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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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God be with ye(5)

前回に引き続いてのアクション回。
無謀だ…

みなさまにおかれましては、ぜひ、カッコイイ零のアクションシーンを脳内で想像していただきますれば幸いです。
なにとぞ!!


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足元を狙われたアバドゥールは、それでも身の軽さを活かして躱(かわ)し、ふわりと身体を浮かせて零を見下ろした。
そして、すかさずその恰好から急降下したかと思うと、鋭い爪を立てた足でガラ空きになっている零の背中を襲った。

「チッ!」

険しい顔をした零がゴロゴロと地面を転がり、片膝をついた体制で身構えたとき、つい先ほどまで彼のいた地面をアバドゥールが深々と掴んでいた。
その足をゆっくりと上げて、芝居がかった間(ま)で爪を一本一本広げる。
そこからパラパラとこぼれ落ちる小石が、一歩間違えば零の背骨であったことを暗示させて、恐怖心を植え付けようとでもしているようだった。

「ロナレ、クンリア」
(おまえ、強いな)

アバドゥールは口ではそう言ったが、それでも零を恐れている様子は少しもない。
その得体の知れないような自信たっぷりのアバドゥールに零は思った。

(こいつは腹をくくってかからなければいけない相手だな…)

と。
相手から目をそらさないまま、零はゆっくりと立ち上がった。
そして、すぅっと胸の中に冷たい空気を大きく吸い、ふぅっと長く吐いた。
その深呼吸の間に、零の昂ぶった精神はみるみるうちに静まり、集中力は急速に高まっていった。
両手の剣をぎりぎりと握り直して片方の足を後ろに引いて目の前の敵を睨みつけると、渾身の力を込めて前に飛び出そうとした。
が、

「くっ!」

零の左腕が空中に縫い付けられたかのように全く動かなくなっていた。

『ゼロッ!』

「どういうことだ、シルヴァ」

『何か糸のようなもので動きを封じられているわ!
 1本は右後方のフェンスから。もう1本は… 左前方のあのドアノブからよ』

的確なシルヴァからの情報を受け、零はその糸のようなものを断ち切ろうと右手の剣を振るおうとした。
すると、まさにそのタイミングでアバドゥールの羽がバサリと音を立てた。と同時に、数本の羽が矢のように飛んできて零を襲ってきたのだった。
封じられた左手を軸に身体を反転させながら、クルクルと右手の剣だけを自在に操り、その羽をひとつ残らず叩き落とす零。
その動きの中で、偶然にも、2本の糸のうち1本を切断することに成功していた。
まだ、残り1本が絡みついている状態なのだが、それでも先程から比べれば、動きに支障をきたす範囲は極端に減っていた。

『ゼロ、おかしいと思わない?』

「ん?」

『あのホラー、こんなトラップを仕掛ける素振りなんてひとつも見せなかったわ。
 さっきからずいぶん余裕がある感じだけど、それにしたって、あなたほどの騎士を相手にしながらこんなことはいくらなんでもできないはずよ』

「確かに…」

実際に相手と闘っている零も同様のことを考えていた。
下手な小細工を仕掛けるような隙を与えているつもりはないし、実際問題として、アバドゥールも丁々発止のこの闘いに集中しているように思えた。

(どういうことだ…)

零とシルヴァが不審に思っているのを感じ取ったのか、アバドゥールが上機嫌でこう言った。

「クジバゴソヨエマルコツムサ… トソガッ」
(次はどこを狙うとするか… そこだっ)

アバドゥールが左手を少し上げ、クイっと動かしてみせた。
すると今度は零の左足の膝辺りが固定されたように動かなくなった。

「シルヴァ!」

『待って、ゼロ! ええっと、そうね、前方にある空調に室外機からと、後方のパイプから糸が伸びてるわ!』

零は、目の前のアバドゥールに十分注意しながら、まずは腕の戒めを解こうと思った。
零の目には何も見えないが、適当に辺りを突けて左手の周りを剣で薙ぎ払うと、クイっという軽い抵抗に当たり、それがプツリと切れると腕が自由になった。
続いて足に取り掛かろうとしたとき、アバドゥールはその場で軽くジャンプをして、次の瞬間、物凄い速さで零目がけて突っ込んできた。
その場から動けない零を、ひとおもいに引き裂いてしまおうと醜く曲がった太い爪を立てていた。

だが、そこで零は少しも慌てず、両手の剣を高く頭上に上げてクルリとふたつの円を中空に描いた。
すると、冴え冴えとした銀色の鎧が彼の身体を包み込み、銀牙騎士 絶狼が姿を現わした。

「っ!」

アバドゥールが驚き、動きを止めようとしたが、一度ついた勢いは容易に止められなかった。
鎧の召還により足の拘束からも解き放たれた絶狼は、ホラーを迎え撃つべく突進した。

「うぉぉぉぉっ!」

双方がクロスするように重なり合ったとき、絶狼の銀狼剣が閃いた。

「ぐはぁぁぁっ!」

アバドゥールの身体地面に叩き付けられるようにしてが何回か弾んだ。
あたりには黒い翼が舞っている。

  ザザザッ

地面に降り立った零が足を踏みしめて止まると、アバドゥールのほうを振り返った。
アバドゥールの倒れた辺りにはつむじ風のようなものが発生していて、黒い羽を巻き上げたかと思うと、やがてそれは空へと消えていった。

  ガシャン

鎧を解除した零は、最後の羽がサラサラと形を崩して消えていくのを見送った。

(終わったか…)

そう思い、零が張り詰めていた警戒心を解き、緊迫感から解放されようとしたまさにそのとき、

「ニゾコガア」
(見事だな)

という、しゃがれた声が零の耳に届いた。



to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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