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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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言えなくて(4)

いやん♡
もう鋼牙さんったら、カオルちゃんに迫ってほしかったんだ~ (´艸`*) クスクス♡

さてさて鋼牙さんの目論見通り、カオルちゃんの方からねだってもらえるんでしょうか?
(どうなんだろうね? どうなんだろうね?)

拍手[16回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルと出会ったあの日から、もう何年もの年月が流れていた。
その間(かん)、過酷な試練に何度も直面し、それを乗り越えてふたりのきずなは固く強く結ばれていったことは、もはや説明するまでもないだろう。

画家の卵だった彼女もひとかどの画家となり、未熟で危なっかしかったあの頃からはグッと落ち着いてしっとりとした大人の女性になっていた。
彼女を守っているつもりで、深いところでは彼女に守られている… そう気づかされることが何度となくあった。

それでも、ふとしたときに見せる、カオルのいたずらっぽい顔や無邪気な笑顔に、鋼牙は今でも息を呑んでしまう。
そのカオルにキスをねだられたとしたら…
きっと今まで以上に可愛いカオルが見れるに違いないのだ。
そして、もっともっと愛おしくなるはずに違いない!

そのためには、どんなに触れたくても、どんなに抱きしめたくても、この気持ちを堪(こら)えるしかない…




今宵も魔戒騎士としての彼を待つ仕事があった。

「では、行ってくる。
 あとのことは頼んだ…」

「はい。行ってらっしゃいませ、鋼牙様」

ゴンザが主人に鷹揚に頭を下げる。
控えめでいてそこはかとなく自信に満ちたゴンザの言動は、自分のいないこの屋敷の留守を任せることができる、確固たる安心を約束してくれていた。
鋼牙も軽くうなづいて、カオルを振り返った。

「鋼牙…」

いつになく強張(こわば)った表情を見せるカオルが、そう言ったきり言葉を見つけられずにいた。
なんとなく感じるものがあったのか、ゴンザが静かにその場を離れた。
ふたりきりに、という彼の気遣いだ。

何か言いたそうに切なく見つめるカオルに、鋼牙は思わず髪を撫でようと手を伸ばした。
が、途中で、今触れてはこれまでのことが水の泡になる、と気づいて手が止まった。

なんとも気まずい時間が流れる。
すると、そこに、申し訳なさそうなザルバの声が…

『鋼牙、どうやらのんびりしている余裕はなさそうだぜ。
 すまないな、カオル…』

ハッと息を呑むカオルに、鋼牙の目も悲し気に曇り、それと同時に手を引っ込めた。
鋼牙の顔は、すぐに騎士のそれとなる。

「鋼牙、あたし…」

待ってるから…、そう言おうとするカオルの言葉を鋼牙は遮った。

「俺のことはいいから、待たずに休め。
 では、行ってくる…」

そう言うと鋼牙はコートの裾を翻し、くるりと背を向けて屋敷を後にした。

「鋼牙…」

見る間に小さくなっていく鋼牙の背中を、カオルは切なく見送るしかなかった。




まだ夜の明けきる気配がない未明過ぎ。
夜露に濡れた鋼牙が静かに屋敷に帰還した。
もちろん、今夜の首尾は上々だ。

「おかえりなさいませ」

誰もが眠りについている時間帯にも関わらず、何食わぬ顔でゴンザが出迎えた。
鋼牙は以前、構わず休んでくれていい、と言ったこともあったが、

「それでは執事の役目が務まりません」

と事も無げに言い切ったゴンザは、古希を過ぎた今でも、こうして鋼牙の帰りを出迎えている。
リビングで脱いだコートをゴンザに手渡しながら、

「カオルは?」

という、いつもの問いかけに、

「寝室におられます… が、珈琲を大量にポットに入れて持っていかれたので、ひょっとしたら寝ずに起きておられるやもしれません」

とゴンザは答えた。
その答えに内心少し驚いた鋼牙だったが、そんなことはおくびにも出さずに

「…そうか」

と返事をする。そして、

「遅くまですまなかったな。
 明日… いや、もう今日になるのか… 朝食は用意しなくていい。
 昼までゆっくりとするがいい」

とゴンザをねぎらった。

「承知いたしました。
 それでは、お休みなさいませ」

「ああ…」

リビングから出ていく鋼牙を見送ったゴンザは、コートをコート掛けに掛けると、やれやれこれで今日の仕事も終わった、とばかりに首をコキコキ鳴らして肩を回すと、欠伸(あくび)をしながら自分の部屋に下がっていった。




『よかったな、鋼牙。
 今度こそ、カオルのほうから迫られるんじゃないか?』

書斎の中央に位置するきれいに整頓された書斎机の上。
中指から引き抜かれ、台座へと戻されたザルバがそう言うと、鋼牙は

「なんの話だ?」

と嘯(うそぶ)いた。
カオル以上に付き合いの長いザルバには、鋼牙の考えそうなことなど筒抜けだというのに、それでもとぼけるところが鋼牙らしいと言えばそう言えようか。

『寝室のドアを開けるなり、おかえり~って飛びついてくるとか?
 いやいや、それより、ベッドの上から誘うような姿態で…』

その話題をスルーしようとする鋼牙を無視しておしゃべりをやめないザルバを、鋼牙は声を強めて

「ザルバ!」

と制する。

『おっと、俺様としたことが、野暮だったな。
 俺に構わず、自分の目で確かめてくるん… だ… な…』

ザルバはそう言い残すと、さっさと意識を閉ざしてしまった。

(まったく…)

鋼牙は人知れずため息をつくと、書斎を後にした。




寝室の前。
鋼牙は少なからず緊張していた。
さっきのザルバの言葉が思い出されたからだ。

カオルがどんなふうな出方をするのか、鋼牙にはさっぱり読めない。
思わず、ごくりと唾を飲む。

そして、自分を落ち着かせようと大きく息を吸い、静かに吐いた。
吐き切ったところで、クイッとノブを捻り、寝室へと足を踏み込んだ。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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