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ちいさきもの(3)
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子犬が冴島家では長く生きられないというのは、どういうことなのだろう。
心に広がる不安を潰そうとするかのように、カオルは無意識に両手を胸の前で握りしめた。
鋼牙は雷牙に視線を戻した。
「知っていると思うが… 魔戒騎士はホラーを斬ることでその邪気を少しずつ身体に溜めてしまう。
その邪気を、動物は敏感に感じ取ってしまうんだ。
特に、身体の弱い子犬にとっては、それが命を縮めることにさえなる。
つまり、この家では… いや、俺がそばにいたのでは、雷牙のせっかくの好意が裏目になってしまう…」
淡々とそう話す鋼牙に、カオルは切なそうな表情を浮かべたが、すぐに反論した。
「でも… それなら雷牙だって同じじゃないの?
あの子は抵抗力の弱い赤ん坊のときだって、なんともなかったわ。
だから、子犬だって大丈夫かもしれないじゃない?」
すると、鋼牙はふっと笑みを浮かべるような温かみを顔に宿して
「雷牙は俺の子だ。
魔戒騎士の血を引いている」
と答えた。
俺の子だ、と断言したときの愛情と自信に溢れる鋼牙の姿は、これが普段だったならきっとうっとりとしてしまうに違いなかったが、今はそうも言ってられない。
カオルは、なおも追いすがる。
「じゃあ、じゃあ、あたしはどうなの?
魔戒騎士の血なんか少しも流れてないわ!
でも、全然平気よ?」
ところが、そんなことは想定内だったかのように鋼牙は答える。
「カオル…
ホラーは人間の邪心から生まれる。
人として生まれ、人として生きてきたなら、どんな者でも多少なりとも邪(よこしま)なものに晒されて生きてきたはずだ。
人間であれば多かれ少なかれ、それに対する抗体が備わっていることになる」
鋼牙のよどみない答えに、ついにはカオルも黙るしかなかった。
それを察した鋼牙は、優しい目をカオルに向けた。
「命を… たとえそれがどんなに小さな命であっても大切に思う気持ちは大事だ。
そういった気持ちが幼い雷牙にちゃんと育っていることを、俺は嬉しく思っている。
だが、この家で飼えば、子犬の命は間違いなく削られることになる。
ただ…」
鋼牙の声音が少し低くなり、目つきも少し厳しくなった。
「死を体験するのにこの子はまだ幼過ぎる、などと言うつもりはない。
小さくても雷牙は魔戒騎士の子なんだ。
たとえどんなに受け入れがたくても、死というものは受け入れてほしい。
だが、その死の原因が、自分の父親にあるのだということは、雷牙にとって耐え難いだろう?」
雷牙の寝顔を見つめる鋼牙。
その横顔は、カオルの目に寂しげに映った。
カオルは鋼牙の腕にそっと触れた。
見つめ合うふたり。
ベッドサイドの小さな光が、お互いの顔に濃い陰影を作っている。
様々な想いがよぎるのだろう。相手にかける言葉がなかなか見つからない。
しばらく経ってから、ようやくカオルが口を開いた。
その表情は、ふんわりと柔らかく、包み込むような笑みを浮かべていた。
「鋼牙…
だったら、そのことを雷牙に話してあげればいいんじゃない?
子犬をうちで飼えないと言ったのは、鋼牙の優しさからなんだと知ったら…
そしたら、きっとこの子だってわかってくれるはずよ」
それに対して、鋼牙は素直に戸惑いを見せた。
「俺は…
俺ではうまく説明する自信がない…」
少しふてくされたような情けない感じのする鋼牙を見て、カオルは可笑しくなるとともに嬉しさを覚える。
魔戒騎士としての鋼牙は黄金騎士、牙狼の系譜を継ぐ者として、何事にも動じず、自信と威厳からくるオーラのようなものを身にまとっていた。
だが、今、カオルの目の前にいる自信無げな彼の姿は、恐らく、この世界の中でも自分だけしかいないのではないだろうか?
そんなことを思い乍ら、カオルは鋼牙にひとつの提案をした。
「じゃあ、明日、あたしから雷牙に話してもいい?」
それを聞いて、鋼牙はホッとした表情を浮かべた。
「ああ。頼む…」
翌日になると、町のあちこちへと足を運ぶカオルと雷牙の姿があった。
それは、子犬の飼い主を見つけるためであった。
子犬を家では飼えない事情を、鋼牙に代わって雷牙に話して聞かせたカオルが、「飼えない代わりにできること」として、飼い主を見つけてあげようと提案したのだ。
「やっぱりうちで飼いたい」とごねるかと思われたが、カオルがうまく話を持っていったこともあり、思いのほかすんなりと雷牙は納得したようだった。
飼い主を捜している間に子犬をどうするかということが問題だったが、ゴンザに相談してみたところ、
「それはわたくしめにお任せください」
と自信満々に言ってくれた。
なんでも、鋼牙の幼い頃に似たようなことがあったらしい。
そのときは、口数の少ない父親が「駄目だ!」と言ったきり取りつく島もない状態だったらしく、それを取り成してくれる母親がいなかったので、鋼牙はかなり不満を持ちながらもじっと我慢していたという。
ゴンザはそんな鋼牙が不憫でたまらなかったが、「放っておけ」という大河の意向には、執事として従わないわけにはいかなかった。
あれから何十年かの時を経て、また同じようなことに遭遇したわけだが、今度は手を貸してくれと言われたのだ。
今度こそは、とゴンザも張り切らざるを得ない。
まずは、病気の検査や予防注射などの世話をしてくれる動物病院を探し出した。
魔戒騎士は人間社会に深く関わろうとしないものだが、その執事はそれなりにコネクションを持っているものだ。
評判のいい獣医をあっという間に見つけ出して、飼い主が見つかるまで子犬を預かってもらえるよう、うまく話をつけてきた。
もちろん、その間の費用はそれなりにかかるが、それは雷牙がおやつを半分にして我慢する、ということで折り合いをつけた。
何もそんなことをしなくても、冴島家には犬の費用くらい出せないわけではなかったが、雷牙にとってもよい経験だからとカオルが言い、結果的にそういうことになった。
これで、子犬が飢えたり凍えたりという心配はなくなった。
それでも、1日でも早く飼い主を見つけてあげたいと言って、雷牙は、保育園の友だちや先生、それにカオルの知り合いなど、とにかく考えられるいろんな人のところに行っては、片っ端から子犬を飼ってもらえないかとお願いしてまわった。
そして、とうとう、飼ってもいいと言う人が現れた。
以前、カオルが仕事で世話になった画廊のオーナーで、最近、飼い犬を亡くしたのだという。
もう犬は飼わないでおこうかと夫婦で話し合っていたのだが、一生懸命な雷牙の熱意に打たれ、子犬は優しい初老の夫婦の家で暮らすことが決まった。
子犬がもらわれていくその日。
新しい飼い主となる画廊のオーナーの腕に抱かれた子犬の頭を撫でながら、雷牙は、
「よかったね。
しあわせになるんだぞ」
と笑顔を見せていたが、
「じゃあね、バイバイ」
と言って、カオルに手を引かれて帰るときには、途端に顔がクシャクシャになった。
幼いながらに泣くのを必死にこらえ、我慢しているのだ。
そんな息子の様子を覗き見ながら、カオルは思った。
(ああ…
小さくても、この子も守りし者なんだわ)
まだまだ剣を振るう力も技もないけれど、誰よりも心が強くて優しい息子のことがたまらなく誇らしく思えてくる。
雷牙の手をギュッと握りしめて、カオルは元気よく振った。
「さ、おうちに帰りましょ!
とうさんやゴンザさんが待ってるわ!」
「…」
泣いてる顔など見られたくないだろうと思い、カオルは真っ直ぐ前を見て言った。
「偉かったよ、雷牙…」
「…うん!」
涙声だったが、返事があった。
そして、カオルの手をぎゅっと握り返してきた力強さに、カオルは
(よかった…)
と安堵した。
小さな守りし者が屋敷に帰ってみると、よくやったというように頭を撫でる大きな父親の手と、好物ばかりが並んだ食卓が待っていた。
そして…
ずっとおやつを我慢していたご褒美として、フォンダンショコラにアイスクリームと色とりどりのフルーツが飾られた、とびきり甘くておいしいスペシャルなデザートがついていた。
fin
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すいません!
最後は駆け足になっちゃいました。
実は、子犬の話のはずが、ちょっと違うところに妄想が突っ走りそうでヒヤヒヤしました。
「雷牙は俺の子だ。」っていう台詞がありましたが、それを言ってる鋼牙さんを妄想すると、どんどんヒートアップしてきまして…
「じゃあ、あたしはどうなの?」というカオルちゃんに向かって、「何年、俺といるんだ?」とか「俺が心を許しているものは特別だ」とか、そういう台詞をいろんなパターンで言う鋼牙さんを妄想しては、ひとりでドキドキしてました。
カオルの反応を試すようにセクシーに言ってみるパターンや、恥ずかしそうにぶっきら棒に言うパターンとか、ね。
やばい! 子犬のことそっちのけになってしまう!
とりあえず、最後までなんとか辿りつき、ホッとしています。
最後までお付き合い、ありがとうございました!
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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