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言えなくて(3)
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書斎机の上の台座に収まるザルバの目が、カオルの出ていったドアを横目で見てから鋼牙をじっと見る。
ひっそりとため息をついた鋼牙が、ふとザルバと目が合い、厳しい顔に戻る。
「なんだ?」
憮然としてそう言う鋼牙に、ザルバは
『カオルの言わんとすること… わかっているんだろう?』
と訊き返した。
含みを持たせたようなザルバの言い方に、鋼牙は一層仏頂面になる。
「…おまえには関係ないことだ」
ニヤニヤとこちらを窺っているザルバの目を逃れて立ち上がると、鋼牙は窓の外を眺めた。
いや、眺めた振りをしただけで、実際のところ何を見ているでもなく、ついさっきまでのカオルとのやりとりを思い出していた。
赤くなったり青くなったり、何かを一生懸命訴えかけていたカオル…
泣きそうな顔になりながら書斎を出ていった姿を思い出すと、鋼牙の表情も悲し気に歪んだ。
そんな鋼牙の背中を眺めながら、ザルバはやれやれと言わんばかりの表情だ。
(カオルも気の毒にな…
おまえさんの気持ちを鋼牙もちゃんと知ってるくせに、わざとこんなことしやがって…)
そう思いながら、ザルバは数日前のことを思い出していた。
それは、元老院からの仕事で、レオを伴って零のところに訪れていたときのことだった…
肝心の用事については、古くからの付き合いである零のことなので多くを語らずとも早々に目鼻立ちがついていた。
「では零、頼んだぞ」
「おう、こっちのことは心配するな。任せておけ」
朋友(とも)の力強い言葉に、鋼牙も軽くうなずいて、視線で信頼していることを伝えた。
それでは、と辞去の挨拶をしたところで、零は、そういえば、という気楽な感じで鋼牙に尋ねた。
「カオルちゃんは元気か?」
「ああ、相変わらずだ。
零、おまえにも会いたいと言っていた」
「そうだよなぁ、ずいぶんご無沙汰してるからな…
いいよなぁ、鋼牙は。おまえのこと全部わかってくれてる、あんな可愛い子をつかまえてさ。
ところで、レオ。おまえのほうはどうなんだ?
阿門法師の再来とかなんとかって言われて、ずいぶん女の子にモテてるって話を聞いてるぜ?」
零は茶目っ気たっぷりの笑顔でレオに話を振った。
「えっ? いやだなぁ、零さん。その話、どこから流れてる話なんですか?
少なくとも、自分の周りには若い女の子なんていないし、モテてなんかいませんって!」
驚いたように目を丸くして、レオは答えた。
「へぇ、そうなの?」
「そうですよ!」
「ふ~ん、そっか…
俺、聞いたんだけどなぁ。毎日、違った女の子から告られてる、みたいなことを…」
探るような零の目に、レオは少したじろいだ。
「なんですか、それ。
毎日なんて、そんな…
…ただまぁ、告白めいたこと言われたり、手紙もらったりとかは何度かありますけど…」
おずおずとそう言うレオに、零はしたり顔でうなずく。
「なんだ、やっぱ、あるんじゃん!」
「いや、ほんと、ごくたまにですよ!
毎日とか、そんなじゃなくて… ほんと数えるくらいですからっ!」
食い気味に否定するレオを軽くスルーして、零はうっとりしたような顔で中空を見る。
「いいなぁ~
恥じらいながら手紙を差し出す女の子ってかわいいよなぁ~
耳まで真っ赤になって、手なんか震えちゃってさ…」
「ちょっと! 俺の話、聞いてます?
でも… そうなんですよね。
一生懸命、気持ちを伝えてくれようとする姿っていいですよねぇ~
その子のことをなんとも思ってなくても、ああ、かわいいな、って思っちゃいますもん」
レオもゆるんだ顔で零に賛同した。
すると、それまでふたりの会話に参加できずにいた鋼牙が、
「…そういうものなのか?」
と口を挟んできた。
何を思い出していたのか(はたまた、想像していたのか)ニマニマとしていた零とレオが、スッと真顔に戻ると、ぐわんと鋼牙を振り返った。
「なんだ、おまえ、知らないのっ!?」
「えっ、鋼牙さん、知らないんですかっ!?」
ふたりの勢いに戸惑う鋼牙に、
「ひょっとして、告白された経験ないのか?」
と零は畳みかけた。
レオも、うんうん、とうなずきながら鋼牙に注視するものだから、鋼牙はググッと言葉に詰まりながらも、
「…ああ」
と返事をするしかなかった。
「1回も?」
「ああ」
「マジで?」
「…」
もはや何も言わずに、鋼牙は小さくうなずいた。
前のめりに鋼牙の答えを聞いていた零とレオは、同じタイミングで拍子抜けしたように肩から力を抜いた。
が、すぐに気を取り直して、
「おまえのことだ。仮に告白しようと思った女の子がいたとしても、告白する隙を与えなかったんだろうな…」
「そうですよ。
牙狼の称号を持つってだけでなく、顔もスタイルもいいんですから、鋼牙さんがモテないわけありません。
逆に、高スペックだからこそ、近寄りがたかったのかもしれませんね」
と慰めるような言葉を口々に言った。
その言葉に、なんとなく憐みのようなものを感じ取った鋼牙は少しばかり機嫌を損ねてしまったが、いち早くそれに気づいた零は慌てて取り繕おうとした。
「おまえだって、カオルちゃんから、ああしたい、こうしてほしい、って恥ずかしそうに言われたらグッとくるだろ?
それに近いもんがあるんだよ、告白ってさ」
「そうですよね。
まったく知らない子に言われても、そりゃあ戸惑いますけど、それはそれなりに嬉しいですもんね。
もちろん、好きな人に言われたら、天にも昇る気持ちでしょうけど…」
「だな。
ぎゅっとして! とか、キスして♡ なんて言われたら、頭ン中、真っ白になっちゃうよな!」
「はい、それ、わかりますっ!」
「お、おい、なんでわかんだよ!?
さてはおまえ、そういう経験が乏しそうに見えて、彼女いたことあるのか?
ん? それとも、現在進行形ってやつ?」
「ふふん♡」
「おまっ、何、ニヤついてんだよ!」
この後、レオの恋愛経験について吐かせようとする零と、それを躱(かわ)そうとするレオの攻防が続くのだったが、鋼牙はそれらがまったく耳に入らなかった。
(カオルに、ぎゅっとして! って言われたことがあっただろうか?
キスして♡ って? …記憶にない)
カオルとの付き合いはもうずいぶんと長いので、今更「告白」というのは無理な話だ。
(もちろん、言うまでもないが、カオル以外の女になど告白してもらいたいなどとは思っていない!)
だが、「キスをねだられる」というのはできそうではないか?
あのカオルに、キスして、と…
(…言われてみたい)
とても素直でシンプルな欲求が、鋼牙の中に芽生えていた。
to be continued(4へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
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