオくん、そして、あたしの知らない騎士たちも何人か…

(あっ、邪美さんたちもいる!)

たまに言葉を交わしながら、疲労感の中にもどこか清々しさが感じられる、
晴れやかな顔がそこにはあった。




「鋼牙、もうシグマとの闘いは終わったんだ。
 カオルに、もう隠し事はしなくていいんじゃないのかい?
 これからは、なんだってカオルに話しておやりよ。
 カオルもきっとそれを望んでる」

「あぁ、判っている」

『邪美、おまえさんに言われなくても、鋼牙はきっとそうするさ』

「ほんとかい?
 ほんとにそうだったら、あたしももう何も言わないけどね…

 まぁ、なんだっていいさ。
 とにかく、カオルに早く会ってやりなよ」




鋼牙と邪美さん達が、そんな会話をしているとは知らずに、あたしは、
何重にもなっている人垣の中で、少しでも前に出ようと頑張っていた。
だけど、鋼牙のもとに辿りつくのは到底できそうにはないくらい、大勢の
人がいて身動きが取れなかった。

(無理か…)

気落ちして諦めかけたとき、零くんがこちらに気が付いた。
鋼牙の肩に手をかけ、こちらを指差して、鋼牙の耳元で何かを話していた。

(あっ…)

鋼牙と目が合った!
嬉しいはずなのに、とてつもなく泣きたい気持ちになる。

鋼牙が仲間から一人外れ、こちらに向かって歩いてくる。
潮が引いていくように、鋼牙の前に道ができる。

鋼牙があたしの目の前で立ち止まり、優しい眼差しで見つめた。
でも、それはほんとにわずかな間で、鋼牙はすぐに身体を脇に引いた。
無言のうちに、こっちに来いと促しているみたいだった。

法師たちの注目を集める中、あたしは、視線を気にしながら俯きがちに
歩き出した。
すると、鋼牙が軽く手を背中に回し、庇うように一緒に歩いてくれた。

(鋼牙…)

嬉しくって誇らしくって、あたしの顔は自然にほころんでいた。



零くんたちと合流すると、みんなニコニコとあたしを迎えてくれた。

「よかった、みんな無事で…」

それだけを言うのが精一杯だった。
そのとき、ゴンザさんも合流して来て、改めてみんなが無事だったことを
喜び合った。



「カオル。
 俺は、元老院に寄ってから戻るから、ゴンザと一緒に先に帰っていて
 くれ」

別れ際、鋼牙があたしにこう言った。

「うん、わかった。
 ゴンザさんとふたりで待っているね」

鋼牙は小さくうなずくと、くるりと向きを変えて歩き出そうとし。
が、すぐに足を止めた。

「カオル…」

あたしを振り返った鋼牙が、あたしをまっすぐに見て言った。

「帰ったら話がある」

「えっ? …あ、うん」

(話ってなんだろう…)

そう思いながら、あたしは鋼牙にうなずいた。
鋼牙は、まだ何か言いたいことがあるようで、でも言い出すことに迷っている
ような素振りを見せた。

「なに?」

あたしは思い切って聞いてみた。
それで鋼牙は踏ん切りがついたのか、ようやく切り出した。

「俺の幼いときの友の話のことを覚えているか?」

話の内容がとても意外なことだったので、あたしは少しばかり驚いた。

「あ、あぁ、その胸のお守りの?」

あたしは、鋼牙の左胸を指差して聞いた。

「あぁ、そうだ…」

あたしは鋼牙の次の言葉を待っていたが、鋼牙は何も言わず、あたしの頬に
手を当てた。
すると、カチカチと微妙な振動が耳のそばに感じられた。

(ザルバがまばたきでもしているのかしら?)

すると、その振動が、はっきりとした音となって伝わってきた。

「カオル。
 おまえにだけ言っておきたいことがある」

(えっ、何?
 何が聞こえているの?)

目の前の鋼牙は口など開いていないというのに、鋼牙の声が聞こえるのだ。
不思議に思いながらも、その音に集中する。
すると、

「あのムラサキが生きていたんだ…
 死んだと思っていた、あのムラサキが。

 ムラサキが… シグマだった」

「えっ?」

あたしが驚いて鋼牙を見ると、鋼牙は穏やかな顔をしていたが、どこか
哀しさの漂った表情をしていた。
鋼牙に確かめようと、あたしが口を開きかけたとき、

「気をつけて帰れよ」

それだけを言って、鋼牙はあたしの元を去っていった。




「おまえを斬るのは俺の定めだ!
 これは、かつての俺との約束なんだっ!」

あたしは、鋼牙の言葉に涙が溢れた。

(鋼牙…)

今、鋼牙が対峙しているのは、闇に堕ちてしまった只の魔戒法師では
なかった。
鋼牙にとって大事な大事な友。


シグマがムラサキだったと、あのとき、どうして鋼牙があたしに告げたのかは
今も解らない。

でも、鋼牙が大事な友との間で交わした約束を、何がなんでも果たそうと
している姿を、あたしは最後まで見届けなきゃいけない。
そんな気がした。

たとえ、憎しみだけを遮二無二ぶつけてくるような相手だったとしても、
友として、真正面で受け止める鋼牙の姿から目をそらしてはいけない。
どんなに鋼牙が傷ついても、だ。




友を斬ることが、友情の証だなんて…
哀しいね… 鋼牙…



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


すいません。
宣言どおり、オチはないです。

はい、みなさん、もうお気づきでしょう。
MAKAISENKI 第24話「時代」で最後のシグマとの死闘での

「おまえを斬るのは俺の定めだ!
 これは、かつての俺との約束なんだっ!」

という鋼牙さんの台詞。
この後、カオルちゃんのアップになり、涙がポロリ… となるのですが、
その表情を見ていると、どうしても、

「カオルちゃんは、シグマがムラサキだってことを知っていたと思う!」

のです。

鋼牙が傷ついていくから、それがつらくて泣いているわけでも、
鋼牙が人を斬る、ということが悲しくて泣いているわけでもないと
思うんですが、みなさんはどうでしょう?


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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