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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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たまにはこんなものも(2)

異空間でまったりしている零。
たまにはこういうのもいいっかな~ なんて。

ところが…
そこに、激マズの真っ黒なキャンディーが!

このキャンディーの正体は!
零の運命や、いかに?

(いやいや、そんな大層なもんじゃないwww)

拍手[26回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

この真っ黒な、とてつもなく不味いキャンディーは、カオルにもらったもの
だった。

昨日のことだ。
借りていたものを返しに鋼牙の住む北の屋敷を尋ねたとき、帰り際に、
渡されたことを、零は思い出した。


「これね、とってもおいしいんだよ!
 だから、零くんにもお裾分けね」

「へぇ~
 何、これ? …飴?」

「うん。
 フィンランド土産にもらったんだけどね。
 あたし、これ、好きなの~♡」

「え、じゃ、もらっちゃ悪いじゃん」

そう言って返そうとする零に、カオルは手を振って、

「あ、大丈夫!
 あたし、いっぱいもらったから気にしないで」

「そう?
 じゃ、遠慮しないでもらっとくよ。
 サンキュね、カオルちゃん」



(…そうそう、そんなことがあったっけ)

零の取り戻した記憶は、それだけでなく、そこから芋づる式に、
すべてを思い出していった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ここは、町外れの古びた倉庫。

真夜中を過ぎたこの時間に、その倉庫に入っていく人影があった。
こんな夜更けに、というだけでも奇妙に思うことだが、その人物の風体が
また、奇異なものだった。
30代と思われるその男の身体は、服の上から見ただけでも ’鍛えられて
いる’ ことが一目瞭然だったが、その身体を上質なウール生地を使った
オーダーメードのスーツが包んでいる。
手首には高級な腕時計、かけている眼鏡もブランド品という、こんな
場所にはおよそそぐわない身なりをした男。
そんなスーツ男が、なんの躊躇もなく、錆の目立つ鉄扉の向こうに
消えていった。



「そろそろおいしくなった頃か、な?」

鉄扉がバタンと閉められると、スーツ男の眼鏡の奥の鋭い目が白く濁り、
黒く細くとがった舌で舌なめずりをした。

スーツ男は真っ直ぐ奥へと進み、ある作業台の前まで来て立ち止まった。
その作業台の上には、人が寝かされていた。

スーツ男の正体はホラー。
特殊な媚薬を吸い込ませた人間を、この倉庫に連れ込み、’熟成’ させて
から喰らっていた。

’熟成’ の方法は、こうだ。

媚薬をかがせた人間には、しあわせな夢を見てもらう。
すべてが満たされ、身も心もとろけるほどの…
そうやって ’熟成’ された人間は、このホラーにとっても舌をとろけ
させる程の美味だった。
まぁ、ごく稀に、その至福の状態に耐え切れず、発狂してしまう者も
中にはいたが、そういう人間の味は、スパイスの効いた別の美味さを
醸し出した。
つまり、どっちに転んでも、このホラーにとってご馳走であることに
変わりなく、どちらを味わえるかが楽しみのひとつでもあった。

スーツ男は作業台に寝かされている男を見下ろした。
寝かされているのは鈴邑零だ。



『ゼロ! ゼロ!
 起きてちょうだい!』

零の左手のグローブからシルヴァが必死に呼びかけている。
その様子を、ホラーは目を細めて楽しんでいるようだった。

「無駄だね。
 その男には、おまえの声は届かない。
 夢の中では、剣もなく、魔導具もなく、自分が魔戒騎士であったことも
 知りうることはないのさ。

 何もかもから解き放たれて、こいつは今、しあわせの絶頂を味わってる
 んだよ」

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたスーツ男は、すでに、半分くらい
ホラーの顔が現れていた。


「おや?
 こいつ、いつの間に飴玉なんか咥(くわ)えてやがる。
 甘~い夢でも見てるんだろうな。
 クックック、こいつは喰らうのが楽しみだ」

ポタポタと落ちる涎が、スーツ男の足元に黒いシミを作っていく。
鋭い長い爪を持ち上げて、今にも零に飛びかかろうと近づいてくる。

『ゼロ! ゼロ!
 起きなさい! ゼロ!』

シルヴァが絶叫にも近い声で叫んだ。

「フンッ
 どんなに叫んだところで、こいつは再び目覚めることはないだろうよ」

スーツ男はあざけるように鼻を鳴らした。




そのとき、

「はいはい。
 そんな大きな声を出さなくても聞こえてるよ、シルヴァ」

零の優しく落ち着いた声が響いた。

「!」
『ゼロ!』

スーツ男は、驚きのあまり歩みを止めた。

「ねぇ、そのヨダレ。
 汚いから、それ以上近づかないでくれる?」

そう涼しい顔で言いながら、零は作業台の上に起き上がった。
優しげな口調とは裏腹に、スーツ男を睨む目は紛れもなく魔戒騎士の目だった。

「ば、ばかな…」

そう言いながら、スーツ男はじりじりと後じさりした。
そして、スーツを引き裂くと、ホラーの姿に戻り、蝙蝠の羽にも似た翼を
ばたつかせて飛び立とうとした。

「させるかっ」

言うが早いか、零は二振りの剣を取り出して作業台の上に立ち上がると、
頭上に円を描いて鎧を召喚した。
そして、剣どうしを連結させると、ブーメランの要領で、逃げるホラーの
背中目がけて投げつけた。
絶狼の狙いどおり、剣はホラーの片翼をそぎ落とし、数メートルの高さから
ホラーはぐしゃりと床に叩きつけられた。

「ギギェ~」

耳障りな声をあげたホラーは、背を向けて逃げるより、闘ったほうがいいと
思ったのか、絶狼に向かって飛びかかってきた。

だが、絶狼は一向に動じず、手元に戻って来た剣を両手に持つと、両手を
広げて、どこからでもかかって来いと言わんばかりに、ホラーの攻撃を
待った。

あともう少しで、ホラーが剣の間合いに入るというときに、絶狼の目の前に
飛び込んできたものがあった。
ホラーのシッポだ。
鞭のようにしなやかに、音もなく絶狼の顔面にのびてきたのだ。

「おっと…」

絶狼は左手の剣でそれを弾くと、ホラーの爪がすぐそこにまで近づいて
いた。
どうやらホラーの狙いは最初からこっちのようで、シッポは攻撃から
絶狼の目をそらすための動きだったようだ。

もちろん、絶狼に油断はなく、ホラーの爪を右手の剣で受け止めると、
左手の剣を下から上に閃かせた。
絶狼の剣は、ホラーの左わき腹から右の肩にかけて一直線に走り抜け、
どす黒い血飛沫が飛んだ。
絶狼の鎧に振りかかったホラーの血は、ジュウッという音と共に、
一瞬のうちに蒸発した。

「ギギーーーッ!」

絶狼の足元でのたうち回るホラーを見下ろし、絶狼は、両手の剣を
逆手に持ち直した。
そして、

「いい夢見せてくれてありがとね」

と言うと、その剣を一気に振り下ろして、ホラーにとどめを刺した。
断末魔を残して、ホラーがサラサラと霧散していく。



それを見届けた後、零は鎧を魔界に返した。

「やれやれ…」

零は肩をぐるぐる回しながら、首を左右にコキコキと傾けた。
どのくらい寝ていたのかわからないが、久しぶりに動いた感じなので、
身体がまだ本調子ではないみたいだった。

『ゼロ。 大丈夫?

 さすがに今回はヒヤヒヤしたわよ。
 あなた、一体いつから気がついてたの?』

ほっとしながらも、少し非難めいた口調でシルヴァが尋ねた。

「ごめん、ごめん。
 でも、ほんと、ついさっき正気を取り戻したばかりだよ」

シルヴァにニコニコと笑いかけながら、そう言った零は、ふと、足元に
転がっているものを拾い上げた。

「これがなかったら、俺も目覚めることもなかったよ」

そう言うと、シルヴァに ’それ’ を見せた。

『それって、キャンディーでしょ?
 あぁ、昨日、カオルにもらったヤツね。

 でも、なんだか、とっても怪しげな気配がするわ』

眉をしかめながら、シルヴァが言った。

「ある意味、当たってるかも。
 これは、相当な破壊力を持った、すごいモンなんだよ」

そう言うと、零はそのキャンディーをしげしげと見つめた。

『それ、どういうこと?』

話の見えないシルヴァが説明を求めたが、零は、

「ふふふ~ ♪
 とにかく、これはすごいんだよ。
 さすが、あのカオルちゃんが好きなだけある、って感じかな?

 うん、たまにはこういうお菓子もいいかもね」

と、ひとりで納得しているようだった。
でも、すぐに、

「ダメダメ。
 やっぱり、お菓子は美味しくなくちゃ!

 さて、と。
 さっさと帰って、なんか、甘くておいしいもんでも食べようっ と…」

と、無邪気な笑顔を見せ、黒いコートの裾を翻して、倉庫を後にした。

誰もいなくなった倉庫の作業台の上には、あの黒いキャンディーが
ひとつ残されていた。





後日。

「ね、零くん。
 あのキャンディー食べてみた?
 どうだった?」

論外に、おいしかったでしょ? という意味を含んだ質問をするカオルは、
零の色よい返事を期待して、目をキラキラさせていた。
そんなカオルを前にして、零は、一瞬、答えに詰まった。

「あ… うん、そうだね。
 おいしいかどうかはなんというか…

 でも、間違いなく、魔戒騎士の命を救うくらいのインパクトはあったよ!」

そう言うと、愛嬌たっぷりにウィンクしてみせた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


激マズキャンディー物語。
いかがでしたでしょうか?

このキャンディー、実は、実在するのです。

ご存じの方はご存じですが(←当たり前か!)、フィンランドのお菓子で
有名な ’サルミアッキ’ !
その味のロリ〇ップがあるのです。

selfish は、ロリ〇ップは食べたことないのですが、グミ(かな?)は
食べたことがあります。
これはもう、なんとも形容できない味です。

このサルミアッキ味の飴を零くんに食べさせることにしたのは、まさに
書いている途中での思いつきです。
最初は、レモンとかアセロラとかの酸っぱい飴で… と思ってました。

いや~ サルミアッキのほうが、絶対によかった! (自画自賛~)
食べたことのある方しか賛同いただけないかもしれませんが、ね。
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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